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こんなにも真っ直ぐに

「あんたらはね、最高なんじゃ!」

「だからこそ、胸張っていけー!」

「だからこそ、自信持っていけー!」

真っ直ぐに心に届く声。
会場の端から端まで真っ直ぐに伸びやかに届く声。
その声が、音楽が、私は好きなんだ。


◾️出逢いは本の中

 彼らと出会ったのは中学生の時。きっかけは本だった。メンバーの出身地でもある広島県の因島を舞台にした中学生の少女たちの話。そして実際に行われたイベントもモチーフになっている。

そのバンドの名前は、ポルノグラフィティという。

『明日に続くリズム』 八束澄子・作

 バンドの名前は聞いたことがあったし、曲もなんか聞いたことあるな〜って。その程度の「知っている」からCDを買うようになるまでそう時間はかからなかった(ハマってからが早いタイプのオタク)。CDを買ってはウォークマンに入れていたのも懐かしい。ハマりたての頃にがっつり聴いていたのが下のアルバム2つ。改めて聴き返してみるとなんか当時のことを少しだけ思い出してちょっとだけエモい。

 真っ直ぐに届く声と真っ直ぐに届くギターの音。まるで1つの作品を読んでいるかのような、詩を読んでいるかのような言葉たちにのせられる声。聴けば聴くほど想いのこもった音楽が私の心に真っ直ぐに響いた。

 もともと音楽を聴くことは好きだから、ポルノグラフィティだけではなく他のアーティストも聴くようになったことで一時はプレイリストを再生する機会も減っていた。ところが2023年の夏、人生で初めてポルノグラフィティのライブを体験できるかもしれない機会がやってきた。富士山の麓、山中湖で開催されている音楽フェス、SWEET LOVE SHOWER。2日目のステージに彼らが出るというのだ。しかも偶然にも大好きなCreepy Nutsと同じ日の出演である(もっというと同じステージだし香盤前後だし)。あまりにも奇跡的なこの機会、行くしかない?野外の音楽フェスが初めてだって?そんなの関係ねぇ!という気持ちに。極めつけはこの日のリセールチケットを発見したこと。行かない以外に何があるんだ、と決めたのがライブの2週間前のことだった。

◾️雨模様の中の再燃

 運が巡ってライブに当選、そして2023年8月26日。たくさんのワクワクを抱えて会場に向かう。しかし天気予報があまりいいものとは言えなくて(なぜかこの日だけ雨マークがつく)、Creepy Nutsのステージの途中で雷が鳴り始め、終わった瞬間から豪雨に。ポルノグラフィティには「野外ライブをやると雨が降る」という逸話があり、そのジンクスが成立してしまったのかどうなのか。なかなか止まない雷、全体として1時間押しに。雨雲が過ぎ去り、少しだけひんやりとした空気と共にステージ再開のアナウンスが聞こえてきた。

会場に着いたとき すでに雲が怪しい
ラブシャ別称「田植えフェス」爆誕

 待ちに待ったその瞬間。2人がステージに登場、冷えた会場を暖めるかのようなインストから、♪『ミュージック・アワー』が流れてきた。ずっとイヤホン越しで聴いていた音楽がすぐそこにあった。目の前の人たちは本当にポルノグラフィティなんだって。念願の"変な踊り"ができたことがすごく嬉しくて、楽しくて。足元が泥まみれだろうが飛び跳ねた。中でも感無量だったのは♪『サウダージ』。ギターが鳴り、歌声が聞こえてきた時一筋の光が差し込んだような気がした。その光は黒山の人だかりをかき分けるように真っ直ぐに私の元へ届いて。雨上がりの涼しさの中に響き渡るあのアカペラはきっとずっと忘れない。

 全6曲のパフォーマンス、最後の♪『ハネウマライダー』の興奮も冷めぬまま、真っ先に抱いた感情は「またこの熱気を浴びたい」という気持ち。30分では足りない、もっともっと浴びたい。そんな気持ちに「来年、ツアーやるよ!」のお知らせが届く。そうとなれば気は早いものでチケットを申し込んだ。

◾️消えない余韻と熱狂

 そして2024年の2月10日、さいたまスーパーアリーナ。ポルノグラフィティ”だけ”を楽しめる空間はもうすぐそこ。暗転した会場、鳴り響くファンファーレ、モニターに流れる映像、2人のシルエットが現れそれがだんだんと大きくなり中央のステージへ。そして聴きなじみのあるイントロ。1曲目からもうテンションは最高潮!

