見出し画像

乙女日和、ミステリーの秋

山崎まどかさんの『乙女日和』という著書には、1年を、乙女として味わい愉しみ尽くす術がすべて書かれていたので、乙女として、実践し記録していこうと思います。

クリスマスも迫ってきた頃ですが、
まだまだ秋の振り返りです。

『乙女日和』は、秋の夜長はミステリーだと教えてくれました。
乙女の秋とは、ポケミス片手に喫茶店、とのことでしたが、私はポケミスとは何なのか知らずに生きていました。

そして、ハヤカワ・ポケット・ミステリの存在を知ったのです。
マスタード色の切り口、という意味も理解できたところで、早速ジュンク堂で、今秋の一冊を選びました。

あまり分厚すぎても、持ち運びが大変。
けれども深い秋の夜長だと思うと、薄すぎるものも深みが足りなく感じます。

そして、背表紙に書いてあるあらすじに目を通していき、その中で最も惹かれる物を選ぶことにしました。

そこで選んだのが
『乾きの地』。クリス・ハマー著。
田舎町で牧師が銃を乱射し、5人を射殺した事件の物語。
これは、かなり興味が湧きました。
牧師が住民達に向かって銃を乱射って!
当たり前に善良なイメージの牧師が、です。

結局この本を選んで正解でした。
私は、秋中この一冊に没頭していました。

本来読む速度は速い方ですが、ポケミスなのですごく丁寧に向き合いたかった上にシチュエーションも選びたく、その結果、秋中かかってしまったのです。

読んでみて、これまでミステリー小説に触れてこなかったのが勿体ないことだったと思いました。

牧師の乱射の理由、想像の及ばぬことでした。

秋は過ぎましたが、冬もあたたかい場所での読書が、過ごし方として素晴らしいと思います。
『乾きの地』、普段ミステリーを読まない人にこそおすすめです。冒頭からとにかく引き込まれてしまうから。

読書のために、喫茶店も行きました。
乙女らしく、珈琲だけでなく、ケーキやプリンもその都度添えました。
しかし、喫茶店はシチュエーションが大事で、読書に集中できる場所をもっと開拓していかなくては、と思っています。

過去の記事に書いたけどブックカフェ、とか読書に敢えて特化したカフェや喫茶店は嫌いです。あまりにもポーズすぎて、滑稽に思えてしまうので。
また今後の散歩の先で、運命の喫茶店との出会いも期待です。

さて、せっかくならミステリー漬けになってみようということで私は、ドラマや映画もミステリーを見まくるシーズンをおくりました。

まずドラマ。
ミステリーといえばのアガサ・クリスティの『ミス・マープル』。
同シリーズの『パディントン発 4時50分』、
『カリブ海の殺人』、『魔術の殺人』、『鏡は横にひび割れて』も重ねて鑑賞。
『ミス・マープル』、想像以上に退屈でした。
でもこの退屈さこそが、この作品の魅力だろうと思います。事件が起きても牧歌的な音楽が流れたりするので、基本、呑気。
紅茶を何杯も飲みながら、焼き菓子をたくさん用意して鑑賞するのがベストです。
ミス・マープルもいつもお茶しています。

『そして誰もいなくなった』は、同じアガサ・クリスティ原作でも、『ミス・マープル』の牧歌的呑気さは皆無のハラハラドキドキのドラマでした。ミステリーはこうでなくちゃ、という犯人のわからなさ。

『ディケンジアン』は、ミステリー要素がやや薄めでしたが、展開が気になって見進めました。(秋の食べ物フレンチトーストを焼いて、食べながら見ていました)。

『お嬢様は謎ときがお好き』は、オープニングのアニメーションがあんなに素敵なのに、本編といったら……というガッカリさで、なんとか、かんとか、見終えたという感じです。
破天荒なお嬢様が事件を解決するのですが、破天荒演出の運転シーンがクドすぎました。
ガッカリした、という割に、お嬢様のトレードマークの真っ赤なリップが素敵で、見終えたご褒美として真っ赤なリップを買ったんですけどね。ちゃっかり影響されました。

映画は、『ギリシャに消えた嘘』、『バルカン超特急』、『白ゆき姫殺人事件』、『ナイブズ・アウト』。
一番おもしろかったのはダントツで『ナイブズ・アウト』です。

ミステリー漬けの秋が、これまでのどの秋よりも楽しかった理由がわかりました。
何となく秋になると陥りがちな感傷的な領域に、立ち入らなかったからです。

それは常に、抱えているミステリーの行方が気になっていたから。
ワクワクしていて、そんなところに陥る暇がなかったのです。

秋の夕暮れにしんみりセンチメンタルなんてしていられなかったのです。
センチメンタルなんて、おじさんに任せるべきものだと思えてしまうのです。どうしても。 

乙女はワクワクしながら今を生きねばなりません。