ヤマザキと森永

2024年4月29日 16:02

　企業のイメージは、人によって違う。

パン工場

　実家から歩いて中学校に行く時に、山崎パンの工場があった。

　ちょうど通学時間と、始業時間が重なっていたせいなのか、その会社の歌が聞こえてきた。最後の「ヤマザキパーーン」という声が伸びて、それは、これから仕事だから無理にでも気持ちを上げていく作用があったのかもしれないけれど、国道を歩いて学校に向かう中学生の背中も、ちょっと押してくれていた気がする。

　だから、なんとなく親近感があった。

　それ以来、さまざまなパン屋さんができて、それこそ、もっと本格的なパンも食べる機会が増えると、そちらの方がおいしいと思いながらも、大量に製造されているパンは、安いから、という理由で買うことは多かった。

　そういう時間の中で、山崎パンのイメージは、それほど悪くならないままだったけれど、わざわざ買うことは少なくなった。

　正式名称など詳細はわからないのだけど、「コロネ」と言われる棒状でパイ生地のようなパンを買っていくと、妻はとても喜んでくれる。近所の天然酵母のパン屋さんがあって、そこは店のたたずまいも、「コロネ」の味もおいしいけれど、自分にとっては、ちょっと値段が高い。

　品質などを考えたら、それは本当は価格が高くはないのかもしれないけれど、でも、自分にとっては、値段を考えてしまって、買う頻度が落ちてしまう。

　だから、スーパーへ行って、シュークリームとか、冷蔵が必要な商品が並んでいる中に、山崎パンの「生パイコロネ」を見つけたときは、ちょっとうれしかった。この商品の割には値段が安かったからだ。

　もし、これでおいしかったら、買える回数が増える。

　そんなことを思いながら、カゴに入れた。

　山崎パンが、森永乳業の「おいしい牛乳」を使ってクリームにしている、という表示が大きめにされていた。

　最初にこの、「生パイコロネ」を買って行ったとき、妻に喜ばれた。

　思った以上に、おいしいと言ってくれたので、それがうれしくて、またスーパーに行ったときに、購入した。

　そのときは、その隣に並んでいる「生フレンチクルーラー」も買ったし、パン売り場に並んでいる「生クロワッサン」というパンも買った。

　その３種類は、全部、山崎パンの商品で、どれも森永の「おいしい牛乳」を使っていると書かれていて、いつも、牛乳売り場で見ているけれど、今は貧乏なので手が出ないのが「おいしい牛乳」だったから、それもあって、この山崎パンの商品を買ってしまったのかもしれない。

　そんな微妙に屈折した思いもあったけれど、妻がうれしそうに食べているのを見たら、やっぱり買ってよかったと思った。

　生フレンチクルーラーを食べた妻は、こんなふうに言った。

「すごくおいしい。クリームもおいしいけれど、外側と中の両方の兼ね合いがいい」

　生パイコロネも食べた。

「フレンチクルーラーを食べてから、この生パイコロネを食べると、さっぱりして感じる」

　ただ、この生パイコロネは値段も安いから、例えば近所のパン屋さんで売っているコロネとは違うと思うんだけど？

「もっと値段が高いコロネは、外側のパイがパリパリしていて、それが美味しくて、だから、そういうのと比べると、これはもう少しパン寄りになってる。それは、値段の限界だと思う」

　そこから、言葉を続ける。

「だけど、そういうことが気にならないのは、外側と中のクリームのバランスがとれているせいだと思う。
　---- すごくおいしい」

　今回、３種類の商品は、妻の中では３位生クロワッサン。２位生フレンチクルーラー。１位が生パイコロネ、という順位だったそうだ。

　また買おうと思える商品だったし、値段の制限がある中での工夫のようなものを改めて感じた。

　山崎パンと、森永乳業が、うまく手を組めた、ということなのだろうか。

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