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【アニメレビュー】『ぼっち・ざ・ろっく!』×『葬送のフリーレン』超新星アニメ監督・斎藤圭一郎が描く“ハイ・コンテクスト”な世界

こんにちは。kei_tenです。
今回はアニメ監督の斎藤圭一郎さんについて語りたいと思います。

ぼくはアニメも映画も「監督で観る」派です。どんな役者も原作も、監督次第で如何様にもその質が変わるからです。
サッカーは監督によってチームが変わり、クラシック音楽も指揮者の解釈で演奏が大きく変わる。それと同じように認識しています。


※SpotifyのPodcastで音声配信しています。


■斎藤圭一郎監督の代表作

『ぼっち・ざ・ろっく!』あらすじ(公式より)

「ぼっちちゃん」こと後藤ひとりは、ギターを愛する孤独な少女。
家で一人寂しく弾くだけの毎日だったが、ひょんなことから伊地知虹夏が率いる「結束バンド」に加入することに。
人前での演奏に不慣れな後藤は、立派なバンドマンになれるのか――

『葬送のフリーレン』あらすじ(公式より)

勇者ヒンメルたちと共に、10年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらした魔法使いフリーレン。千年以上生きるエルフである彼女は、ヒンメルたちと再会の約束をし、独り旅に出る。それから50年後、フリーレンはヒンメルのもとを訪ねるが、50年前と変わらぬ彼女に対し、ヒンメルは老い、人生は残りわずかだった。
その後、死を迎えたヒンメルを目の当たりにし、これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し、それを悔いるフリーレンは、“人を知るため”の旅に出る。その旅路には、さまざまな人との出会い、さまざまな出来事が待っていた―。

言わずと知れた2つの話題作ですが、並列で語る人が思ったより少なかったので、このnoteで共通点(斎藤監督の作風)を取り上げていこうと思います。

その作風というのが、視聴者の想像力をかき立てる次の3要素。特に鍵となるのが「ハイ・コンテクスト」というキーワードです。

■斎藤圭一郎アニメの3要素

①セリフで説明しない
②音へのこだわり
③ハイ・コンテクストな原作の解釈(妄想力)

①セリフで説明しない

これは映画・ドラマ・アニメ、どれでも当てはまる「良い作品の必須条件」です。

必要以上にセリフで説明してしまうと、没入感が失われてしまうのは言わずもがなですが、良い作品は私たち視聴者の想像力を試してきます笑 つまり「必要以上にセリフを削り、絵で表現する」のです。

宮崎駿や高畑勲のアニメ作品に顕著ですが、斎藤監督もこの系譜と言えます。
最近の若い監督の特徴でもあるので、『無職転生』でもこの演出を体験できますね。

特に『葬送のフリーレン』でこの要素を感じれるのは「口元を見せる」ところです。『ぼっち・ざ・ろっく!』では「観客の視点」でしょうか。時々「きくりさんの目が開く」ところも効果的でしたね。

※具体的に「セリフで説明しない」所をレビューしているYouTuberさんの動画を貼っておきます。

②音へのこだわり

ここはアニメを見ながら注意深く耳を澄ませてみると、わかるようになると思います。

僕自身も『ぼっち・ざ・ろっく!』では、そもそもバンド音楽アニメだったので意識しなかったのですが、『葬送のフリーレン』でそのこだわりに気づきました。

1番印象的だったのは「足音」です。
基本旅をしている物語なので歩くシーンが多いのですが、「何だか長い時間歩いてきたんだな」という印象が、この足音から想像することができました。
他にも「自然音」には力を入れている印象。「常に外にいるのが当たり前」という演出を、音で補完しているように感じました。

もう1つ、個人的には声優さんの「声」についても、こだわって指示しているような気がしました。

ぼくは昭和生まれで、小さい頃にドラゴンボールやキャプテン翼、聖闘士星矢などを見てきた世代。フリーレンの登場人物たちの声を聞いていると、「昭和アニメっぽい」懐かしさを感じれるんです。不思議ですね。

③ハイ・コンテクストな原作の解釈(妄想力)

「ハイ・コンテクスト」こそ、斎藤圭一郎監督の最重要要素だと思っています。

※ハイ・コンテクストというのは「文脈で語る」割合が高い、ということです。
下図がイメージしやすいですね。

斎藤監督の2作品はともに原作マンガが存在しますが、ともに「原作には描かれていない部分(演出)=ハイ・コンテクスト」で視聴者を魅了しているという共通点があります。

『ぼっち・ざ・ろっく!』は楽曲の良さが魅力なので納得しやすいですが、それでも僕自身はアニメを見た後に原作を読んで、「全然違うじゃん!」と驚きを隠せませんでした。
原作漫画は、想像以上に描かれている内容の少ない日常系だったのです。

逆に言うと漫画は、その余韻・文脈を想像する面白さがあったのかもしれません。自身の妄想力を膨らませて一級アニメに仕上げる、二次創作的な作品が『ぼっち・ざ・ろっく!』の魅力と言えるのかも知れません。

『葬送のフリーレン』は原作自体がマンガ大賞受賞と評価されている作品ですが、それでも自身の解釈(妄想)を盛り込んでいることに価値があるのだと思っています。

個人的に印象に残ったのは、大魔法使い・ゼーリエが「花を手で触れながら歩く」シーン。フェルンが才能ある魔法使いと知って、気分が高揚していることが伝わってきました。それも少し乙女を感じさせる笑
さらにその後にフリーレンから言われるセリフの伏線にもなっていて、すごいなと唸る演出でした。

他にも、上の子(中3)から教えてもらったのですが、シュタルクとフェルンが踊るシーンは、漫画では一瞬だったのに対し、アニメではしっかり長い尺をとって描かれていました。しかも手書きにこだわって作っているとか。

■最後に

斎藤圭一郎アニメの3要素について語ってきましたが、一言で伝えてしまえば「何度観ても面白い」というのが魅力です。

この、何度見ても面白いのはなぜ?というのは、なかなか普段意識しないもの。
今回のnoteを機に、気づいていただけると幸いです。

いろんな人がいろんな発見をして楽しんでいますし、斎藤監督作品はそこに魅力があります。
最後に、ぼくが印象に残った他の方のレビュー動画を貼っておくので、合わせてご覧ください。

みなさんも、ぜひ自分なりの楽しみを見つけていただけたらと思います。

ではまた!Kei_tenでした。

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