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46歳♂ぐだぐだ転職記21|条件面談と内定承諾

前回の記事でA社(教育業界マーケティング職[エージェント経由])とB社(ITコンサル職[企業スカウト])の2社の内定で迷っている話を書いた。

A社から受け取った労働条件通知書に記載された残業制度は労働時間制。求人票にあった固定残業制とどちらが正しいのか問い合わせたところ、回答に時間がかかるということで内定承諾期限の延長が決まった。なお、想定年収が求人票の下限を下回っていたことも気になる点だ(最低希望年収は上回っていたので自分にとっては大きな問題ではないのだが)。

問合せへの回答が届かないまま数日経ち、やっとオフィス見学を兼ねた条件面談を行いたいとの連絡があった。回答は面談の中で直接口答で行いたいのだという。了解し、日程調節をし、ようやく面談が実現したのは内定が出てから2週間後のことだった。

条件面談と職種変更

はじめて訪れたオフィスでにこやかに迎えてくれた面談相手は所属予定の部署の部長。にこやかに面談は始まったのだが、少しして衝撃の発言が飛び出した。

「今回は社内的には「総合職枠」ということで募集していたのですが、丁さんはややこの職種での経験が少ないながらも今後の期待も込めて、専門職枠での採用ということで内定を出しました。そのため給与体系、残業制度が求人内容と異なります

我が耳を疑った。
経験が足りないと判断されたからではない(その点はむしろ妥当な評価だと思う)。
給与体系が異なるからでも、残業制度が異なるからでもない。
違う職種での採用であることを、この場に至るまで、私にも、エージェントにも伝えなかったことに驚いたのだ。

内定を出すときに「ちょっと実力不足だと思うのですが、期待値を込めて採用します。ただし総合職枠でなく専門職枠なので諸条件に変更があります。詳細は条件面談でお伝えします」とだけでも伝えてくれれば良かったのに、エージェントや私に届いていたのは「なぜか変更された残業制度や求人で示された下限以下の給与」だ。求人と内容が異なるから、私やエージェントが労働条件通知書の内容に誤りがあるのではないかと問い合わせる必要が生じたのではないか。
問合せへの回答が2週間も保留され、条件面談になってから諸条件変更の根本的な理由がはじめて示されるとは、どういうことなのだろう?

続く謝罪の言葉にも耳を疑った。

会社への直接応募だったら人事部長から直接丁寧に説明できたのですが、エージェントを挟んでの応募だったのでそういうわけにもいかず、詳しい説明が後回しになってしまってすみません」

そのエージェントに求人を載せたのはA社の判断ではないのだろうか?
応募者との間にワンクッション挟まることになるのは承知の上で採用活動を進めていたのではなかったのだろうか?
後回しになって致命的なのは、詳しい説明をしなかったことではなく、諸々の変更が生じることになった根本的な理由(職種の変更)を説明しなかったことだは認識していないのだろうか?

面談している部長の態度や口調は極めて丁寧で紳士的だ。まったく悪意なく、心から手続きの不備を詫びている。しかし、想定より年収が下がりそうなことに対する私の不安・不満を取り除くことに意識が集中しているようで、応募者から見たときに何が問題として映っているのかは考えていないように思えた。

面談中にさらに想定年収が下がる

それでも面談を進めていった。
賃金の内訳に「年齢給:0円」と「家族手当:(空欄)円」と記載があり、別の欄には家族手当の金額(配偶者、子それぞれの場合)と支給条件が書いてあった。私の場合は支給条件を満たしているので、家族手当の空欄には、あとからその金額が書き足されるものだと思っていた。

だから、「家族手当は、私の場合は月●万円」という理解でよろしいですか?」と確認した。

答えは「いえ、家族手当は総合職にだけ支給されるので専門職の間はゼロです」

通知書のどこにも、家族手当が総合職にだけ支給されるとは書いていない。支給されない手当の欄が、なぜ0円ではなく空欄になっていたのだろう? 年齢給ははっきり「0円」と書いてあるのに。

