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タイ社会の残酷な美白信仰について

去年はタイのバンコクへ行く機会に多く恵まれた。
旅行で1回、海外出張で1回、他国へのトランジットついでに2回、合計4回バンコクに訪問した。

同じ都市でも訪問する回数が多くなればなるほど、新しい発見や前回訪問では気が付けなかった点が分かるようになる。
今回の記事ではタイ社会における美白信仰について書きたいと思う。

近年のタイはバンコクを中心に急速な経済発展をしている。
あくまでもバンコクに限るが5Gは通じるし、キャッシュレス決済もできる。それに海外の高級ブランドを買いあさる若い富裕層の姿を多く見かける。
富裕層に限らず一般的な若者の服装もだんだんと華美なものになってきている。

ある日の昼下がり、僕はバンコクで体調を崩してしまったため、一日中ゲストハウスの共有スペースでテレビを見ていた。
タイ語は何一つ分からないが、ドラマや広告を見て思ったのは、どれもこれもまるで韓国のものにそっくりであるということである。
俳優はみんな背が高く、色白で中性的な感じ。女優も当然色白でスレンダーで、韓国人のような見た目をしている。
また登場人物の社会的ステータスも見る限り高そうに見える。(プライドの高そうな、人を見下している感もにじみ出ている。)

街に出ても、あらゆる広告に起用されている俳優はタイ人であるが、どうも「タイらしさ」を感じないものだった。

どうしてタイの人(バンコクの人)はここまで韓国人みたいになろうとしているのだろうか?

そして僕は出張やバックパッカーを通してタイ人を見る中で分かったことは、その人物の社会経済的地位が上がるほど、つまりより高い学歴、高い年収になるほど肌が白い傾向にあるということである。

タイは階級社会なのである。
王室が階級の頂点であることは言うまでもないが、その次に政治・経済を牛耳っているのは中華系の人々である。そして、地方を中心に先祖代々その土地に住んできたタイ族・ビルマ族等の人々が続く形になっている。

中華系の人々はルーツが東アジアなので肌の白い人が多く、政治・経済において中心的な存在であるから富裕層が多く存在するグループである。
彼らの前述したとおり高いレベルの教育を受けることができ、特に企業経営者の子弟となれば欧米に留学する者も多いため英語が流暢だ。
もちろん所得が高いため高級ブランドや高級車をどんどん買うことができる。
タイの富裕層は日本の富裕層とは比べ物にならないくらいにお金持ちである。

その一方で地方からバンコクに出てきた人たちはタイ族が多く小麦色の肌をしている。
彼らの多くはあまり教育レベルが高くなく、ブルーカラーの職業をしているものの多くは浅黒い肌をしている。
だからタクシーやトゥクトゥクに乗っても英語は通じない。

このような社会的な背景があることから、タイの人々は「色白=高学歴、お金持ち、品格がある」と考えて色白になることに異様なまでにこだわる。

しかし、色白であることに美を感じるのは理解できるが、色白でありたい理由が見栄を張りたいからなのは個人的に理解できなかった。
これは肌の色で差別されることの少ない日本人だから言えることかもしれないのだが、どうして自分のアイデンティティ(肌の色)を否定してまで見栄を張りたいのだろうか?

あとこれまでタイは「微笑みの国」と呼ばれていて、人々はフレンドリーで親切な人ばかりだと噂では聞いていたが、実際そのような人は観光産業に関わっている人だけである。
最近のタイは他の先進国と同様に経済格差が広がり、2018年にクレディスイスが発表したレポートでタイは人口1%の富裕層が国の7割近い富を保有する「世界一不平等な国」と評された。
それに現在のタイは「中進国の罠」にはまってしまい、経済成長の鈍化と少子高齢化が進んでいる。
このことから、もはやタイは多くの国民にとって微笑む余裕の無い国になりつつあるのかもしれない。

話は逸れてしまったが、タイ社会における美白信仰を通して富裕層と庶民の経済格差が垣間見えた気がした。

そもそも経済発展は何のためにしなければならないのだろうか?
自分は学生時代に開発経済学のゼミにいて、発展途上国の抱える問題や経済発展への道筋などを学んできた。
しかし、なぜそもそも農業等で自給自足の生活ができていた人たちを貨幣経済に巻き込んで、お金が無ければ生活出来ないような社会にする必要があるのだろうか?
結果的に経済発展の過程で格差が生まれて、微笑みの国と言われたタイでも問題が浮き彫りになってきているのに。

タイの若い世代は今後どこへ向かっていくのか?
彼らの美白信仰や消費行動を見ると、色白であることで人から高貴に見られたい、ブランド物を集めて見栄を張りたいといった欲望が垣間見える。
企業としてはそのように若い世代がたくさん消費をしてくれれば儲かるのかもしれないが、、、、。

韓国のモノやエンタメを消費する過程で、考え方まで韓国の悪習のごとく見栄っ張りで人と比較ばかりして、階級意識で人をラベリングするようになったら待っているのは不幸な生活だ。
現に韓国の若い世代は「ヘル朝鮮」や「7放世代」といい将来を悲観的に見てしまっている。

タイ社会はそのようにならないで欲しい。
いつでも「微笑みの国」であり続けてほしいとバンコクのきらびやかな街を歩きながらそう思った。

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