たかが受験、されど…


親御さんの中には、お子さんの成績が思い通りに上がらず、ストレスを溜めていらっしゃる方も多いかと思います。

「つい、子どもに手をあげてしまう。」
「子どもに言ってはいけない言葉を浴びせてしまう。」
「受験に協力的でない夫と喧嘩になってしまう。」
「子どもの気持ちがわからない。」など
お母さま方から、このようなご相談を受けます。

私も三人の子どもの子育て中には、「やってられない。」と投げ出したい気持ちになったことは日常茶飯事でした。
ただ、私が受験生を教える仕事をしていたことが私を支えてくれたように思います。

多くの子どもを指導して実感したのは、子どもは思う通りにはならないということです。
プロの講師である私が、どうしようもない母親である私に課したのは、わが子の成績に固執しないということでした。

私は、「理解すること」を最優先にして授業を実施しますので、大手塾とは進度が異なります。
得意分野では大手よりも先を進めますが、苦手分野では遅れがちになる。
よって、公開模試の成績にはばらつきがありました。
長女は国語の成績がひどかったですし、次女の社会の偏差値は算数の半分でした。
焦る気持ちがなかったわけではありませんが、理解せずに先を急ぐことの怖さをよく知っています。
また、「落ちてもいい。」と本気で思っていたのも事実です。
この「落ちてもいい」は、「知りたい・分かりたいと努力を重ねた上で、時間が足りなかった」場合を指します。
ですから、志望校は娘が本当に行きたい学校2校にしぼりました。
「他に受けない?」と聞くと「落ちたら公立に行く。」とあっさりしたものでした。

それでも親子は甘えからか、ぶつかることが多かったように記憶しています。
「やりたくないんなら止めればいいじゃない。」
「そんなところでウトウトしてないで、布団に入りなさい。」
「落ちたらお母さんのせいだから。」
親子喧嘩の最中は本当に腹が立ちました。冷静さを失うと、私が家出をしました。
言ってはいけない言葉が喉まで出かかったからです。
外出先で喧嘩になった折には、あえて静かなカフェに入りました。ついつい怒鳴ってしまう私に静かに話をさせるためです。
時間を置くと、娘たちも冷静になるようでした。

勉強することは大切です。鋭い牙もなく、強靭な体力もない私たち人間には、知恵という武器しかないのです。
けれど、成績や偏差値に振り回されるのは違うと断言できます。
そして、そのために親子関係を壊してしまうのは絶対に避けるべきです。

私は、三女が2歳の時に癌の宣告を受けました。
その、8年後には2度目の手術を受けています。
末娘が二十歳になるまでは生かせてほしいと、主治医と神様に懇願しました。
このころには相談する夫はいませんでしたから、どうやって子ども達を育てていこうかと自問自答する毎日が続きました。

「親は先に死ぬ」こんな当然のことを実感できたのは幸いだったと、今は思います。
親子の時間はとても大切で、たとえ喧嘩になっても分かり合いたいといつも思っています。

子どもが大切だから将来を案じて成績に固執することは理解ができます。
でも、どうか成績のみにふりまわされないで下さい。
お子さんにはいいところがいっぱいあるのですから。
そして、今、受験勉強をしているこの時間もお子さんの人生の貴重な時間なのです。


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