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スタートアップがエンタープライズセールスをはじめるときの課題とは

40’s Biz talkは法人営業やBtoBマーケティングが専門の40代男性2人、杉本浩一柳澤大介がお届けするポッドキャスト番組。

音声番組の内容を読みやすく要約してnoteでお届けしています。第3回は「エンタープライズセールスについて雑談してみた」です。

サマリー
BtoB向けSaaSでエンタープライズセールスが注目されつつある
一番の課題は大企業と「同じステージ」に立つことの難しさ
そこで教養のイネーブルメントと個人のブランド化が成功の鍵になる


それでは、本編の内容をお届けします。


スタートアップが「エンタープライズセールス」に注目する理由

柳澤大介(以下、柳澤):杉本さん、今日は話題があるということで。

杉本浩一(以下、杉本):そうですね。ここ最近、いろいろな会社の人と話している中で、特にスタートアップの界隈、シード期からシリーズABCDくらい幅広く、いろいろ話す機会があって。

いつも出てくる話題が、「エンタープライズセールスが今まさに必要です」だったり、「今まさにエンタープライズに向かって攻めていこうとしています」だったり。

そのために人を採用してます、組織を作りたいです、みたいな話が至るところで出てきたなっていう、お話をしたくてですね。

柳澤:最近、エンタープライズセールスの話、よく出ますよね。

杉本:多くないですか? 私とかは、まさに法人営業のことをツイートしてきて。元々、NTTコミュニケーションズという会社で航空会社を担当してたりとか、印刷会社とか、日本で誰もが知っている会社とかをずっと担当していて。

どっちかというと、エンタープライズ営業の中でも、いわゆるアカウント営業というか、あなたはこの1社だけ担当です、みたいなのをやってきてて。

まさに、売れなかったから他の企業に行こうとしてもできない。なので、いつでも1社に向かって売り上げを作らなければいけない、みたいなのをやってたわけなんですけど。

大企業はエンタープライズ営業ってやってるじゃないですか。

大企業が大企業に売るって、これは当たり前にやってることなんですけど、スタートアップってやっぱり、どっちかっていうと、いきなりエンタープライズ企業に向かっていくのは難しい。

だから、普通の中小だったり中堅企業だったり、売れるところに売っていくっていうのが多かったんじゃないかなと思うんですよね。

だけど、ここに来て、なんでこんなエンタープライズ向けにビジネスしようってみんな言いまくってるのかなってすごく面白くてですね。

なんか嬉しいなっていう反面、これはちょっと懸念もあるなと思っていて、今日話したいなと思ったんですよね。

柳澤:最近のスタートアップはBtoB企業向けのSaaSを提供しているので、SaaSだとライセンス商売じゃないですか。

なので、1社からたくさんのライセンス数をってなると、やっぱりエンプラ狙いたくなるんでしょうね。

杉本:エンタープライズの定義とかも話し始めるとキリがないですけど、大体の企業が「従業員1000名以上の会社を対象に」って言ってることが多いような気はするんですけどね。

どんなに1社と付き合って、100名ぐらいの会社と付き合っても、まあ多分手間は同じで利益があまり出ないからなのか。

エンタープライズ、まあ1万人とか2万人とかいる会社とかだったらね、やっぱりそこに行った方がいいよねって、そりゃ思うんだろうなっていうのがまずあってね。

柳澤:そうですね。なんか私も、スタートアップのグロース支援やってるんで、やっぱりその話すごい出るんですよ。

エンタープライズセールスのやり方が、話を聞いてると大きく2つあって、私がよく直面する話だと。

杉本さんがさっき言ってた通り、あなたは決められたこの1社だけ行きなさいっていうエンタープライズセールスと。

もう一方は、営業プロセスはSMBでやってるようにTHE MODEL型でリードを取って、リードの規模に応じて割り振られていく。それがエンタープライズ企業のリードだったら、エンタープライズセールスの担当者が行くみたいなこと。

杉本:はいはいはい。

柳澤:で、いわゆる僕がイメージしてるエンタープライズセールスって前者。杉本さんが言ってた、あなたは決められたこの1社もしくは10社をだけ担当して、そこをちゃんと攻略しなさいねっていう営業を、いわゆるエンタープライズセールスだと思ってるんですけど、難易度が前者と後者と全く違う。

