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【不思議な実話】私の夢供養❾

私の人生とここ数年のこと

かつて私は23歳の時、友人に連れられて行った旅先で突然前世の記憶を思い出した。それ以降、何をやってもうまく行かなくなり、それまで描いていた漫画が描けなくなって、実家で父や祖母の介護とバイトを転々とする生活を送ってきた。

前世の記憶は私にとって呪いのように思われた。これのために私の人生はぶっ壊れた。やがて、私は前世の記憶と距離を置く決心を固め、介護士として新しい人生を歩み始めたが、しかしそこでも前世の記憶は私を解放してくれなかった。

45歳になった頃、祖母の死で介護生活を終えたことをきっかけに史跡に行き始めた。夢で見た戦国時代の記憶について調べるべく、岐阜城、名古屋城、敦賀の城跡などを訪れた。そして行きたくなかったが、成り行きで安土城にも行ってきた。

そのあとのことだ。母のために東京旅行を計画していたある日、夢を見た。

『根津神社』という声を聞いた。
『根津神社で記憶力の祈願をせよ!』

その声に従い私は2019年の初夏、東京に行き根津神社で記憶力の祈願をした。

そしてその夜、私は東京のホテルで夢を見た。

老いて白髪になった貴婦人の亡霊が、戦国時代、石上いそのかみという一族が武田信玄に滅ぼされた恨みと絶望を私に話した。石上一族の夢を見たその日の朝、私は母のたっての希望で訪れたディズニーランドで転び、足を負傷した。

なんとか無事に大阪に帰った私は、すぐに石上一族についての手がかりを探すため、奈良・石上いそのかみ神宮へと向かった。

そこで私は何年も前から夢に出てくる戦国時代の双子の兄妹(姉弟?)『布都ふつ布留ふる』が、東京で遭遇した石上一族の亡霊と関係があることに気が付き、武田信玄に滅ぼされた石上一族と私の前世に、なんらかの強い縁があることを知るのだった。

しかし奈良から帰って間もなく私の脚は壊れた。東京旅行で負った傷が元であろう、杖なしでは歩けない状態になった。好きだった職場を退職し、療養生活を始めると同時にコロナ禍に突入。失意の日々を送るうち、やがて夢に導かれて和歌山の根来寺を訪れ足の治癒を祈願をしたのち、徐々に足は回復していったが完治はしなかった。

生きるために新しい職についたが上手くいかず、数か月でまた退職。わけあって引っ越しもしたが、新居では心霊現象が続発。元旦早々ご近所とのプチトラブル。

不幸続きで始まった2022年1月、たまたま訪れた大阪・堺の不思議な伝説を持つ浅香山稲荷に参拝したことで、連日起きていた心霊現象はパタリとおさまった。

こうして、ようやく新居で落ち着いて暮らせるようになった私と母だった…

はず、だった。


どん底

──これで穏やかに暮らせる。そう思ったはず、の2022年4月。

季節は春…


「おえええええええっ…!」昼近くまで布団に横になっていた私は、今日こそはと布団から起き上がってみる。

「うっ、うええっ…!」ダメだ。頭がぐらぐらする、吐き気もひどい。今日も無理だ、全然治ってない。もうそろそろ治ると期待したのに、まだ気持ちが悪い。

私はここ数年で一番のどん底にいた。介護施設の事務員の仕事が決まって、今月から働く予定になっていた、…はずだった。

──そのはずだったんだ、なのにどうしてこんなことに!

私は原因不明の激しい頭痛とめまい、吐き気に毎日苦しんでいた。脳の精密検査を受けたが原因不明と言われた。新しい仕事に出るはずが、ただ立っていることすらままならず、歩こうものならフラフラになり10分で嘔吐してしまう。こんな状態で出勤できるわけがない。

仕事については、「快復するまで待ってもいい」と先方は言ってくださったが、一向に治る気配はないので辞める他なかった。原因不明の病気ではなんの治療法もなく、ただ家で寝ていることしかできない。

(ここ数年でボロボロだ……始まりは2019年、東京に行ったあの日から…夢に導かれ根津神社に行き、石上一族の霊に遭い、足を怪我して……)

その足もやっと良くなったと思ったら、仕事探しで苦労して、心霊現象に悩まされ、それが終わった途端に今度は原因不明の激しい頭痛… せっかく決まった仕事はまた辞めることになり、そろそろ頼みの蓄えももはや残りわずかだ。

