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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので…

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普段はイベントや空間デザインの仕事をしています。月に2〜3本位、映画館で映画を観るので、備忘録的に感想をまとめることにしました。よろしくお願いします。

最近の記事

映画へGO!「碁盤斬り」

(※多少のネタバレあります) 原作が落語なんですね。 それを映画に仕立てて、とても魅力的な時代劇となっていました。監督・役者・演出陣の様々な想像力/創造力の結集です。 「鬼平犯科帳」に続き、期せずして2週連続で時代劇を楽しみました。 現代の感覚で見ると、主人公柳田(草彅剛)の思考回路や話の展開など「えっ?そうなっちゃうの??」というようなツッコミどころ多数なのですが、江戸の美しい四季を背景にした絵づくりの格調の高さや、時代劇にしてはモダンな画面の動きのリズム・抑揚などのセン

    • 映画へGO!「鬼平犯科帳 血闘」

      (※多少のネタバレあります) 「SHOGUN」のように、ハリウッドがグローバルエンターテインメントとしての時代劇をつくるご時世。Made in Japanの保守本流である松竹が、今どのような時代劇を撮るのかに興味が湧いて、「鬼平犯科帳」を観て参りました。 ところどころで、余白・余韻のないテレビドラマ風な、的確過ぎる描き方が気にはなってしまったのも事実ですが、気づけば徐々に引き込まれ、時代劇特有のカタ、歌舞伎的な見得の切り方などの演出が心地よく感じてきて、それらを映画館の大画

      • 映画へGO!「無名」

        (※多少のネタバレあります) 美しい男優と女優、ファッショナブルなスーツ、ムーディーで陰影ある光、ばっちりと計算された画面の構図、神経質なまでに厳選されたプロップ、お洒落なベーカリー、そして何より、激しいダンスのような息を呑むアクション・・・。 他に何がいるの?という位、ぐいぐい引き込まれる映画でした。フィルムノワール。 これより優れた映画って、恐らくたくさんあると思うのですが、緊張感がみなぎりながらも、いつまでも観ていられ、時を忘れてうっとりさせてくれる作品って、自分にと

        • 映画へGO!「青春18×2 君へと続く道」

          (※多少のネタバレあります) 男性の主演であるジミー役のシュー・グァンハンは、とても絵になる俳優でした。 特別な二枚目ではないと思うのですが、旅する日本の風景の中に、異邦人として溶け込みながら、かつて恋をした彼女を探し、自分の今も見つめようとしている切ない姿に、嫌みなく感情移入ができます。 一方で女性の主演アミ役は清原果那。こちらは明らかに美女ではあるものの、演技に変な自意識が侵食しておらず、台湾のバックパッカー役にスッと入り込んでいて、こちらも共感しやすく描かれていました

        映画へGO!「碁盤斬り」

          映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

          (※ネタバレあります) 全然異なる設定や題材ではあるのですが、観終わった直後には処理し切れない余韻を残し、心がざわつくのは、「ドライブ・マイ・カー」と同様の感覚でした。 これは濱口監督が狙う、観客との距離感なのでしょうか?くせものですね・・。 前段は、過剰なまでにスローなペースで展開される、舞台となる田舎エリアでの生活風景の描写。 それは、淡々と自然と向き合って生きている主人公とその家族や仲間たちの独特の時間感覚を、意図的に観客にも同じテンポで与えているのだ、ということに後

          映画へGO!「悪は存在しない -Evil Does Not Exist-」

          映画へGO!「プリシラ」

          (※多少のネタバレあります) 「ロスト・イン・トランスレーション」好きの自分としては、ちょっと期待値が高すぎて、結果”なんか変な映画だったな・・・”という読後感で映画館を後にしました。 「14歳(!)でエルビスプレスリーと出会って、アッという間に恋に落ち、一緒にファミリーとして暮らし始めながら、ついに結婚をし、子供も産んで、やがて別れが訪れるその瞬間まで」・・を一気通貫で主人公プリシラの視点で描いた映画です。 まずもっての冒頭からの違和感は、プリシラが14歳の段階でお互い

          映画へGO!「プリシラ」

          映画へGO!「落下の解剖学」

          (※多少のネタバレあります) カンヌのパルムドール、アカデミー賞の脚本賞などを受賞、かつ法廷モノということで観に行って参りました。(法廷モノ好きなので・・) 確かに深く激しいセリフの応酬は見応え十分であり、その情報量の多さゆえ、観る側のエネルギーを大きく消耗していくレベルです。笑 一方法廷モノとしては、アメリカの裁判(例えば「SUITS」的な)から連想されるような、いわゆる知的ゲームのラリーを繰り返しながら、白と黒をはっきり決着させていくようなスカッとした展開ではありませ

          映画へGO!「落下の解剖学」

          映画へGO!「コットンテール」

          (※多少のネタバレあります) イギリスと日本の合作。監督&脚本がイギリス人、キャストがほぼ日本人というところになんとなく惹かれつつ、予告編映像の風景があまりにムードたっぷりに美しかったので鑑賞してみました。 妻(木村多江)を認知症で失った夫(リリーフランキー)。妻の遺言に導かれ、イギリスのウィンダミア湖に向かう夫と息子(錦戸亮)の間には、積み重なった大きなわだかまりがあり、旅の途中で衝突を繰り返しながら、でもいつかはわかり合えていくのか・・? というのがざっくりストーリーに