ライブOP

 ポルノグラフィティにとって、コロナ禍を経て声出しが完全にできるようになったツアーは4年半ぶり。そのおかげで多くの曲でコール&レスポンスができた。私自身はここ1,2年でライブの世界を知ったので以前以後の話はできないのだけれど、それでも声に出すことで盛り上がれることがいかに楽しいことであるかを感じた。

 披露された楽曲はどれも素晴らしいという言葉に収めるのももったいないくらいのセットリストで、できるなら1曲ずつ感想を述べたいところだけれど、、その中でも特に印象に残った曲を挙げていく。

♪ 『テーマソング』

 コロナ禍真っ只中の2021年に制作された楽曲。この時期に行われたライブで昭仁さんは「また会って、次のこの曲を、みんなで今度こそ大きな声で、大きな声で歌ってひとつになろう。それまでの約束。」と語りかけた。

 そして、今回のライブ。2曲目にセットされていた。イントロから湧き上がる歓声、2フレーズ目から歌わせてくれる昭仁さん。以前のライブを知らないのに一緒に歌うことができるというだけでこんなにも嬉しいことはなかった。

♪ 『アビが鳴く』

 昨年開催された、G7広島サミットに合わせて制作された楽曲。広島県はメンバー2人の出身地。歌詞の中に直接的な表現はないにせよ、「この曲は広島のことを歌っているのだ」と分かる言葉たち。

 広島という場所、平和への祈り、未来への希望を歌った曲。どの会場で聴いても曲の持つ力に圧倒された。CD音源を聴き返していたら、ラスサビの高音に当たった時の掠れにハッとさせられた。いつ何時でも力のこもった歌声が好き。

♪ 『解放区』

 今年デビュー25周年を迎えるポルノグラフィティ。その記念シングルの第1弾として制作された楽曲。「このライブに向けて新曲を作りました」と作詞をした晴一さんからお話が。リンク先の動画の中でも似たようなことを話していて、話に一貫性があるからこそ、曲の軸がぶれずにこちらに伝わってくる。

・"今日より明日"とか"ここではないどこか"、という言葉が最近はよく使われがちだけれどそれってどうなの?
・今の日本はバブルが崩壊してからの”失われた何十年”と言われていてポルノのキャリアもそれと共にある
・"失われた何十年"とは言うけれどそんなこともなくない?
・"今"を生きていくためのファイトソング

🎸 晴一さん

 歌詞が、これぞポルノグラフィティと分かる。「頑張れ」という言葉を一切使っていないのに「頑張れ」という想いが伝わってくる。これがポルノグラフィティなんだよな~(大の字)。

♪ 『サウダージ』

 シンプルに歌が上手すぎて感動した。それまで10何曲と歌っていて、ハネウマとかアポロとかそこそこハイカロリーな曲の後にも関わらず。イントロのアレンジがあり、ラブシャの時同様に昭仁さんのアカペラで始まる。昭仁さんの歌声は、会場の隅から隅まで逃さず広々と響き渡る。ステージから近かろうが遠かろうがそんなの関係ない。

 『メリッサ』のロングトーンもしかり、「JOPG FM~」で『ミュージックアワー』がくると分かれば変な踊りで身体は勝手に動いちゃうし、アコースティックコーナーの『Sheep~』も『ジョバイロ』も音が少なければ少ないほどよく響く昭仁さんの声に惚れ惚れ。晴一さんのギターソロもバチバチにかっこよくて。『アゲハ蝶』はサポートメンバーなしの2人だけで歌ってくれたし(晴一さんのハモリがまたいい)、気持ちいいほどにコーラスもクラップも揃うわで逆に2人が驚くほど(笑)もう本当に本当に楽しかったー!!

◾️「お互い様」と「順風満帆」

 本編が終わり、"カタカナ3文字の卑猥な言葉(=ポルノ)"と拍手の中2人が再度ステージに登場しアンコールが始まる。そのMCで2人がこんなことを話していた。(※正確な発言ではなく、ニュアンスになることをご了承いただきたい。)

お互い様だからね、もう戻れなくなっちゃったから。会場の外に出て急に「あぁ、ポルノとか飽きたわ~」って辞めてね!僕たちがここまで続けてきたのは君たちのせいでもあるんだから。これからもよろしくね。そして、ここに戻れない人がもう1人(=昭仁さん)。

🎸 晴一さん

25周年、振り返ればいろんなことがあった。辛いことも苦しいこともあったし、前が見えなくなることもあった。けれど、応援してくれるみんなが「ポルノ、がんばれ!」と船を進めてくれた。だからこそ言える、25年順風満帆でした!

🎤 昭仁さん

 今回のツアータイトルは「Rome was not built in a day(ローマは1日にしてならず)」からもじったもので、ポルノグラフィティの歴史とこれからも進み続けていくという決意を感じる、そんなライブだった。「お互い様だから」とはにかんだ晴一さんの覚悟とか、25年の一部しか知らない私でも知っているくらいの大きなことだってあったはずなのに「順風満帆でした!」と満足げな表情を浮かべた昭仁さんを見てしまったら、2人がポルノグラフィティとして音楽を創りつづけてくれていることの奇跡を愛おしく感じてしまう。

 冒頭で書いた言葉たちはライブの最後に昭仁さんが必ず伝えてくれる言葉。この言葉を噛み締めながら次のライブを楽しみに待ちたい。


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