「もう、いったい どうすりゃいいんだよ…!」

布団の中で「おええ!」と吐き気に耐えながら、にじむ涙をティッシュで拭く。母も私を心配するあまり、動揺して毎日泣いていた。

「あんたはうつ病や!起きなさい!これは気の病や、さあ起きて!起きて!外に行かないと狂ってしまう!!」

「いや、違うって おかあざん。。。これ、ぜったいメンタルの病気じゃない。。。」

「いいや!あんたはうつ病や!!気を強く持ったら治るんやっ!」

「ちがうって!!ああーー、頭が痛いときにうるさいっ、もう 向こう行って!!」

「ほら!あんた怒ってるやんか、やっぱり気持ちの病気や!!」

「ええい やかましいっ!!向こう行って!!もう一人にしてぇぇっ!!!」

心配してくれるお母さんには申し訳ないが、とにかく今は寝かせてくれ、ひどく頭が痛い・・・

(ごめんね、お母さん。どこまでも不甲斐ない娘で……)

涙をこらえてまた布団にもぐる。


呪いの正体

「うーーーん……、ずいぶん苦しそうですねぇ」

眠る私をのぞき込んで男の人の声が聞こえる。この声は、堺のあの神社、浅香山の神様だ… 1月に我が家の心霊現象を解決してくださった神様が、またおいでくださった…

「〇が〇塩で身体を清めなさい」神様は言った。

(……〇が〇塩?)

何?なに塩??
三文字、真ん中が『が』ということだけはっきり聞き取れた。『が』を挟んで、その前後の二文字が『い段』の音だった。

とりあえず、塩と言ってることだけはわかる。

(えっと、…塩でお祓いしろってことですか?)

「そうです、必ず”〇が〇塩”でやるのですよ」

目が覚めて、しばし布団の中、薄目を開けてぼんやり天井を見る…

(”〇が〇塩”って、なんの塩だろう?)

前後の音が『い段』だったから、い段…「い、き、し、ち、に、ひ、み、(い)、り、ゐ」のどれか…?

「いがい塩」
「きがき塩」
「しがし塩…、いや、なんだこれ? ハァ、ハァ… 意味不明だ…」

もういいや… なんの塩かよくわからん。以前石上いそのかみ神宮で買った塩が引き出しに入ってたはずだ。2019年、石上の一族に導かれて初めて参拝したときなんとなく購入して使わずにしまっていた。とりあえず今回はあれを使おう…

塩を手に壁にすがってよろよろと風呂場へ入る。全身を塩揉みして洗い流した。神様に塩で身体を洗えと言われたということは、なにか憑いているという意味だろうか?いや、私は霊が原因で病気になるとはあまり思わないのだが……

とはいえ、藁にもすがる思いでその日から数日塩で身体を清め続けた。石上いそのかみ神宮の塩で、だ。

数日洗っているうちにやっと気が付いた。

(ああ!そうか、”にがり塩”だ。『に』も『り』もどちらもい段。間違いない。なーんだ、こんな簡単な単語を聞き間違えるとは、あいかわらずドジな私だ…)

もともと私はよくこういう聞き間違いをする。しかし、神様の声を聞き間違えるとは、神の声はリアルな『音声』なのだろうか……?

「はぁ、はぁ、…これ、”にがり塩” かなぁ?」首をかしげながらも、これしかないので石上神宮の塩を使って毎日シャワーを浴びる。めまいと頭痛は相変わらず続いている。はあ 寝込んでから、もう何日経ったっけ?


食事も気持ちが悪くて味わってなどいられない。毎日胃がむかむかする… お粥をお茶で流し込む。

私の憐れな姿を見て、母まで心労でやつれて苦しそうにめそめそと泣く。

ごめん。。私だって泣きたい… いや、泣く気力もなくなってきた… 今はもうとにかく眠るしかない。座っているのも気持ちが悪いんだ……

嘔吐感をこらえて布団に戻る。ボロボロだ。なんてみじめな私だろう…


目を閉じると、また夢に神様の声が聞こえてきた。とても穏やかで上品な男性の声だ…

「あなたには遠縁の親族・Q家由来の呪いがかかっています。わかっていましたか?」

いきなりその話をするのか… 少し驚いて返事をする。

「はい、こどものころから わかっていました…」

「そう、これは古い呪いですね」

「はい…」

すると目の前に映像が見えてきた。過去の映像… 明治、大正時代頃のようだ。30代くらいの小柄な男が見える。背広を着ている。彼はこの日意気揚々とずいぶん誇らしげだ。応接室だろうか、誰かと商談のような話をしている?アメリカとの貿易について、…どうやら大きな仕事の話のようだ。

(アメリカとの貿易?……船を使う仕事だな。私の親族Q家はかつて網元をしている裕福な家だった、船をたくさん持っていたと聞く。太平洋に面した港町がQ家の仕事場だったはずだ。ということはこの小男、Q家の人だ…!)

