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分かってあげたい

この一ヶ月で、ひとりで過ごすことの意味合いが以前とはまるで変わってしまった。心の安全基地。自分以外の人間には到底望めないと思っていたもの。せめて自分は自分の一番の味方でいなくてはと、心の中に必死で築いてきたもの。他人には到底望めなかったはずのもの。いつでも安心できる居場所。条件付きでない愛。帰りたいと思う場所。一昨日空港で見送ってから、適当にすぐ入れそうなお店でハラミ丼とか頼んで、二人掛けテーブルを挟んだ向かい側、自分の対面の席に誰も座っていないことで、「不在」を強く感じた。そこに欠落感や不足感はない。私は満たされていた。4月って30日まであるけど、そのうち顔を合わせたのは16日間。今月に入ってからも、出発の5月6日までに4日間。会わない時間も、電話やLINEはしょっちゅうしていた。私達よくこれだけ話すことあるよね。私、ひとの何倍も、相当に、一人の時間重んじてるタイプだよ。彼もそこには相当に配慮してくれていたけど、一回も「今日はやめとく」って思わなかったから、「詐欺」と言われた。騙したつもりはないけど、彼は私の守りたい領域を侵さずに一緒にいてくれるから、一緒にいられた。私にとっては「イレギュラー」だった。

今朝、会いたいなあと思って目が覚めた。朝起きて一番に、あいたい、って思った。昨夜電話したせい?昨日までは「さみしい」よりも「いないのに心強い」が強かったはずだけど、今朝起きたらちょっと苦しかった。彼の寂しさが伝染したのかな。彼は今ひとりで遠いところにいる。大事にしている友達もそばにおらず、会えない。職場では初対面の人ばかりでまだ落ち着かない。「俺が東京に彼女置いてきたっていうよりも、送り出されてここへ来たって感じがする」。さみしいんだろう。さみしいだろうね。私はいいよ。強くいられるはずだよ。友達も仕事も変わらずそこにあるんだから。わかってあげたい。わかってあげたい。ただ寂しさが伝染ったわけじゃない。またちょっと分かるようになったんだ。そしたら抱きしめてあげたいと思った。私の考えを変えるのは、私一人の気持ちじゃない。二人の気持ちで、変わってゆく。私はこの人の孤独を解りたい。

会いたい。ていうか一緒にいたい。会いたいっていうのは、会っていないのが通常の状態だから思うことでしょ。早く「会ってるのがデフォルト」になりたい。だから会いたいじゃなくて一緒にいたい。と彼は言う。ハラミ丼食べながら、空いた席見ながら、「不在」を強く感じたのは、それでも満たされていたのは、一緒にいるのが当たり前とすでに認識していたからだったのかな。彼はまだ満たされていないらしい。足りていないらしい。

私が東京にいるのは、東京を愛していたのは、夜になっても帰らなくていいからで、誰も私のことなんか気にしていないからで、自由で、孤独を飼い慣らし、飼い慣らされていたからで、居場所がなくてもいいからで、どこにも帰れなくても受け入れてくれるからで。会いたい人たちがいるからで。自分で自分の帰りたい場所作ってきた。自分だけの城築いてきた。でも、その外に、居場所が持てるとしたら、私はもう東京なんてどうだってよくなるんだろう。か。もう未練がないって前にも書いた。

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