🎮✏️『ゲームを作るぞ！』第5話：シナリオの作り方を学ぼう

葛木深琴

2024年4月21日 00:20

2024/04/20(土)

前回のあらすじ
Switchのゲームソフト『RPG MAKER WITH』の製品版が届いたので、購入特典や『遊ぶチュートリアル』、アセットシェアリングについて確認しました！

シナリオに詰まる

深琴
「うーん……」

真琴
「眉間にシワを寄せてどうしたの？」

深琴
「恐れていたことが起こりました。『ゴミ屋敷を救え！』のシナリオに詰まっています」

『ゲームを作るぞ！』第1話にて、「僕たちが出るゲームを作る」という話から一転、『RPG MAKER WITH』にはキャラクターエディタがなくどうしたものかとなりました。苦肉の策として中の人(っぽい猫さん)が主人公のゲームを作ることになったのですが……。

深琴
「全く浮かびません」

シナリオの作り方を学ぼう

真琴
「短編なんだから、そんなのテキトーでいいじゃない」

深琴
「ダメです。僕もこれでもクリエイターの端くれ、プレイしてくださる方が面白いと言ってくれるようなものを作りたい」

真琴
「全く、変なプライド捨てなさいよね！初めての作品なんだから、そんなの拘らなくていいのよ！」

WITHにキャラクターエディタが無いことにご立腹だった桜木さんには言われたくないのだが、それを突っ込むと喧嘩が始まりそうだ。やめておこう。

深琴
「ちょっとかじる程度でもいいので、ゲームシナリオの作り方について学びたいですね。シナリオが決まらないまま、ゲームを作り始めるのは危険です。マップやイベント、フラグ管理、データベース、それら全てにシナリオは関わってきます」

真琴
「たしかに、シナリオが定まらないまま作りはじめて、余計なマップを作らされるのは嫌だわ」

そういうわけで、今回はゲームシナリオの作り方について、簡単に学んでいきたいと思います！

使用教材『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

今回、教材として選んだのは、こちら。『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方。脱・完成できない病！キャラクター・世界観の作り方とは？20分で読めるシリーズ』(茶天著)です！

20分で読めるとある通り、ゲームシナリオの基本的な作り方をサクッと学べる、ありがたい本です。一通り読みましたが、なるほど、まずはこうやって作るのかということが分かり、ゲームシナリオ初心者の方にオススメです。

深琴
「そもそも、僕たちが今回作ろうとしているゲーム、『ゴミ屋敷を救え！』の元ネタとなった僕の作品、『ゴミ屋敷を救え！社会復帰への道』も、執筆に詰まっているんですよね」

真琴
「ちょうど、アナタが執筆をサボっているせいで、私達の冒険が全く進まなくてイライラしていた所よ。この機会にお話作りの基本を身に着けなさい！」

三行であらすじを作る

深琴
「『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』によれば、物語の完成に重要なのはズバリ構成だそうです」

真琴
「構成？起承転結とか、そういうこと？」

深琴
「簡単に言えばそうです。ですが、今回は三分割でシナリオを作っていきます」

A-日常から非日常への移り変わりを描く
B-三分割法で『過程』を作る
C-目的が達成されて日常へ帰還する

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

真琴
「分かるような、分からないような」

深琴
「どういうことなのか、詳しく見ていきましょう」

シナリオはどんなジャンル、内容であっても、あらすじは次の三つのパートに分割できます。
【A】始まり（最終目的を提示）
【B】努力（主人公が最終目的の達成を目指す）
【C】結果（最終目的が達成される）
Aで主人公の目的が設定され、Bで主人公が目的に向かって努力し、Cでは努力が実ります。物語とは、簡単に言えば主人公が目的を達成する過程を描いたものなのです。

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

真琴
「なるほど……たしかに、今まで私が読んできた物語も、そういう展開だった気がするわ」

深琴
「物語の構造を大まかに掴めるようになると、他の人の作品を楽しむときにも活かせそうですよね。この流れに従って、まずは【A】パートを考えてみましょう」

【A】始まり（最終目的を提示）

発想のヒントとしては、目的には『倒す』『探す（捜す）』『入手する』『到達する』の四種類に分類することができるので、悩んだらいずれかに当てはまるものにしましょう。

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「これでいうと、僕たちが作るゲームの目的はタイトルの通り、ゴミ屋敷を救うこと。上記の引用に沿うなら、ゴミ屋敷のゴミ（モンスター）を倒すことでしょうか」

