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レコード価格とSkramzの本質と宮崎駿とChage&Askaと本当の気持ち


それが自分の収入の全てではないとはいえ、レコードを売るという仕事を関わっていることで「レコードって売れてるの?」という話を聞かれることは多い。そんなときは決まって「レコードは売れてないっすよ、若者に人気とかいうのも全部嘘ですよ」と答えているんだけど、ここ最近は円安がかなり進行したこともあり、輸入しているレコードの値段は数ヶ月前より1000円くらい販売価格が上がっているような気がする。


Everything Else / Suis La Lune (2xLP)

(↑これ、文字がリンクになっているので3LA販売サイトへ飛びます)

Dog KnightsからSuis La Luneの編集盤がレコードでリイシューされて入荷しているんですが2枚組で遂に販売価格7000円になりました。もう勢いやノリで買える値段じゃねえ!という意見もちらほら聞こえますが、2000年代以降のScreamo/Skramzを聴く上で最も重要なバンドの1つである彼らの作品も、いまではなかなか手が出ないというような現状があるかもしれない。

そもそもScreamoシーンのバンドたちの2000年代の印象は、音源自体は個人ディストロなどの流通に依存しているところもあり手に入りづらいところもあったが値段も安かった。今はかなり手に入れやすくはなったけど、値段は高くなった。なにより昔は世界情勢とあまり関係なかった価格や流通の問題が、いまでは世界情勢に大きく左右されることになった。それは音源に限らず生活物資、ガソリン、電気代なども同じで、誰も逃れられない大きな流れとも言える。

音源を買うこと、その意味は常に変化しながら今につながっている。分け合う、支え合う、という価値観はこれからの時代でうまく共有できるだろうか。世の中金が全てではない、という人間の良心的な部分はこの音楽シーンの核心でもあるけれど、アーティストに金を循環できるシステムは重要でそれがなければ我々は奪われるだけの奴隷である。

Sogno #3 EP / Øjne (LP)

イタリア激情、Øjneは日本では全く人気はないのだが海外アンダーグラウンドシーンにおいてちょっとカルト的な人気はあってbandcampのskramzタグではベストセラー的音源でもある。USのバンドのカルトは今はbedroom skramzのような気がするけど、日本やEUからのバンドはオリジナルの核心めいたものを今でも大事に引き継いでいるような気もする。ØjneはスペインのViva Belgradoのメンバーをゲストボーカルに迎えている曲があるんだけど、バンド自体もViva Belgradoのような、かつての2000年代Screamoを今の感覚と融合させてアウトプットしている感がある。この音源も収録曲数は少ないけれどすごく良かった。

レコ屋目線で見ると、このあたりの音源たちが4000円平均になってきていて、やはり良いと言われても気安く買える値段じゃないのでCDリリースもして欲しいなって気持ちはある。CD1000〜2000円台ならまだ冒険できる余地はある。サブスクも悪くはないけれど、サブスクはサブスクで音楽体験的に弱いので、音楽と思想を含めての表現でもあるこのシーンの作品とはそんなに相性は良くないと思っている。ほとんど人間はサブスクで聴き流したまま、その音楽が何を表現しているかを理解しようとはしない。



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