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ディスクレビュー : NUMBER GIRL - 『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』 / 他人が欲しがっているものが欲しい人たち

LP入荷したので書きました。
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90年代の終わり頃、日本の音楽シーンはマジで経済的に豊かになっていて印象に残っているのは97年、98年あたりで爆発的に名盤が生まれまくっていたことだ。椎名林檎や宇多田ヒカルが登場してJ-POP歌謡曲の様相は一気に変わっていったのはメジャーシーンでの話なんだけど、その大型アーティスト達がヒットを飛ばしていく中で、もう少し音楽マニアを唸らせるようなバンドをレコード会社も積極的に発掘していったという印象がある。特にトイズファクトリーや東芝EMIはアンダーグラウンドなところまで手を入れていて、NUMBER GIRLもそんな系譜で知ることになった。(ちなみに椎名林檎、宇多田ヒカルも東芝EMI。僕の好きだったSEX MACHINEGUNSも東芝EMIです。SEX MACHINEGUNSのベースのNoisyがロビーで話しかけてきた宇多田ヒカルに対して、社内にポスター貼られまくっているのに「お前誰やねん!」と突っかかった話はあまりにも有名)

その当時の新しい価値観に対してある程度レコード会社側も柔軟になってきたのだろう、メジャーデビューするバンドの音作りも攻めたものが多くなってくる。NUMBER GIRLの本作も当時のメジャーシーンの音源達と比較しても圧倒的にアンダーグラウンド志向だし何よりボーカルの音量が小さいのが良かった。それはイコール歌謡曲主体の日本の音楽シーン(メジャーのね)に対するアンチテーゼになっていた。リフ主体で組み上げる楽曲、楽器隊の音作りもアンダーグラウンドな風味を残しつつポップセンスもあり、中二病の少年少女の心を掴むのに時間は掛からなかった。とはいえ、当時のNUMBER GIRLの人気というのはあくまで限定的に過ぎず、個人的な体感でしかないが解散以降に人気が上がってきたような印象がある。当時もロキノン的なリスナーが大部分を占めていたけれど、そのうちの少数の何割かは見事にNUMBER GIRLからPIXIESやHUSKER DU、アメリカのインディーロックやポストハードコアディガーへの道を進んでいくことになり、そのうちの数名はさらに自分たちもバンドを始めていく。リスナーからプレイヤーへ。そういったことを考えると、彼らの登場は国内音楽シーンに大きな影響を及ぼすことにもなった、と今では言える。2000年前後頃のNUMBER GIRL、SUPER CAR、くるり信者のことは本当に好きじゃなかったのだけれど時間がたってようやくフラットに向き合えているのかもしれない。やっぱりすごいアルバムだと思う。(遅い)

ドラマーのネトウヨ化や自身のネタ化など、その後の彼らを取り巻く環境は一概にポジティブとは言えないのだけれど、彼らが国内シーンにタネを撒いたことは紛れもない事実であり、こうやってメジャーシーンに切り込んでいくバンドがいなければアンダーグラウンドなシーンにも刺激がないんだよなと思う。捨て曲ありのアルバムでもいい。これがなければ始まらなかったことがいっぱいある。

tracklist:
1.タッチ
2.PIXIE DU
3.裸足の季節
4.YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING
5.桜のダンス
6.日常に生きる少女
7.狂って候
8.透明少女
9.転校生
10.EIGHT BEATER

この先はいつもの毒にも薬にもならないテキストが続きます。

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