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バックキャスティングとフォアキャスティング~人口減少社会のまちづくり~

4月になり、春らしい穏やかな日が続いています。
進学、就職など新たなステージで学んだり働いたりし始めた方もいらっしゃいます。
新たな環境でそれぞれ奮闘されている事とは思いますが、あまり気負わず、マイペースで頑張ってほしいと思います。

まちづくりに対するスタンスの違い

そして、地方自治体においても、年度替わりの人事異動により、新たな体制でまちづくりに取り組むこととなります。

花巻市では、令和6年度から8年間を計画期間とする「第2次花巻市まちづくり総合計画」がスタートしたことになります。
まちづくりにおける政策の方向性を示す「総合計画(長期ビジョン)」については、2月に開催された花巻市議会第1回臨時会の議案審議を経て制定されたものの、長期ビジョンを着実に実行するため、まちづくり分野ごとに取り 組む主要な事業や成果指標の目標値など、具体的な施策の展開を示す「アクションプラン」については、いまだ市当局から示されていません。

令和5年度内に「アクションプラン」を策定するという方針だったので、どのようになっているのか状況を確認する必要がありますが、いずれ令和6年度から新たな計画でまちづくりが行われることになります。

私は「第2次花巻市まちづくり総合計画長期ビジョン」を改めて見直してみました。


以前も書きましたが、この長期ビジョンの感想を端的に言うと
「現状の課題を解決するための記述が多く、将来花巻市を背負う次世代の視点で見ると、ワクワクするような夢のある計画ではない」
「非常に重厚で堅実な行政計画という印象を受けるが、市民にとっては概要版でも理解しづらい」
ものとなっています。

「ワクワク感がない」「夢のある計画ではない」「理解しづらい」と感じるその正体について、過去記事
「将来的に街をどのようにつくっていくか、というグランドデザインがないからではないか」
と書きましたが、改めて「総合計画(長期ビジョン)」を見てみると、この「将来的に街をどのようにつくっていくか」という視点について、私の考えるまちづくりと市が「総合計画(長期ビジョン)」で示したまちづくりのスタンスに違いがあることが分かりました。

バックキャスティングとフォアキャスティング

私のまちづくりに対するスタンスは、目指すべき「未来のまちのの姿」を描き、そこから「いま何をすべきなのか」を積み上げていくという方法。
こういった思考法を『バックキャスティング』といいいます。

一方で、市が「総合計画(長期ビジョン)」で示したまちづくりのスタンスは、目の前の課題に対し、これまで行われてきた方法やデータ等を駆使して解決を図りながら、現実的に実行可能なものを積み上げていき、未来の目標を立てていく方法。
こういった思考法を『フォアキャスティング』といいます。


『バックキャスティング』は、将来の理想像から逆算して実現手段を考える手法であり、長期的で不確実な目標に対し、幅広い視点から自由な発想でアイデアを出していくのに向いており、大成功の可能性もあるが失敗するリスクもある。
一方『フォアキャスティング』は、過去や現在から未来を導き出す手法であり、短期間に成果を出したり、現状の問題点を改善したりするのに向いていて、失敗するリスクが低い。

こういった違いがあると言われています。

「人口減少社会のあるべき姿」をどう描くか

『バックキャスティング』『フォアキャスティング』のどちらの方法が優れているか、ということではなくて、
「総合計画(長期ビジョン)」のような計画には、私は『バックキャスティング』の手法を取り入れて大きな目標を描くとともに、時代の変化などにより必要であれば修正しながら、計画を進めていく。
一方で大きな目標に向かうために、「アクションプラン」において『フォアキャスティング』の手法を取り入れて、課題を解決していく。
こういったメリハリのあるやり方で、まちづくりを進めていくべきだと思っています。

具体例を挙げます。
「総合計画(長期ビジョン)」では、「各分野に共通する課題が人口減少と、それに伴う労働力の不足であることは明らか」であるとし、「今後において、『社会増』の動きを継続させ、本市の人口減少のスピードを 緩やかにし、市全体の活力を持続させていくためには、少子化に歯止めをかけること、まちづくりの担い手となる若者や勤労世代を確保することが優先的に求められる取組であり、 そのために必要とされるあらゆる政策を有機的に展開することが何よりも重要」であるとしています。

おっしゃる通りなのですが、「市全体の活力を持続させていくためには、少子化に歯止めをかけること、まちづくりの担い手となる若者や勤労世代を確保する」その先のまちの姿が見えてこない。

そもそも、様々な対策を講じたとしても、人口減少のスピードが急激なものとなるか、そのスピードが緩やかになるのかという違いでしかなく、いくら緩やかにしたからといって、人口が減少するのは間違いない。

(ちなみに、「総合計画(長期ビジョン)」第2章の『3.将来人口の見通し』の中で、推計値と花巻市の将来人口目標(赤線)が記載されています:下記参照)

第2次花巻市まちづくり総合計画長期ビジョン「第2章まちづくりの視点」より抜粋


人口減少対策を講じる理由は、できるだけ人口減少のスピードを緩やかにしながら、緩やかにしている間に「人口減少社会における持続可能な花巻市のまちづくりの姿」を描くことに他なりません。

そのために、人口減少社会における「地域の公共交通のあるべき姿」や「公共施設のあるべき姿」、「まちづくりのデザイン」などに今から着手していかなければならないと考えます。

総合計画(長期ビジョン)は8年間の計画ではありますが、その先の「人口減少社会のあるべき姿」を描くこと、言い換えれば「人口減少社会の中でどう住民が幸せにいきいきと暮らしていくか」を描くことが、まさに「バックキャスティング」の手法によるまちづくりの計画なのだと思います。

「総合計画(長期ビジョン)」はスタートしましたが、令和5年9月の花巻市議会定例会における私の一般質問の際、市長から「長期ビジョンに関しては8年間固定されたものではなく、もし必要であれば、市長が代わる、代わらないは別として、今の現状と大きく変わることであれば、4年ごとに見直しすることもあり得る」旨の言質を取っています。

4年後もしくは8年後に向けて、「人口減少社会のあるべき姿」を今から描いていくための取り組みをスタートさせていきたいと思います。

アクションプランに期待

おそらく近いうちに「アクションプラン」が示されることと思います。
「アクションプラン」はまさに『フォアキャスティング』の手法。
一方で、将来にわたる財政計画も示されるとのことなので、期待して待ちたいと思います。

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