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#011 ベースボールベアーが恥ずかしかった

2000年代が青春期の僕にとって、邦ロックは切っても切れない存在でした。バンプに心動かされ、アジカンの歌詞世界に自分を重ね、ナンバーガールにぶっ飛ばされて…。そうやってゼロ年代の邦ロックを聴き続けていると、「これはナンバーガールチルドレンだな」と思う場面が度々ありました。

アジカンの「N.G.S」は「ナンバーガールシンドローム」というタイトルなので分かりやすいくらい影響は受けているし、フジファブリックの歌詞情緒、スパルタローカルズの無頼感、アナログフィッシュ(特に下岡さん楽曲)のおとぼけ感など。もちろん、数ミリ程度ですが「この人たちはおそらくナンバーガールが好きなんだろう」という行間が楽曲から感じられて、その都度ナンバーガールを好きになった自分を誇らしく思う中学3年~高校1年だったように思えます。

そんななか、2006年にメジャーデビューしたのがベースボールベアーでした。メンバーに女性がいる、スカした文化系風情のボーカル、歌詞に女の子が出がち、PVでのバンド名と曲名のテロップの出し方…。「めちゃくちゃナンバーガール好きじゃん、この人たち!」と当時高校1年生の僕ですらそれが分かってしまうほどのナンバーガールっぷりだったことを覚えています。

そしてベースボールベアーを聴き込んでいるうちに、「この人たちは東京レコーディングバージョンの『透明少女』をやっているんだな」と思うようになりました。2005年にナンバーガールは未発表音源・レアトラック集のアルバムをリリースしていて、そこには最終的に没音源となった「透明少女」の東京レコーディングバージョンが収録されています。ちなみに正式音源の「透明少女」は地元・福岡で録音されていて、東京の音源に比べてジャキジャキさ、聴き取りづらさは倍増していますが、バンドの生々しさはこちらのほうが強いです。ゆえに正式音源として採用されたんだなと思います。

つまりベースボールベアーに対して「きれいなナンバーガール」「聴き取りやすいナンバーガール」「ナンバーガールを聴く上での入門編みたいなバンド」という印象がどんどん強くなってしまったんですね。

そして2ndアルバム『十七歳』期のシングルタイトルが「抱きしめたい」「ドラマチック」「愛してる」と、向井秀徳だったら絶対にタイトルにつけないようなストレートなものになっていき、「口移しで伝えたい」「ドラマチックチック」「愛してる(愛してる)」と歌詞自体もなんとなく匂わせるようなものではなくキャッチーでストレートなものになっていきました。それが聴いててどんどん恥ずかしくなっていったんですよね。

昔は「この人たちはナンバーガールチルドレンだ」ということで、その元ネタをどう解釈するかを邦ロックバンドを聴いて楽しんでいた遊びが、「好きだったナンバーガールがきれいに解釈されて、入門編みたくなっていき、ストレートな言葉で伝えていくもの」にどんどん変えられてしまった印象になってしまいました。

今振り返って聴くと、べつにそこまで改悪(もうこの言葉使っちゃうけど)されてるわけでもないんですが、そういうことに敏感なお年頃ゆえでしょうか。どんどん邦ロックというものに冷めていってしまいました。僕は2007年頃から、すべての邦ロックバンドから心が離れてしまいました。バンプもアジカンもフジファブもチャットモンチーもストレイテナーもエルレガーデンもアシッドマンも、このときを境にまったく聴いてません。それはそれで今振り返ると、面白い現象だなって思います。

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