杉本:そうですよね。

エンタープライズを攻めることの難しさとは

柳澤:で、なんかひとっくりにエンタープライズセールスと言っても結構後社のパターンが最近多い。

別に問い合わせが来てるんだったら捨てる必要はないんですけど、ちょっと難易度とかが全く違うんで。

杉本:そうよね、いやそうそう。B2Bって言ってもいろいろな商材があるじゃないですか。

それこそ、ERPとかのすごく大きなシステムもあれば、それこそオフィス用の備品とかもあるじゃないですか。で、SaaSもあるし、それこそ原材料とかパソコンの内部の部品とかを売ってるみたいなところとかもあるし。

で、それまず法人営業っていう括りだけでいろいろな分解されると思うんですよね。さらにそれがエンタープライズ営業になったとしても、いま柳澤さんが言ったように、実は結構分かれるじゃないですか。

まずやり方、どこを担当するかと、既存か新規かをどちらをやるのかでも違うし。

で、さらに商材の扱いによっても実は違ったりするわけなんですよ。

だから、まだそういう意味だとエンタープライズセールスが盛り上がってきてるっていう状態だからいいと思うんですけど、結構そこがごっちゃになって議論されてるよねっていう気はするんですよね。

実は結構そこら辺が私は結構気になるっていうか、でも全然いいことなんです。否定は全くしなくていいことなんですけど、たぶんまだ過渡期だというか、もっと実は細かいよねっていうのもあるし。

あと気になってるのが、まず最初に皆さんが注目するのって、いわゆる普通に売ってくる会社とエンタープライズで商談の流れが違って。

稟議に行ってもまた戻ってきたりとか。購買、バイヤー側のプロセスってすごく複雑だったり、かなり工数がかかるっていうところがあって。

商談の管理をどうするかっていうところを注目してる人が多いと思うんだけれども。

実際、大企業でエンタープライズセールスをやっていると、そもそもの管理する以前に相手と付き合ってもらう前提に立つところっていうのが、実は難しいことになるんじゃないかなって私は思っていて。

何が言うかっていうと、大企業対大企業だったら、つまり同じステージに立ってるんですよ。

こう言ってはなんですけど、大企業から見たときの大企業とスタートアップって実はやっぱり差があるっていうふうに見られると思っていて。

その時に大企業はどんなにヘボな人でも大企業の看板を背負ってやっていて、同じステージにいるんだけれども、そこの実は格というかですね。格でやっぱり見られることはぶっちゃけあると思っていて。

その格をどう上っていくかっていうところが実はまず大事なことになるんじゃないかなと思うんですよね。

結構ここら辺は、まず直面する壁だなって思うんですよね。だからそこをどう上っていくかっていうのも含めて、実は話に上がってくるといいなって。

現実直面すると思ってて、僕そういう今までエンタープライズをやったことない人とか、これからやろうっていう人たちって、実は壁を感じる瞬間があると思うんだよね。

「なんか俺らコミュニティに入れてない、大企業の人たちの」。みたいなとこがあって、大企業の人たちは大企業の人たち同士とかで、コミュニティ持っててさ。

例えばこう言っちゃうんですけど、三菱は三菱御用達のレストランがあるみたいな世界とかあるわけですよね。

そこに入っていく、入っていかないとかでも実は結構壁が今でもあると思ってるんですけど。

そういうところにいかに入っていくかっていう時には、なんか専門性でこうしっかり勝っていくとかも必要なんですけど、結構その同じ格として認められて同じ舞台に立つためにはどうするかっていう議論を結構しなければいけないし。

そこが営業担当がぶち当たる壁なんじゃないかなって私は思うんだよね。

別に結論がちょっと今ある話ではないんですけど、次に出てくる話、こういうことなんじゃないかなって思って雑談したかったんですよ。

柳澤:僕もそれ面白いなと思ってて。世の中の企業って中小企業がほとんどじゃないですか。90%ぐらい。

その中小企業と商談するときって多くの営業って決裁者と話して、すぐ結論出るんで。そこは割と経済合理性で決まることが多いじゃないですか。社長の財布と会社の財布が一緒のことも多いんで。

けど、エンタープライズだと社長と話すことはあんまりなくて、一般社員の方から登っていくこともよくあるんですよね。

そうなったときに、いわゆる会社で用意された「セールスイネーブルメントプログラム」だと全然対応しきれない。

杉本:その通り、その通り。今までのセールストークというか、スクリプトが全く効かないぞって、どこを言ったら効くんだっけ。それが、多分まったくわからなくなると思うんだよね。

柳澤:そうなんですよね。昔、僕が社会人になって初めて営業になったときに、接待ってすごい毛嫌いしてたんです。

営業としてカッコ悪いなって思ってたんですよね。

杉本:俺も思ってましたよ。

柳澤:なんですけど、やっぱこの年になると、それができる営業ってめっちゃすごいなって最近思って。

接待は「相手の格」を確かめる場所である

杉本:いや、本当にそうだよね。でもあれはですね、今振り返って考えるとというか、今でも僕、接待とか会食とか行く機会はあったんですけど、あるというか作ってたんですけど。

