忍び寄る影
忙しい月曜日
僕は頭痛で頭を抱えていた
山積みになったタスクが終わらない。。
様々な所から催促され意識は朦朧としていた。
そんな中、僕の背後の席に座っていたK社長が
郵便物の封を開けて中身を確認している。
険しい顔をしながら入念に中身を確認した後
その書類をまとめ、席を立ち上がった。
K社長はいつも圧倒的な存在感で近くにいる時気付かないことはまずない。
しかしK社長が僕のデスクにその書類を置いた瞬間まったく気づくことができなかった。
まるで書類は最初からそこにあったかのようにデスクの上にぽつんと置かれていた。
何だろうと不思議に思い、おそるおそる手に取った。
代表取締役社長 K様
御中 特別優待券
と書かれていた。
お、
何か社長宛に来たお取引先の特別な割引券か何かだろうか。
僕はワクワクしながら中身を確認した。
すると中には
魅力的な女性の写真がずらりと並んだ冊子が入っており、シャンパン30%引きの割引券が入っていた。
しかも最初は魅力的かと思った写真も
ほとんどの女性の目に修正加工が施されている。
社長の目は騙せても僕の目は騙せない。
「社長、これは何でしょうか?」
思い切って尋ねてみた。
社長は僕の方を見てにっこりと微笑みながらこういった。
「行っておいで」
そう言われた瞬間
さっきまで悩まされていた頭痛から解放されたような気がした。
もしかしたらK社長は僕の身を心配してくれたのかもしれない。
だから存在感を消し、いつの間にか置いてあるかのような演出をしてくれたのか。
僕はカバンの中にその書類をそっとしまい
すっと、いなくなるように会社を出た。
完
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