商談の場面から映像が切り替わった。屋敷の中にいる。あの小男がなにかぶつぶつ文句を言っている。さきほどとは打って変わって、ずいぶん卑屈な表情をしている。なにか良くないことが起こったようだ。さっきのアメリカとの貿易話の件、失敗したのか?

彼の親族だろうか?姉や妹かもしれない。大正時代風の髪型をした女たちの姿が見える。女たちと彼が軽く言い争っているように見える。興奮する小男に、女たちが困った様子でなにかを断っているのが見えるが、声が聞こえない。ただ、小男がずいぶん恨めしそうに女たちを睨んでいるのが見える。

━ぶつぶつ言っている。

「おまえたち女はいいよなぁ!」恨めしそうな顔で、小男がひとり文句を言っている。「おれは男に生まれたばっかりに…!」

(えっ、なにこれ?)

(……ええっ?嘘でしょ)

(ちょっと待って!この男だっ、Q家を呪ってるの、この男だ!?)

(Q家は網元で、かつて網子たちを過酷な労働で苦しめたから、それで呪いがかかってるんだと思ってた… 違ったの!?)

動揺する私の目の前の景色が変わる。私はいつもの部屋に戻った。姿は見えないが、神様が横たわる私をだまって見つめておられる。

「…………」

「神様…、あの男が、Q家を呪った張本人なんですね…」

「……」

「なっ、なんでQ家の人間が、Q家の人間を、なんで…!」

アメリカとの貿易の仕事でなにかトラブルがあったのは間違いない。もしかすると彼は騙されて大損したのかもしれない。しかし、それが原因で親族と揉めて、親族を恨み、呪いをかけた?

いや、でもちょっと待て、そんなのめちゃくちゃな話じゃないか!仕事の失敗が元で家族、いや一族すべてを呪うなんて、ただの八つ当たりじゃないか。もし本当にそうだとしたら、あの小男、どう考えても性格異常者だ!

「…ええ。しかし安心なさい。なにも恐れることはありません。」 

神様はおだやかに、力強く言った。

「あなたがこれから生き方を変えて、『奉仕のこころ』で生きるのならば、どのような呪いであっても、あなたの歩む速さに追いつくことはできないでしょう。」


「“奉仕のこころ”で生きるのです!」


希望

目が覚めた私は光のなかにいた。いや、正確には布団の中だが、昼間の日差しが降りそそぐ部屋は心なしか輝いて見えた。

(どんな強い呪いにも負けない生き方がある?…奉仕のこころ……)

天井がキラキラして見える… 頭は重いが心が軽い……

子供のころからずっと思っていた、私にはQ家から流れてくる血の呪いを背負う宿命があると。他の親族にこの呪いは背負いきれないが、私なら背負える。私ならこの呪いから親族たちを守れる。しかし、代償がいる。子供の頃からこの呪いと共に墓に入る覚悟はしていた… いや、諦めていた。

しかし初めて知った。呪いに負けない生き方があるなんて… 『奉仕のこころ?』奉仕ってなんだろう?……ボランティアかな?

布団の中、頭痛は相変わらずだったが、希望が見えた。私は今まで自分の人生を諦めてきた。私は幸せになれっこないと。でも、もしかしたら…?


めまいをこらえて身体を起こし、塩揉みした全身をシャワーで洗い流して服を着てよろよろと外に出た。遠くに行く力はない。近所をとぼとぼ歩くだけだ…

植え込みで草掃除をしているおばあさんがいた。今まで気にして考えたことがなかった。「ありがとうございます、いつも掃除して下さってたんですね」と声を掛けると、「あはは、きれいにしたほうがみんな気持ちいいでしょう?」と、おばあさんは朗らかに笑った。


翌朝も頭痛は酷かったが、こらえて少し散歩に出た。登校中の小学生たちの交通誘導をするおばあさんがいた。通りがかった近所の人がおばあさんに声をかける。「あら◯◯さん、朝早くから今日もえらいわね、ごくろうさん」

「いいえ、当たり前のことをやってるだけよ。離れて暮らすうちの孫も、今頃きっと誰かのお世話になってるはず。だからこれはお互いさま、おほほほ!」力強い笑い声が私の心に響いた。

感謝

お互いさま

私の知らない生き方が、ここに ある。

「奉仕の こころ」


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