真琴
「ゴミ屋敷からアイテムを探す、綺麗で快適な生活を手に入れる、ゴミ屋敷に埋もれた秘密の部屋に到達する、とかでも面白そうだわ！」

深琴
「たしかに、この時点で色々なシナリオの可能性を感じますね。候補としてメモしておきましょう」

メモ【A】始まり（最終目的を提示）の候補
a.ゴミ屋敷のゴミ（モンスター）を倒す
b.ゴミ屋敷からアイテムを探す
c.綺麗で快適な生活を手に入れる
d.ゴミ屋敷に埋もれた秘密の部屋に到達する

深琴
「次は、【B】を飛ばして【C】を考えるようです」

【C】結果（最終目的が達成される）

目的を達成してどうなったかという結果の部分もはっきりさせておきましょう。

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「さきほどの、【A】の候補から【C】を考えるなら、こうでしょうか」

メモ【C】結果（最終目的が達成される）の候補
a.ゴミ屋敷からゴミ（モンスター）がいなくなり平和になる
b.ゴミ屋敷からアイテムを見つけ平和になる
c.綺麗で快適な生活を手に入れ平和になる
d.ゴミ屋敷に埋もれた秘密の部屋に到達し平和になる

真琴
「平和になってばかりじゃない！真面目にやんなさい！」

深琴
「意外と思いつかなくて」

真琴
「まあ、どうしても平和にしたいならaでいきましょう」

というわけで、ここから先は「【A】ゴミ屋敷のゴミ（モンスター）を倒す」→「【C】ゴミ屋敷からゴミ（モンスター）がいなくなり平和になる」を軸に考えていきます。

【B】努力（主人公が最終目的の達成を目指す）

Bパートを作るコツは、A、C 同様に一行で表せる内容にすることです。たくさんの積み重ねが描かれるのに、たった一行だけというのは変に感じるかもしれませんね。
実はB で発生する数多くのイベントは全て目的達成の条件を満たすためのものです。主人公がその条件を満たすために奔走する、これがBの本質です。
目的達成の条件は、どんなに重厚長大な物語を構想していても一つだけ設定するようにしましょう。一つの目標、一つの条件を中心に物語を展開していくと、ぐだつきや話の方向性がズレていくのを防止できます。

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「うーん、そうなるとBは……」

【B】ゴミを倒すための伝説の掃除道具を入手する

真琴
「待ちなさい！伝説の掃除道具って何よ！」

深琴
「分かりません。『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』に書かれていた例を参考にしたらこうなりました」

真琴
「せめて、"評判のお役立ち掃除グッズ"を買いに行くとかにしときなさい。伝説の掃除道具なんて探しに行かせたら、マップを考えるのが面倒そうだわ」

まとめるとこうなりました。
【A】始まり（最終目的を提示）
　　ゴミ屋敷のゴミ（モンスター）を倒しに行く
【B】努力（主人公が最終目的の達成を目指す）
　　ゴミを倒すための評判のお役立ち掃除グッズを入手する
【C】結果（最終目的が達成される）
　　ゴミ屋敷からゴミ（モンスター）がいなくなり平和になる

深琴
「次はこの構成を掘り下げていきます」

A-日常から非日常への移り変わりを描く

よくある流れとして、Aパートは日常から非日常へ突入する様子が描かれ、日常に帰還するために目的の達成を目指します。
日常とは最終目的が存在していない状況、非日常は主人公が最終目的の達成に向けて活動している状況をいいます。
最終目的を達成すると、主人公はかつての日常か新たな日常を手に入れることができます。最終目的とは、日常に帰還するための手段なのです。

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「なるほど。ゴミ屋敷の住人としては"ゴミがある状態が日常"だと思っていましたが、"ゴミがある状態は非日常"なんですね……」

真琴
「ゴミ屋敷の住人にとっての日常がどう、非日常に変わるのかを描かないといけないわけね」

深琴
「僕にとっての一番の非日常は、桜木さん、あなたの存在ですけどね。鏡の世界から来た魔法使いのお嬢様ですよ！？」

※詳しくは『ゴミ屋敷を救え！社会復帰への道』をご覧ください。

真琴
「私にとっての非日常は、アナタの家そのものよ。中の人！はやく片付けるのよ！」

中の人
「に"ゃぁぁ」

深琴
「話を戻しましょう。例えばですが、桜木さんの魔法によってゴミがモンスター化し、人が完全に住めなくなってしまった葛木家を、猫さんの中の人が掃除しにいく、というのはどうでしょうか」

