【映画レビュー】『オトナ帝国』も良いけれど、GWに家族で観たい『映画クレヨンしんちゃん“ファミリー三部作”』
どうも、こんにちは。kei_tenです。
本日は5月5日のこどもの日。ということで、親子で観たい「映画クレヨンしんちゃん」を紹介します。
※Podcastで音声配信もしています!
■連載アニメに“作家性”を取り入れた原恵一監督の映画史的・金字塔
“クレしん映画”と言えば、2001年に公開された『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』でしょう。
「泣ける映画」「大人も楽しめる映画」という代名詞を確立させた作品であり、連載アニメ映画に「作家性」を取り入れた、まさに金字塔と言える名作です。
オープニングの「劇中劇」、カーチェイスや階段を駆け上がるだけのシーンといった「長回し」の活用など、純粋に映画として観ても唸る構成となっており、映画フリークこそ楽しめる作品ではないでしょうか。
監督の原恵一さん作品は、他にも『河童のクゥと夏休み』『カラフル』『はじまりのみち』などあります。クレしん映画では『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』も素晴らしい映画ですので、ぜひ観て欲しいですね。
オタキングの岡田斗司夫さんが岡田ゼミでかなり詳しく解説しているので、こちらもぜひ。
■父・母・子にフォーカスした“ファミリー三部作”
オトナ帝国は各所で様々な方が語っているので、今回はあえて他の作品を。
ぼくが“ファミリー三部作”と名づける3本を紹介したいと思います。
それは2014年〜2017年に公開された『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』『爆睡!ユメミーワールド大突撃』『襲来!!宇宙人シリリ』です。
これらは同時期に公開されただけでなく、それぞれ父・母・子にフォーカスし、「自分が悪いのか?」という悩みを昇華させていくことが共通テーマとなっています。
父親とは?夫とは?を問いかけた『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』:
ロボとーちゃんは「メンズエステに行って帰ってきたとーちゃんがロボットになっていた」というお話。その背後には虐げられ続ける日本の弱い父親たちの復権を企てる「父ゆれ同盟」の陰謀があり…。
この映画の面白いところは、最初はロボットとして警戒されながらも、超人的なスペックで周囲から受け入れられ始める描写でしょう。
こどもは屈託がなく、切り替えも早いため、どんな父親でも受け入れてくれます。
その一方で、最後まで戸惑い、警戒するのが妻のみさえ、というところも考えさせられます。
だらしなく頼りない夫(父親)が良いのか、それともハイスペックで活力のある夫(だけれど、破壊兵器としてのリスクもある)が良いのか。
映画の後半では、どちらのひろしにも人格があるけど「みさえが選ぶのはどちらか1人」という現実を見せつけられます。(辛い…涙)
最終的には「他人の目など気にせず、夫・父親としてどうありたいか」というテーマでエンディングを迎え、『オトナ帝国の逆襲』へのオマージュ作品でもあることがわかり、カタルシスを得る構成となっています。
みさえ(母)が救済のキーパーソンに?『爆睡!ユメミーワールド大突撃』:
「巨大な魚に呑み込まれる夢」を見たのをきっかけに、野原一家を始めとする春日部市民たちは夢の中で巨大魚の体内にある不思議な世界「ユメミーワールド」に迷い込む。その頃、幼稚園には転校生のさきちゃんがやってくるのだが…
この作品は「夢」「友達」「母と子」がテーマですが、そのベースに「ユング心理学」があるようです。
ヒロイン(主役)である転校生のさきちゃんは、小さい頃に母親を事故で亡くし、「その原因が自分ではないか」と自責する深層心理が、悪夢にうなされる原因となっていました。
また、街の人の夢を養分にしているので、みんなが悪夢にうなされるようになると転校する、というサイクルとなってしまい友達が続かない。だから嫌な奴という振る舞いをし、友達をつくらないようにするさきちゃん。
そんな時にふたば幼稚園に転校し、しんちゃんやねねちゃんと出会い、「それでも友達になってくれて、ピンチの時も助けに来てくれる。」という状況変化が訪れます。
ただ、それでも救えない。という絶望の縁に立たされるピンチが訪れたところで、最後はみさえが救済に向かいます。
このくだりは完全にネタバレになってしまうのですが、他人の夢に入り込むには「共感・共有」のようなものがあり、母親なら息子の夢に入り込める→だから息子の夢経由で、友達の夢にも入れる、というロジックが組まれます。
そして、みさえが母親の想いを代弁してあげることで、さきちゃんが救われます。
しかも、さきちゃんは「救われる=悪夢と上手く付き合っていく」という解決策をとるんですね。
ぼく自身、育児をする上で心理学者の河合隼雄さんの本や講演を参考にさせていただいたのですが、ユング心理学をベースにした考えが、この作品に落とし込まれているように感じました。
男性目線にはなってしまいますが、母親という存在の大きさについて、触れることのできる作品として「ユメミーワールド」をおすすめします。
親に認められたい一心のシリリが涙ぐましい『襲来!!宇宙人シリリ』:
ある日の夜、野原家にUFOが不時着し、中にいた宇宙人シリリに、ひろしとみさえがこどもにされてしまう。種子島にいるシリリの父ならもとの姿に戻せることから、日本縦断の旅に出る…
厳しい父親の言うことを素直に聞く、劣等生のシリリは、父親に認められたいんですね。
その一方で父親も尊大で、こども(他人)を意のままに操りたいタイプで、決していい父親(オトナ)というわけではない。
歪んだ父子関係ではあるけれど、それでも良い親子でありたいと、こどもの視点から願うあたりが涙ぐましい作品です。
また、シリリもシリリの父も、地球人を恐れているところがあるんですよね。その視点は結構重要です。
この映画が公開されたのは2017年で、奇しくも世界的に“分断”がテーマになり始めた頃。
欧米で移民問題が大きくなって、イギリスのEU離脱がアメリカのトランプ大統領誕生があったのが2016年なんですね。
この頃から5年以上経ちますが、この分断が解消されていないどころか、よりミニマルな分断さえも起きています。
宇宙人シリリが問いかけたテーマは、他者への不寛容さや分断も含まれていたように感じます。シリリの父親を反面教師にできるか?というのは、簡単そうで難しいものかもしれません。
■誰だって「自分が悪いのか?」という悩みを抱えている
繰り返しになりますが、今回取り上げた“ファミリー三部作”は、それぞれ父・母・子にフォーカスし、「自分が悪いのか?」という悩みを昇華させていくことが共通テーマとなっています。
もちろん、3つとも主役やヒロインが「自分が悪いのか?」と、ちゃんと認識しているわけではありません。
ただ、「あなたが悪いんじゃないよ」と声をかけてあげることが大事なんですよね。
それって、意外と気付けないものです。
特に親子関係や夫婦関係では、そういうことも多々あるでしょう。
家族でクレしん映画を見ることで、すこしでも気づきになっていただければ幸いです。
GWは外に出るだけじゃなく、家で映画も観てはいかがでしょうか?
では、また!kei_tenでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?