やっぱりね、大企業の人たちの接待の会話は何をしてるかというと、本当に何だろうな、極論ちょっと言うと「相手の格」を確かめてるんだと思うんですよね。

この人は自分たちと同じ話の土壌に乗れるのか、これは知的レベルの面と、あとは使っているものだったりとか趣味とか。

悪気があってやってるわけじゃないんだけど、確かめてる。例えば接待でお互いの役員同士がゴルフ行きましょうかってやるじゃないですか。

どんなシャフトを使っているとか、そのこだわりがどうかって、よくそれで仕事の仕方が見れるとかよく言うけど、どんなものを選ぶのか、どのぐらいのことを知っているのか、あるいはゴルフ場行った時には手土産を渡すとかですね。

相手の家族のために、参加した人に持って行くわけですよ。お茶漬けとか、家族向けのケーキとか持って行くわけなんですけど。

あの作法みたいのがあるかないかって、実は結構「格」を見られてるって思うんですよね。これ教えてもらわないと、実は30歳ぐらいだったら気がつかないんじゃないかなって思うんですけどね。

そういう時にいろんな話するじゃないですか。何の本読んでるかだったり、何の車乗っているとか、生活が知れるわけなんですけど。

いわゆる「セールススクリプト」には教養の話って何も出てないじゃないですか。当たり前ですけど、そんなのスクリプトにできるわけないと思うんです。

こういう自分の向き合っている人が、どんな教育を受けてきて、極論、学歴も見られてることもあると思うんですよ。

学歴って社会人になって何年もたってくるとはあんまり意味ないけども、そこで得てきた教養とか、あるいは学歴がそんなになくても、ちゃんと本読んできてるとか、知識がある、良いお店を知っているとかっていうところを、結構見られてるよねって思うんですけど。

柳澤:見られてますよね。接待一つにしても、普通の接待だとインパクトがないわけじゃないですか。だから、もうそれ自体が超属人化されてないと意味がない。

杉本:そうなんですよね。属人化されてて、この人なりのおもてなしみたいなのがあるとか。

あと、たぶん細かいところなんですけど、おもてなしレベルじゃなくても、例えば、ちゃんと「今日はありがとうございます」っていうお礼ができるかとか。

それをメールでやるのか、LINEでやるのか、メッセンジャーでやるのかを見ていたり。

別にどれが合ってる・間違ってるじゃないんですけれども、その人のいわゆる人となりが出るじゃないですか、そこで。

その人となりが評価されないと、最後に「一緒にこの船に乗りましょう」にならないんだよなって思ってて。

教養のイネーブルメントと個人のブランド化が重要に

柳澤:そうですね。何回も何回も打ち合わせしたり、会食も含めて回数を重ねていく必要があることが多いんで、話すネタがない営業はつらいですよね。

杉本:そうそう。そうなんですよ。だから、エンタープライズセールスを組織でやっていこうっていうふうになった時には、セールスイネーブルメントの部分はもちろんなんですけど。

もっとベースのレベルでの「教養のイネーブルメント」みたいなところとか、それをやっていく組織を作るか、それがある見込みのある人を配置するとか外から取るとか、育てていくにしても。

人で着実にやっていかないと難しいんじゃないかなっていう気もするんですよね。

柳澤:そうですね。

杉本:だから、そういう仕組みってどうやって作れるのかなとかだったり、そのスクリプト化みたいなのってできるんだろうかっていうのが興味があることですね。

柳澤:そうですね。だから自社の商品紹介とかはできるんでしょうけど、相手に自分のことを気に入ってもらうための型って作るの結構むずいですよね。

杉本:そう。で、そうなるとさ、なんかこれ田端信太郎さんが、言ってたと思うんですけど、ブランド人になるっていうのは実は大事で。

どうしても個性出てくるじゃないですか。個性があるのが当たり前で、全部平準化することはできないんだけれども、その人の得意領域みたいのを作っておくことっていうのは必要だと思うんですよね。

で、どの役員にもぴったり合うわけじゃないんですけれども、こいつはゴルフのことをめちゃめちゃよく知っているとか、ゴルフのマナーはしっかり守れるみたいな、まあそれも教養ですし。

