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21歳のいま、NANAを見てよかった


この記事はネタバレを含みます。

私がNANAを視聴するきっかけになったのは、名古屋での矢沢あい展の開催である。

結局私はタイミングが合わず行けなかったわけだが、NANAを視聴し終えた後にこのことをメチャメチャ後悔した。

だってNANA!!!!!!!!面白すぎるもん!!!!!!!!

さすがネトフリが勧めるだけある。私は常々言っているが、ネトフリのマッチ率を侮ってはいけない

以下あらすじ


東京に住む彼氏と同居するため上京する小松奈々、ミュージシャンとして成功するため上京する大崎ナナ、出身地は異なるが同い年の2人のNANAは新幹線の中で出会った。その後、ひょんなことから奈々とナナは同居することとなる。さらに、ナナの所属する BLACK STONES と恋人の本城蓮が所属する TRAPNEST、2つのバンドのメンバーたちを交え物語は進んでいく。

wikipediaより引用

原作は少女漫画であるが、「ど~せ少女漫画でしょw」と思いながら見ていると痛い目に遭う。
なぜならば、『NANA』は夢を見せてくれる話ではなく、むしろ現実の厳しさやむごさを視聴者(読者)に突き付けてくる作品だからである。

例えば主人公である奈々は、何も上手くいっていない時に憧れのバンドマンだったタクミとセフレ関係になり、以後自分の寂しさを埋めるようにタクミと会うようになってしまい……….

寂しさに負けダメだと分かりつつもタクミに連絡してしまうハチ

というように、一応少女漫画でありながら、少女漫画とは思えない現実(”リアル”)が展開していく。よく少女漫画で連載できたなと思う

解像度が高すぎる「女」の描写

私がNANAの中で感心したのは、女心理の描写の上手さである。

ハチを例にすると、彼女は移り気の激しい女であり、好きな男がコロコロ変わる。第三者からすると、ハチの一貫性のない行動にはイライラする。いっぽうで彼女の気持ちが全く共感できないものかというと、そうでもない。

愛なんか後付けだって。人間なんてしょせん自分が一番可愛いんだから、己の欲望をより多く満たしてくれる相手を愛してしまうものだ

タクミのセリフ


ハチはその時最も自分にとって都合がいい男を好きになるが、それは果たして悪いことなのだろうか。

ハチはある種、自分を守るために男を好きになっているのかもしれない、と私は思うのである。
彼女は流されやすい性格であり、ナナのように夢中になっている趣味や仕事もない。そのため、その空っぽな自分から目を背けるために、恋愛に夢中になっていたのではないか。そして浅野さんとの一件を経て、できるだけ自分が傷つかないような道を選んでいたように感じる。
特に、あれだけ好きだった章司をその場で捨てたり、タクミではなく好意をはっきり伝えてくれたノブに心が動いた部分はわかりやすい。

しかし、彼女が恋愛を通して己の無さを実感するところがなんとも皮肉。フリーター時代に自暴自棄になってタクミとの関係に逃げるも、自己嫌悪するところがわかるな~~ってなっちゃった。

こういう女の子って、結構いるんじゃないだろうか。空っぽな自分をごまかすために、恋愛をして、「何かやっている感」を感じながらも、心の奥底で全く満たされていない女の子。

私も何もうまくいかない時期、逃避先として男を選んだ時期があった。しかし、そういう時にする恋愛ほどうまくいかなくて、最終的に男に逃げている自分に虚しくなってたなあ…….

ちなみにハチだけではなく、もう一人のナナの「女心理」の描き方も上手いなと思った


もう一人のナナ

ナナはバンドでプロデビューするという夢を持って上京するわけだが、彼女にもバンドマンの彼氏(レン)がいた。

ふたりの関係は順調そうに見える一方で、ナナはレンと離れるべきか悩んでいる。

ナナはレンにもう会ったりしないと思いつつ、結局レンを前にすると何も言えず、流されてしまう。
好きな男の前で女は非常に無力だ……

また、ハチが家を出て行ってから、その穴を埋めるようにレンやヤスに会いにいくところもめちゃくちゃ女だなと思った。自分のことを好きな男で寂しさを紛らわすあの感じ。

ナナはハチとは対照的に自分の夢をしっかり持った女、自立している女のように見えるが、実は周りの人間に精神的に依存しまくりであり、情緒不安定なところがメンヘラ女的に非常に刺さりました


ナナとハチの関係性

NANAで一番語らせてほしいのがこの二人の関係性!!!!!!

ナナとハチはそれぞれ異性愛者であり、それぞれ彼氏もいる。しかし、この二人の関係性はただの友情では収まらず、それ以上に「恋」なのだ。

歌うナナをみるハチ

あたしは誰に恋をしていても あたしにとってのヒーローはナナだけだよ

あのさ、ハチ。あたしはもうあんたの物語のヒーローにはなれないけど、今もあたしの物語のヒロインの名前は奈々。とびきりかわいい、あんただよ。

もう一度言うが、ふたりは異性愛者である。だから、互いに性欲が湧くことはないし、恋人になることもない。しかし、二人がお互いに抱く感情は友情の域をはるかに超えている。

性格も生い立ちも、まったく違うナナとハチ。全く違うからこそ、お互いが自分に無い部分に惹かれ、絆を深めていく。

上京したばかりで、少なからず不安を抱えていたふたりにとって、互いは唯一心を明かすことのできる存在だったに違いない。
ずっと目指している夢の話、彼氏以外の誰にも言えなかった家族の話、彼氏にはできない話。

結局男がいたとしても、やっぱり女同士でガールズトークをする瞬間が一番楽しいし、尊い時間だよなあと思う

「女の友情」は恋愛よりもよっぽど強固に思えるが、お互いの環境が変われば頻繁に会ったりすることはどうしたって無くなってしまう。ハチのように家庭を持ってしまえばなおさら。だからこそ、「あの時だからこそあった」二人の関係性、一つ屋根の下で恋愛や夢について深夜まで話す、あの時間が何よりも尊いものに思えるのだ。

様々な「女」としての生き方

NANAをみて印象に残ったことは、当たり前だけど女としての生き方はその人によって違っていいんだなということ。

結婚願望もないわたしは、なんとなく将来仕事で成功してお金稼ぎまくってバリキャリ…的な人生に憧れていて、それが正解と勝手に思っていたけれど、そんなことなくて。

例えばハチ子は望まない妊娠をしてしまうも、「母親」として自覚を持ってからは(精神的な面で)周りに頼ることが減り、肝がすわっていく。


当たり前だが、女としての生き方は自由で、そこに優劣はない。
己のキャリアを頑張るナナも、母として頑張るハチも、どちらも凄いのである。
ナナは自分のために頑張れる人であり、ハチは他人のために頑張れる人ということ。ただそれだけだった。

「仕事で成功すること」と、「母親として成長していくこと」の両面がNANAの世界では描かれており、人生において普遍的な正解なんてものはなく、人によって何に努力できるかの適性が違うだけなのだなということを感じた。

きちんと社会で働いたことも夢も無く、人並みに人を愛した経験が無い私はまだまだガキだ。
けれど、21歳になったいま、NANAを見て、少しは大人に近づけた気がする。


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