真琴
「あら！私のせいにするの！？いい度胸ね」

深琴
「待ってください。手から炎を出さないでください。家ごと燃えるゴミになってしまいます」

真琴
「まあ、設定としては悪くないわ。魔法でゴミがモンスター化は採用よ。私のせいかは別としてね」

『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』では、Aパートの作り方として2つのタイプが書かれています。

Aタイプ
【A1】日常
【A2】非日常への突入
【A3】最終目的の提示

Bタイプ
【A1】非日常
【A2】経緯の説明
【A3】最終目的の提示

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「Aタイプの方が作りやすいみたいなので、Aタイプで考えてみましょうか」

Aタイプ
【A1】日常
　　葛木家の猫ケージにて平和（？）に暮らしている中の人。
【A2】非日常への突入
　　深琴たちの留守中にゴミが魔法の力でモンスター化。中の人が深琴と真琴にゴミの討伐を命じられる。
【A3】最終目的の提示
　　葛木家の日常を取り戻すためゴミの討伐を決意。

真琴
「あら、良いんじゃない。一応、筋としては通りそうだわ」

B-三分割法で『過程』を作る

Bパートは目的達成の条件を満たす過程が描かれるというのは説明した通りです。その過程は一体どう描けばいいのでしょうか。
実ははじめにやった A,B,C と三分割する構成法を応用できます。やり方は全く同じです。目的の提示、努力、達成を設定すればいいのです。
【B2-A】始まり（目的を提示）
【B2-B】努力（主人公が目的の達成を目指す）
【B2-C】結果（目的が達成される）

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「Bパートは、"ゴミを倒すための評判のお役立ち掃除グッズを入手する"でしたね。これを三分割すると、」

【B2-A】始まり（目的を提示）
　　評判のお役立ち掃除グッズを買いに行く
【B2-B】努力（主人公が目的の達成を目指す）
　　お金を入手する
【B2-C】結果（目的が達成される）
　　評判のお役立ち掃除グッズを入手した

深琴
「この調子でBの部分を深堀りしていくようです」

【B3-A】始まり（目的を提示）
　　お金を探す
【B3-B】努力（主人公が目的の達成を目指す）
　　深琴のヘソクリのありかが書かれたメモを入手する
【B3-C】結果（目的が達成される）
　　お金を手に入れた

【B4-A】始まり（目的を提示）
　　深琴のヘソクリのありかが書かれたメモを探す
【B4-B】努力（主人公が目的の達成を目指す）
　　深琴の部屋を探索する
【B4-C】結果（目的が達成される）
　　深琴のヘソクリのありかが書かれたメモを入手した

【B5-A】始まり（目的を提示）
　　深琴の部屋を探索する
【B5-B】努力（主人公が目的の達成を目指す）
　　中の人がケージから出る
【B5-C】結果（目的が達成される）
　　深琴の部屋を探索した

真琴
「ややこしいわ！整理なさい！」

【B1】ゴミを倒すための評判のお役立ち掃除グッズを買いに行く
【B2】掃除グッズを買うにはお金を入手する必要がある
【B3】お金を手に入れるために、深琴のヘソクリのありかが書かれたメモを探す必要がある
【B4】そのメモは深琴の部屋にあり、部屋を探索するにはケージから出る必要がある

深琴
「うーん、なんだかアッサリしていますね。これで良いんでしょうか」

真琴
「短編だし良いんじゃない？下手に色々詰め込むより、確実に完成させることの方が大事よ。次はどうするの？」

C-目的が達成されて日常へ帰還する

Cパートを解剖すると次の三ステップになります。
【C1】関門への挑戦
【C2】目的の達成
【C3】その後

【C1】で主人公の前に目的達成の最大の障害が立ちはだかり、【C2】ではそれを打ち破って目的を達成します。そして【C3】で日常に帰還した主人公の様子が描かれて物語は幕を引きます。

茶天著『３行からはじめるＲＰＧシナリオの書き方』

深琴
「これでいくと……」

【C1】関門への挑戦
　　一番凶悪な魔力を放つ部屋へ突入し、ラスボスの元を目指す
【C2】目的の達成
　　ラスボスと対峙し、勝利する
【C3】その後
　　葛木家が平和になり、中の人の日常が戻って来る

深琴
「こんな感じですかね」

真琴
「流れがずいぶん具体的になったわね」

深琴
「構成って大事ですね。次回はキャラクターと世界観について考えていきましょう」

まとめ

ゲームをつくりはじめる前に構成を考えよう
シナリオ初心者は三分割法を意識しよう

#ゲーム #ツクール #RPGMAKERWITH #木琴コンビ #深琴と真琴の琴棋書画 #勉強 #シナリオ

次回へ続く

ゲームのマガジン

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