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ドラマ、映画、本のレビュー

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過去に見た、読んだなかで印象的だったものを書き残しています。レビューと書いていますが、そんなにしっかりとしたものではないです。
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『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観賞後、宇多田ヒカルの「One Last Kiss」で気付くこと

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観賞後、宇多田ヒカルの「One Last Kiss」で気付くこと

【以下ネタバレあり】

エヴァは、作品と自身の考えを以て噛み砕き、それを咀嚼するのを楽しむ映画だ。

「マイナス宇宙」や「ゴルゴダプロジェクト」などの謎だらけのキーワードがテーブル狭しと並ぶ。それらはかなり煮詰められて食べやすいものもあれば、ほとんど調理されずゴロッとした素材そのものもある。

テーブルの上で何がどうなっているのか目では分かっていても脳が着いてこない。そのうちに頭痛がしてくる。正直

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【ネタバレあり】鬼滅の刃 無限列車編に感じた力強さと悔しさ

【ネタバレあり】鬼滅の刃 無限列車編に感じた力強さと悔しさ

当たっている光が強ければ強いほど陰は濃く闇を落とす。完璧そうに見える人や輝かしい経歴には、その背中にほの暗い過去を背負ってるのかもしれない。
命にはハイライトだけではなく悪い時期も当然あって、最終的には時の流れが残酷なほど何もかもを飲み込んで、ただの骨にしてしまう。
それでも、不老不死の完成された美よりも、やがて朽ちる不完全な命が愛おしくなった。

「鬼滅の刃 無限列車編」をようやく見た。
まず目

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TENET、LSDをキメながらマイブラを聴いている感じ【ネタバレなし】

TENET、LSDをキメながらマイブラを聴いている感じ【ネタバレなし】

"分からない"を楽しむ。
分かりやすいものばかり食べてきた弊害が如実に炙り出される映画だなと痛感した。

分かりやすいものは即効性がある。
でもその一方で、分かりにくいものを遠ざけてしまうし、最終的にそればかり選んでしまう。
天つゆで食べる天ぷらは分かりやすく美味しいが、塩で食べる天ぷらの味も知っておいた方が良い。

僕はジャンクフードが好きで、好き嫌いが激しく、勉強が苦手だ。

もし、これが逆だ

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【ネタバレあり】トイストーリー4を観て僕はオモチャにはなれないと悟った

今作の4でゴミ箱から生まれたフォーキーの世話に手を焼いているウッディの姿を見て、子どもの世話をする友人を思い出した。

トイストーリー3は大人になったアンディと大人になれないオモチャたちの葛藤を描いたものだった。年齢だけが大人の基準じゃない。
ボニーが心配だからと幼稚園までついて行ってお節介を焼き、フォーキーがオモチャとしての道を踏み外さないように見張り続ける、そこにはウッディの悪い癖も混ざって

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【ネタバレ】スターウォーズ スカイウォーカーの夜明けを観て思ったこと

「泣きたくてスターウォーズを観てるわけじゃねえ!!!」
スターウォーズEP9が泣けると評判で僕が頂いたのはレジスタンスばりの反骨精神だった。
スターウォーズというのは感動とかそういう安っぽいものを求めて観る映画じゃない。哲学的な教えがつまってて(どんな哲学かと言われてしまえば上手く言葉にまとめられないのだけど)、芯に一本太い信念があって、悪役とはいえ感情移入出来るキャラクターが魅力な映画であって、

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ドラマ「コウノドリ」シーズン1とシーズン2は何が違ったのか

ドラマ「コウノドリ」シーズン1とシーズン2は何が違ったのか

「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」
聞かれたら困る質問を親にはしなかった。疑問を持たなかったから。
春になれば花が咲くように、夏になれば金ローでトトロかホタルの墓が放送されるように、時期がくれば勝手に生まれてくるのものだと思ってた。インスタにあがる名前も知らない子どもの映像をみても何も感じなかった。
それから一転、縁あって結婚。テレビっ子の嫁の影響を受けてバラエティーやドラマを良く見るようになっ

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1917(ほんのりネタバレあり)

1917(ほんのりネタバレあり)

久しぶりの映画。友達の発案で「1917」を観たのだけど、恥ずかしながら、今の今まで全く情報を知らなくて予備知識0で観た。
それでも食べ応えのある重厚な物語で書き残しておきたい。

全編がワンカットには見える映像の没入感、尋常じゃない。非日常的な映画館の暗さも相まって、スコとブレイクの感じていたであろう緊迫感をありありと感じる。イスに座っているだけなのに。
戦場の喧騒、それとは対照的な息を潜めなけれ

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ノンフィクションであってほしい映画

ノンフィクションであってほしい映画

初めて眼鏡をかけたとき、世界はこんなにも色があったのかとめちゃくちゃ感動した。グリーンブックはその体験を思い出すような映画だった。
色眼鏡を外して、単純にストーリー自体にスポットを当てても、ドクとトニーの2人は美しい関係だった。R2-D2とC-3POがそうだったように、ウッディとバズがそうだったように、甘しょっぱいが流行ったように、ドクとトニーみたいな対照的な主人公の掛け合いは、それだけでも魅力的

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雨に打たれて

雨に打たれて

 怒りに関する本を読んで余計にイライラする。
 濡れないために傘をさしたのに、傘から垂れる雨粒で鞄がびしょびしょになっている感覚だった。逆効果、むしろ自分から損をしにいったような気分だ。

 本の趣旨は怒りを活力に変える人と怒りに支配される人の違いを洗い出し、どのようにすれば怒りを上手く扱うことが出来るのかをレクチャーしてくれる自己啓発本である。
 買った時はホクホクしていたのだけれど、いざ読んで

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非行少年だった世界線

非行少年だった世界線

宮口幸治「ケーキの切れない非行少年」を読んだ。

 本書で著者は「反省できるだけでも上等」と記述している。
それは著者が出会った非行少年のなかには反省すらできない少年たちが大勢いたからだという。
深く印象に残ったのは「自分はどんな人間だと思うか?」の質問に対して、約8割の少年が「自分はやさしい人間だ」と答えた、という一文だ。
連続強姦、一生治らない後遺症を負わせた暴行、放火、殺人など罪の重さに問わ

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