ほしせいりゅう

役者で、演出して、物書き

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天空の魚影

登場人物 和井内貞行 和井内カツ子 勝蔵 松原新之助 寛太 松吉 松吉の娘 道子 村人一 村人二 鯉(マス)一 鯉(マス)二 ○十和田湖に続く山道 うっそうと茂る木立を抜け、なだらかな山道が続いている。 初夏を思わせる風が笹の葉を揺らしている。 花道より村人一、二が駆けてくる。 村人一 「和井内はいたか」 村人二 「見失っ

    • 亡き祖母からのギフトはギャル

       11時過ぎに塾から帰宅して夕食と風呂を済ませると、勉強のために机に齧り付くのが、私こと、稲村いずみの日課だ。  今住んでいるのは祖母の家で、千葉の郊外にある古い一軒家。祖母は私が中学のときに亡くなり、母と二人暮らしをしている。  母は仕事から戻っていないので、家の中はとても静かだ。少し寂しい。  隣の部屋から、ガタンっと物音がした。  隣は祖母の部屋で、亡くなった後は仏間として使用している。  音が気になり襖を少し開けて中を覗くと、薄暗い闇に部屋は沈んでいた。左側に黒々

      • TENKO

        配役 津打菊ノ助     江戸の役者 お百        那珂の侍妾、佐乃助の元妻 市川仲蔵      江戸の役者  那珂忠左衛門    愛宕下御前奥家老            元久保田藩家臣 小野篤宗      館林藩 松平武元(たけちか)家臣 柳水軒(りゅうすいけん)白雲斎    伊予松山藩影軍師 佐々木右近・左近  黒脛巾組の子孫           久保田藩に雇われた傭兵 松平定喬(さだたか)(隠岐守(おきのかみ))  伊予松山藩六代目藩主 佐竹義明

        • 妲己のお百と化け屋敷

          登場人物 高間磯左衛門三郎 豪商高間伝兵衛の甥 りつ       三郎の妻(妲己のお百) 又左衛門     差配 よね       三郎の母 定助       那珂忠左衛門の中間 那珂忠左衛門   愛宕下奥家老 喜助       向島の百姓 和尚 一場 高間磯左衛門三郎の母、よねの家 向島・寺島村。 桜並木の土手下に建つ農家風の妾宅。 下手木戸、中は土間から二重で居間。居間には仏壇がある。 仏壇の前に寺の和尚が座り

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          明日、彼女が踏みだす世界は何色なのか

          登場人物 夏川環(17)芸名は市川環。大衆演劇の劇団・帝座の座長、市川章太郎の長男。次期座長。 木崎優(17)環の地元、静岡高校の同級生で元彼女。病気で横浜の病院に入院中。 市川章太郎(42)帝座の座長。 弥生竜二(18)帝座の座員。環や美咲と同郷。竜二と環は同じ学校に通っていた。 市川美咲(16)環の妹。 木崎直子(43)優の母。横浜の病院で優の付き添いをしている。 男友達(17) 地元高校の同級生。  俺は大衆演劇が嫌いだ。  実際にはそ

          明日、彼女が踏みだす世界は何色なのか

          仮題名 枯れ木はキスがお上手

          人物 九鬼霞      九鬼家最強の女剣士。神様からある神通力を授かっている。 有馬春之助    有馬家の嫡男。家出をして女形役者になった。 如月静香     春之助の許婚。 有馬左近     春之助の父親。 雛菊       霞の従者 撫子       霞の従者。 曽我重太郎    剣の天才。大目付の佐森様配下。 会津藩・有馬剣術道場。   板の間。正面上方に神棚アリ。神棚には榊や水など。壁には木剣が並んでいる。上手に座布団

          仮題名 枯れ木はキスがお上手

          郭公(ほととぎす)の伝言

          登場人物 日柳(くさなぎ)燕石(えんせき)    金比羅の侠客・勤王派・詩人 高杉晋作    長州の勤王の志士 高洲久子(お久) 燕石の下女・元野山獄女囚 おのう     高杉の妾・下関の芸者 坂手十左衛門  高松藩町奉行 竹庵      医者 長府藩士 坂手の手下 慶応元年(一八六五年)夜。四国、讃岐   闇夜を高杉とおうのが逃げる。追う侍複数。侍たちは高杉に斬りかかる。 高杉(声) 先生、私は

          郭公(ほととぎす)の伝言

          情けかければ苦労あり、その先に幸あり

          配役 与次郎    元侍で八右衛門長屋住まい       お登世    与次郎の母              文治     日本橋堀江町の御用聞き        お仲     長屋の住人          秀治     長屋の住人、お仲の父 舂米屋の職人  六兵衛    長屋の住人 左官屋 寅蔵     長屋の住人 棒手振り職人       弥助     文治の手下              松次郎    長屋の住人 船頭           お種     松次郎の女

          情けかければ苦労あり、その先に幸あり

          十楽

          人物 十楽        盗賊 伊達綱宗     仙台藩主 高尾太夫     吉原の花魁 庄司甚之丞   吉原惣名主 松平信定     信綱の倅 松平信綱     老中 清十郎      十楽の仲間 松六 十楽の仲間 お吉  十楽の仲間 庄司甚右衛門  初代吉原惣名主 その他 四郎兵衛     三浦屋傭人、 坂上主水     同心(1景) 佐吉        岡っ引き(1景) 西田屋番頭(5景) 振袖新造(5景) 見世番(5景) 褌

          懲りない家族、命長ければ辱多し

          登場人物 語りの男 語り口 坂木屋清兵衛  古着屋亭主 富沢屋甚卯衛門 富沢町古着問屋富沢屋主 清兵衛の女房 お隅 清兵衛の母  ヨネ   暗転の中、太鼓が響く。音終わりで析頭。同時に舞台中央上手よりにスポット点灯。紋付袴の語りの男が浮ぶ。 男    本日はお越しくださりましてありがとうございます。今よりちょっとした寸劇みたいなものをさせていただこうかと思います。寸劇と申しましても二十分くらいありますので何卒気楽にお付き合いください

          懲りない家族、命長ければ辱多し

            魂の送り人 夏喜一時庵

          登場人物 夏喜     一時庵の店主で魂の送り人。 達吉     やくざ。 新之助    材木問屋の跡取り。 ダキ     夏木の右腕。人間ではない。 佐吉     呉服屋の三番番頭。 澄香     達吉の元婚約者。今は宿場女郎。 第一幕  暗転の中、まず聞こえてきたのは轟音だった。  たぶん濁流の音だろう。  それが途切れて静かになるころ、闇の中を男が歩いてきた。  彼の名前は佐吉。呉服問屋の番頭だった佐吉は薮入りで実家

            魂の送り人 夏喜一時庵

          咲くや此花

          配役 小泉佳夕  (24)作家志望。           松田尚吾  (27)博文社の編集者。       小泉左京 (50)佳夕の父。御霊。        坂口幸恵 (28)博文社に住む御霊。       松田幸助 (57)博文社の社長。尚吾の父。    飯島良子 (18)克の妹。尚吾の婚約者。     飯島克  (25)良子の兄。博文社の編集者。   小柄昌平 (30)博文社の社員。後に編集者。   (一場)佳夕の部屋 1