で、こいつはゴルフとか飲みはできないけれども、本のことはめちゃめちゃ詳しいみたいな。彼をランチに同行させると、すごく役員が面白がってくれるとか。

人それぞれのブランドと教養っていうのは結びついていて、そこを磨いていって育てていくっていう環境を、組織で作っていった方がいいだろうなと思うんですよ。

大企業の場合だとそういう人がもうたくさんいるから、そこを見てるわけですよね、上の役員の人たちは。こいつはゴルフに一緒に連れて行くと失敗しないとか。

こいつは飲めないけれども話が面白いから、ランチの時には連れて行こうとかだったり。そういうのはね、大企業の役員とか見ていて連れて行ったりしますよ、若手を。

おじさん同士で話していってもわかんないから、ちょっとネタになるような若いやつとかも連れて行って、よしこいつちょっと育てようっていう人は連れて行ってたりするし。

スタートアップにもそういう視点がちょっと必要なんじゃないですかね、これからのエンタープライズセールスに向けて。

柳澤:そういう意味でいうと、必ずしもお酒が飲めなきゃいけなかったり、飲めないより飲めた方がいいでしょうけど、必ずしもゴルフをやらなくても、その人なりのちょっと売りになるものが一個あるだけで違いますよね。

杉本:本当にそうですよ。でも今、ほんとお酒飲めなくても全然平気だと思いますよね、昔と比べて。お酒飲めないっていう人自体も増えたじゃないですか。

それを公言する人も増えたし、前はね、私たちが多分新卒の頃難しかったと思うんですけど。そこら辺はなんか、自分の独自の強みを伸ばしてブランド化して、まず役員の人に、担当の若手とかだったら覚えてもらうっていうことを。

いかにゴルフのことだったらあいつとか、なんかうまい飯屋のことだったらあいつとか、旅行のことだったらあいつみたいな、そういうブランドを作っていくっていうことがまずは必要。

そのブランドを一人一人育てて、いろいろなブランドが用意できる状態に組織をしておくのが、これからのマネージャーとか経営層の役割になるんじゃないですかね、特にエンタープライズ向けのビジネスをやるなら。

柳澤:確かにね。

杉本:そう、だから面白いやつ取った方がいいですよ、スタートアップは。

柳澤:そうですよね。例えば、ちょっとしたインフルエンサーみたいな人は営業的には有利ですよね。

杉本:全然有利だと思う。インフルエンサーなんかは本当に有利ですよね。おじさんはそういうの分からなくても、聞いたことはあるし興味はあるから、へーってなるし。

インフルエンサーって、そもそも何かに優れた人だと思うんですよね、やっぱり。

マーケティング感覚に優れてるとか、何か新しいことをやるとか、そもそもがやっぱりなんかできてる人だと思うんで。そこら辺で他の人よりやっぱり一段上に立ってますよね、何のインフルエンサーであれ。

柳澤:そうですね、一昔前は会社の看板で仕事をすることが多かったですけど、なんかもう個人のブランドで営業も勝負する比率が上がってきてる感じはしますよね。

杉本:上がってきてますね。会社の軒先のところは借りてるけれども、軒先を借りてる人はいろんな人がいて。

インフルエンサーがいてもいいし、副業で何か成果出してる人がいてもいいし。何もやってなくてもこの人はなんかやっぱりゴルフに詳しい、メカに詳しい、コーヒーに詳しいとか。

なんかのブランドで勝負した方がいいでしょうね。会社員としても楽しいと思いますし。エンタープライズ営業には実はそういう人がいた方が多分上は楽だと思いますね、はっきり言って。

柳澤:そうですね。きっかけも作りやすいですしね。

杉本:そうなんですよね。エンタープライズ営業を今から始める人たちは、すごい苦労するだろうなってことを話したかったんですよね。

柳澤:これからさらに盛り上がってきそうですね。

杉本:盛り上がっていいと思いますね。でもなんだろうな、変になんかエンタープライズ営業のスキルみたいな感じのことをバンバン擦り込まれて。

それでよしやっていこうっていう感じで来られるのも大企業のバイヤーというか購買担当者からするとつらいだろうなみたいなね、気がしますよね。

柳澤:だから最近よく聞きますよ、同じテンプレの手紙がたくさん届くみたいな。

杉本:あーわかる、わかるわ。同じテンプレの、来るだろうね。

柳澤:封筒とか手紙の素材も全く一緒なのが、違う会社からたくさん届くみたいな。

杉本:真似ることは悪くないけれども、でも一つ覚えておきたいのは、エンタープライズ企業の人からすると、ちょっとうんざりしている人はいるっていうのはありますよね。

また同じか、だったり。すごく経済合理性はあるんだけれども、「なんだかなー」って思っている人も実は結構たくさんいるっていうのは心に留めておきたいですね。

柳澤:そうですよね。


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