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十月の星々、ふりかえり|140字小説

140字小説コンテスト「月々の星々」
十月のお題は「着」でした。

no.4が予選通過しました。ありがとうございます。
書き出す前は「着……着……?!」と悩みましたが、書き始めたら気持ちよく書けました。ふんわり雰囲気SFが私は好きだ。
ではふりかえり。


no.1
人類が超能力に目覚めた世の中で、私の力は軽い物を高く飛ばすだけ。超頭脳や未来予知なんて有能な人達は次々宇宙へ進出していった。向こうには豊かな資源と美しい未来があるそうで、ずっと誰も帰ってこない。未来に着いたらお返事くださいと、私は夜空に手紙を飛ばす。めっきり静かになった地球から。

めっちゃ好き(自分で言う)
光の速さで遠くへゆくひとたちと、追いかけて夜空を飛びたつ手紙。追いつけやしないのなんてわかってる。進化しすぎて滅びの予感しかない。こういうのが好き。書いていてとても楽しい。

no.2
夜空の発着場は混雑していた。あの銀河鉄道に乗れるというのだから当然だ。期待と心細さの混じったざわめきが満天の星を瞬かせる。車掌に行き先を尋ねると「美しい処ですよ」と目を細められた。手の中には片道切符。躊躇う理由はないはずなのに、生きている時には冷たかった地上の灯りがひどく眩しい。

夜で星で寒くてさみしい、と言うイメージがno.1とかぶったけれど気にせず書きました。今回の「着」はだいたいそんな感じ。

no.3
執着、期待、理想。この三つを手放せば楽に生きられると昔付き合っていた人は言っていた。私とは気性が合わず程なく別れたが、人生の秋を迎える歳になって今頃あの言葉が沁みてくる。夏の日の花火を遠く見つめ、夜気の肌寒さにそっと窓を閉じた。明日が洗濯日和ならそれでいい。天は高く、呼吸は自在。

こうであってほしい、こうしてくれるはず、こうあらねばならない。適度なら生きる力になるのに過ぎると身を滅ぼすほど苦しい。
他人に過度な期待をせずに生きていると、何故だか「優しい人」という評価をいただくことがあります。期待していないから裏切られても怒らないし、こだわらないからどうでもいいし、願いを叶えてもらえたら有難いなぁと思って感謝するだけです。優しくはない。優しい人ってのはもっと別にいる。

no.4
宇宙から落下した小惑星は激しく衝突するのではなく、意外にも静かに着地した。一番背の高いビルに触れ、それから少しずつめり込んで、今は先端が僅かに地に埋まっている。このまま落下が続くと日本は沈むらしいのに、慣れてしまった僕らは時々空を見上げるだけだ。緩慢な終末はエンタメにもならない。

最初こそ「こりゃ大変だ!」と騒いだことでも、それがずっと続くといつのまにか日常に埋没してしまいます。今のように。
締めをどうするか悩んだけれど、「緩慢な終末」はまあまあお気に入り。他にもっといい締め方もあった気がする。

no.5
夜山の頂から星の子の群れが立ち昇る。数多の光の粒を孕んで、真っ直ぐに銀河を目指してゆく。空から落ちて大地になったから、大地の旋毛から空に還っていくのだ。さよならもなく一目散に、いつかまた引力に惹かれて巡り着くまで星の子は流れる。どこから来たのか知らぬまま、命をふり撒いて、燃えて。

ザ・手癖。
他にも候補作があったんですが、もうここまできたらふんわりSF・夜・さみしいでまとめちゃおうと思って。
タイムラインに流れてきた素晴らしく美しい星空の写真から着想を得て書きました。
いろんなおすすめツイートが垂れ流されてくる仕様、私は割と楽しんでいます。思いがけない出会いがあって。広告は鬱陶しいですが。



ここ最近にしては珍しくすんなり五作書けた10月の星々。すこしさみしいふんわりSFが、好きだ!
以上、ふりかえりでした。
皆さまの素晴らしき星々作品はこちらから!


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