こうして、事前に計算していた想定年収からさらに年収が下がることが判明した。

時系列は

  1. 内定が出た時点では、内定承諾期限は2営業日後に指定されていた。

  2. 労働条件通知書には求人と異なる内容が書かれていたので、すぐに問合せをした。

  3. 内定承諾期限までには回答が届かなかった。

  4. 後日、条件面談が設定され、面談の中ではじめて諸条件変更の根本的な理由が示され、さらに労働条件通知書からは推定不可能な「手当の不支給」が判明した。

こうやって事後的に振り返ってみると、当初の内定承諾期限に合わせて、労働条件通知書だけを頼りに判断していなくて良かったと思う。虚偽の契約を提示され、契約を行っていたことになったかもしれない(その場合は裁判に訴えることもできるのかもしれないが、労多くして得るものは少なそうだ)。

念のためにエージェントに訊ねると「違う職種での採用となった場合は、内定と同時に職種について伝える場合がほとんど」ということだった。

A社側がこれを意識的に行っているのか、意図しない書類の不備なのかもわからない。面談している部長からは、このことに問題意識が向いていないことだけは伝わってくる。

こうした状況が目の前にあって、私が採用されたのは「東京オフィスの最初のメンバー」という立場だ。本社のメンバーと遠隔コミニュケーションを取りながら円滑に業務を進めなくてはいけない立場だ。

それなのに、内定という重要な場面でのこの致命的なコミニュケーション不足と、問題への無意識。「専門職での採用」という情報と給与規定だけ与えられれば、こちらで全て調べて把握できるというのに、基準のわからない月給だけが提示され、「詳細は後日教えます」のコメントだけで何日もペンディング。

もしかするとある種の思いやりを発揮しているのかもしれないが、その対応のために、相手側にどれだけの余計な手間ひまを発生させるのか、想像が届いていないのだろう。職種が違うことよりも、家族手当がつかないことよりも大きく、日々の仕事にかかわってくるのではないだろうか。

内定を承諾し、勤務が始まったらどうなるのだろう。
同じようなコミニュケーションが何度も発生する想定を受け入れた上で、遠隔地での一人勤務はだいぶ苦しくなるだろうと考えた。

内定辞退

A社は、業界ではそこそこ名の知れた東証スタンダード上場企業。将来的な安定性も充分と思われ、自分にはもったいないくらいのポジションでの内定だった。家族も内定を喜んでいる。

しかし、後だしジャンケンにもほどがある一連の流れを鑑みて、悩んだ末に、内定を辞退した。
同じ状況に置かれても、判断はいろいろあるだろう。だが私は、後悔はしていない。

内定承諾

A社の内定を辞退してもしなくても、B社の内定を承諾するかどうかはまた別の問題だ。

B社は、私の今後数年のキャリアプランを提案する面談を設定した。当初のポジションと年収はこう、1年後にはこういう役割を期待しており、そのポジションで給与がどれくらい上がり、2年後、3年後、とかなり具体的な数字を示して未来を見せようとしてくれた。

お話はありがたく伺いましたが検討に数日ください、と伝えて面談を終えたが、翌日には「昨日ご提案のキャリアプランは社長にも見せてOKとれました」、さらに次の日には「今度●日によければチームメンバーとランチでもいかがですか?」と、一歩一歩着実に情報を固めてくるアピール方法。

A社で、人事部やエージェントとのコミニュケーションにすら困難が生じているのを見せられているのもあって、社長まで一気に話が通るB社の風通しの良さは魅力的だった。A社ほどの資本規模がある会社ではない。しかし、もともと職務内容自体も魅力的なB社である。こちらも、自分にはもったいないくらいのポジションで、この機会を逃したら今後の人生で関わることはないだろう。

ありがたいことに、当初はB社に懐疑的だった妻が、A社とB社との一連のやりとりを見てしだいにB社を許容するようになってきた。
それでもA社の安定性を取りたい気持ちも残ってはいたのだが、A社の再設定された承諾期限の前日になって「ここまで来たらアナタが働きたい会社を選ぶしかないんじゃない?」と、背中を押してくれた。

その晩はとにかくぐっすり眠ることに集中し、次の日、朝イチでエージェントにA社辞退の連絡を入れた。そして、B社の担当者に内定承諾の連絡を入れた。

8ヶ月にわたる転職活動もこれで終了だ。
私はこれから、「B社で働く自分」をつくっていこうと思う。


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