見出し画像

46歳♂ぐだぐだ転職記11|職務経歴書

転職活動には欠かせない職務経歴書。本やサイトを見ると、A4用紙2枚以下にまとめろとか1枚以下にまとめろとか書いてあるけど、仕事歴20年にもなってしかもフリーランスで脚本をやったりしている人間が記録を見返しながら「業務の棚卸し」なんかやって業績を全部書き出すと、あっという間に用紙10枚くらいに膨れ上がる。
活動分野ごとにまとめて詳細を省こうとしても、かなりの数。そこでハタと気になるのが「職務経歴書の必要性」。

誰がために職務経歴書は成る?

恥ずかしながら、転職活動を始めるまで「職務経歴書」なるものの存在をしらなかったので、当初はバカ正直に「この仕事もやった」「あの仕事もやった」と、関わった業務歴をズラズラ書き連ねていた。
特に自分のように作品制作が仕事だったりすると、作品名をたくさん連ねて、たくさん頑張ってきたんだよ〜とアピールしたくなるもの。しかし、別に脚本家のオーディションを受けるわけじゃないから「沖縄で上演された津軽弁バージョンのロミオとジュリエットの脚本を担当」とかの履歴って、いくら業界誌で褒められたとしても一般企業の採用担当者にとっては要らない情報なわけだ(話題のキッカケとして、一目でわかるような尖った企画を書いておいてもいいかもしれないが)。

ならばサラッと「劇団○○をはじめ首都圏の劇団に脚本を提供。10年間で30作が上演された」とでも書けばいいかというと、この記述で、劇団○○のことも知らない採用担当者に実績の重みは伝わるだろうか?
「数字で表現」するために「前回公演の+100%の集客(招待客除く)を達成」と書いて、その喜びが伝わるだろうか?

職務経歴書を読んで判断するのは何層かの採用担当者なのだから、彼/彼女らが読んで自分に興味を持つ(「この応募者に会ってみよう」と思う)職務経歴書にする必要があるだろう。知らせるべきは、過去の業績ではなく、これからの仕事での姿なのだろうと思う。

職務経歴書 Ver.1|A4用紙4枚(5000字超え)

転職活動の初期に職務経歴書は、レイアウトの工夫で詰めに詰めた5000文字以上の内容。A4用紙4ページ。こんなこともやりました、あんなこともやりました、が満載の内容。今読んでみると「演劇界でそれなりの業績があり、関連業界で一般的な仕事をしてきたのもわかるけど、応募先企業でそれをどう活かせるかについての記述はない」書類になっている。

それでも、1社は書類選考に通った。この企業の採用担当の方(現場責任者)は「見たことのないタイプの経歴をお持ちだったので一度お会いしてから判断しようと思いました」と言っていた。ありがたい話だが、「書類として」の実力で通ったのではなく、マッチングの幸運に恵まれただけの例外だったのだろう。

5000字超えの文章なんて、かなりのモチベーションがわかないと読まない。見知らぬ人から400字の原稿用紙12枚分の持ち込み原稿がいきなり届いたら、編集者だった頃の自分は絶対に中身まで読まなかった。

ということは、多くの応募企業では、私の職務経歴書はじっくり読まれる前に「お見送り」になっていたのだろう。

職務経歴書 Ver.2|A4用紙1枚(1500字)

ある面接指南を読んでいたら「どんなに仕事歴の長い人でもA4用紙1枚にまとめるべきです」と書いてあり、その人の示している例を見たらなるほど見やすく全貌が見えたので、真似して情報をそぎ落としまくってA4用紙1枚にまとめてみた。在籍した社名や職種名は略すわけにはいかないので残す。すると各社について主な業績を2〜3書く程度になる。売上実績など数字も添えるが、成果しか書けず、達成のためのプロセスを書く余裕はなかった。
結果、この書類を使っていた時期には3社の書類選考を通過。Ver.1よりは効果があったのだろう。

職務経歴書 Ver.3|A4用紙2.5枚(4000字)

その後ブラッシュアップを続け、今は4000字ほどの職務経歴書を使っている。Ver.2では割愛した、主な実績を達成するためのプロセスについての字数が増えた。一方で、主な実績の数を各社1つだけに限定している。

実績に関しては、まずは結果を大書きして、そのあとに「業務上のミッション」「課題」「市場環境」「打ち手を発想した出発点」「具体的な施策」などを論理的なつながりを重視して記述。これらを通じて「こんな市場環境でこんな業務目的に対してこういう発想と行動を重ねてきました。その結果、こういう結果を生みました」と実例を示していることになる。採用担当者が「この人を採用すれば、自社でも同じような課題解決をしてくれるかも」と想像し「面接でもうちょっと詳しく聞いてみたい」となることを期待しての判断だ。
また、レイアウト面で大見出しと小見出しを使い分け、「読みたくない部分は飛ばして先を読める」ように配慮した。5000字から減ったとはいえ、4000字はかなりの分量だ。「まずはざっくり読む」場合には1500字で飛ばし読みができて、「気になったらじっくり読む」に4000字で応えるような編集。新聞の見出しと本文のイメージに近い。興味の無い本文は読まずに、目が次の見出しを求めるような仕組み。
それが見た目にわかりやすくなっていれば、Ver.2での簡素すぎる問題とVer.1での冗長すぎる問題を両方解決できる。

結果のフリをしたプロセスの記述

職務経歴書を現在のバージョンVer.3に変えたのが11月下旬。この書類で応募し始めてから書類選考通過率が大幅に上がったことを考えると(12月という時期的な追い風はあるにしても)今までの書類の中では現在のものがベストなのだろうと思う。

一般的な職種なら、職務経歴書に「主な業績」の「結果」だけを書いても、読む人がプロセスを想像しやすいだろう。「売上5000万円(前年度比+50%)達成。営業部20人中1位の成績」などと書けば、達成のためのプロセスも想像がつく。あるいは、プロセスはどうあれ、出した結果の難易度がある程度想像できよう。その結果に至った秘訣を面接で聞いてみたくなるかもしれない。

しかし、脚本の場合は「津軽弁バージョンのロミオとジュリエットの脚本を担当」と書いたところで、それを書くためにネイティブ津軽弁話者に坪内逍遥訳を読んでもらい録音を活用した話も、集客のために沖縄県人会と青森県人会に口コミ情報を流した事実も想像しては貰えない。結果の価値も、プロセスで行われた工夫や努力も想像してもらえないのだ。

だから、私のような経歴の人間は、業績を結果+プロセスで示すことが大事になるだろうと思う。
脚本に限らず制作というのは常に0の白紙から始まり、何かのプロセスを経て完成する。0から始まるものを、創作者それぞれがオリジナルで持っている工夫と努力によって完成形まで仕上げていく。同じ0からの出発でも、作品ごとに解決しなくてはいけない課題は異なる。そのプロセスを幾度も繰り返して積み重ねているのが創作者だ。

そのことをうまく伝え、ある程度想像してもらうことさえできれば、我々芸術系の人間の視点や行動は、一般企業でも役立ちそうな経験に見えるのではないだろうか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?