          映画へGO!「コットンテール」

          映画へGO!「梟 ーフクロウー」

          (※多少のネタバレあります) 不穏なムード一杯の、”そそるビジュアル”に誘われて観に行きました。 結果、終始退屈することなく楽しめたものの、とはいえ今一つココロに残るものがなかったかな・・というのが正直な感想です。 そもそもイメージしていたホラー的な要素はありませんでしたし、かと言って深く掘り下げられたヒューマンドラマでもなければ、サスペンスとしても、わかりやすさの方が先に立って、思ったほどの意外性やハラハラドキドキ感はなかったですかね。 とはいえ、そういうジャンルレス

          映画へGO!「梟 ーフクロウー」

          映画へGO!「コット、はじまりの夏」

          (※多少のネタバレ) 大家族の中でも、静かに孤独な日々を生きる少女コット。両親から追い出されるように親戚の家に預けられるのですが、そこでの毎日がコットにとって、かけがえない経験となっていく。 いろいろあってのエンディングの先、コットがどうなっていくかは、観るものの想像に委ねられるカタチではあるのですが、”はじまりの夏”というタイトルにもあるように、切なくもどこかポジティブな予感に溢れていて、とても素敵な読後感の映画でした。 前評判通りにコット役の少女は、胸がキュンキュンす

          映画へGO!「コット、はじまりの夏」

          映画へGO!「市子」

          (※多少のネタバレあります) 杉咲花演じる、抱えきれないほどに重たく暗い過去を背負った主人公の女性。 本当に普通でささやかな幸せを手に入れられそうになったところで、それもするりと逃げていってしまう。。 彼女が何者であるかを描いたヒューマンドラマなのですが、時間を遡りながら、闇の奥に隠れた事実を少しづつ明らかにしていくミステリーのフレイバーもあり、とても見ごたえのある映画でありました。 まずとても感心したのは、撮影の巧みさでした。 説明がなんとも難しいのですが、映像の切り取り

          映画へGO!「市子」

          映画へGO!「ポトフ 美食家と料理人」

          (※多少のネタバレあります) タイトルからすると、料理を真ん中に置いたハートウォーミングなロマンチックコメディーみたいなありふれた感じが想像されて、遠慮しようかと思ったのですが、監督がトラン・アン・ユンであれば「大丈夫なはず・・」ということで鑑賞。 結果、観て良かった、見逃さなくて良かったと思える作品でした! ちょっとスノッブだけれども、フレッシュなセンスが溢れていて、平凡に陥らないラブロマンス・人生賛歌。ココロ震わされました。 自分自身が料理をよく作る方なので、長回しで

          映画へGO!「ポトフ 美食家と料理人」

          映画へGO!「枯葉」

          (※多少のネタバレあります) あらすじを文章にしてしまうと、こんな感じです。 辛く冴えない毎日を送っている中年男女が、ひょんなところで出会い、距離が近づき、でも一度は離れてしまうが、最後には結ばれていくというミニマルなラブストーリー。 つまりどうってことのない内容のはずなのですが、退屈な映画かというとそういうことでもなく、気づけば静かにスクリーンに引き込まれていくのでした。 その理由のひとつは、画面全体にデザインされ、思わずハッとさせられるカラフルな色彩感覚かもしれません

          映画へGO!「枯葉」

          映画へGO!「PERFECT DAYS」

          (※多少のネタバレあります) ほとんど何も起きない映画と言えばそうですね。 起きた最大の出来事でも、主人公の妹の娘が家出してきて、自分のアパートを訪ねてきたこと。 それでいて、日々起きるささやかな揺らぎや出会いが、観るもののココロを静かに震わせる、とてもエモーショナルな映画だと感じました。 東京・渋谷のトイレ清掃を仕事にしている平山さん(役所広司)は、毎日繰り返されるルーティンの中で淡々と自分の人生を生きています。 決まった時間に起床。台所で歯を磨き、家の前の自販機から缶

          映画へGO!「PERFECT DAYS」

          映画へGO!「正欲」

          (※多少のネタバレあります)  何を描いた映画かというと、人の「性癖」でした。 それも、SMや同性愛などのような、誰もが多かれ少なかれイメージできるものではなく、恐らくはもっともっと存在率が低そうなもの。 その「性癖」が独特過ぎるがゆえに生まれる出口が無さそうな苦悩、社会との軋轢や生きづらさ、一方で同じトライブの人を発見した時の高揚感だったり、あるいはそこから生まれるピュアな「愛」を描いています。 新垣結衣と礒村勇斗が、冴えない毎日を送りながらその独特の「性癖」を持ってい

          映画へGO!「正欲」

          映画へGO!「キリエのうた」

          (※多少のネタバレあります) ただ景色が映し出されているだけで号泣してしまい、涙が止まらなくなる映画体験をしたことが何度かあります。 例えばペドロ・アルモドバルの「All About My Mother」では、列車の旅でトンネルを抜けバルセロナの街に入っていく夜景のシーン。岩井俊二の「Love Letter」では、画面いっぱいに眩しいばかりに真っ白く拡がる雪のシーンとか。 どちらも私の人生のお気に入りムービーです。 私にとって岩井俊二さんは、単なるカメラで切り取られた視覚的

          映画へGO!「キリエのうた」