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帰省

特に20代前半は、地元に帰るのが苦手だった。実家にいる時の自分の、親の庇護の下に生きている感じ、なんにもできずに甘えるしかない感じ、どこにも行けない感じ、行きたいところがない感じがどうしても好きになれなくて、一刻も早く東京に、7畳1Kの私の城に戻りたかった。家族から離れて東京駅行きの高速バスに乗るといつも安心した。ああ、私の世界はこっちなんだ、って思えた。今にして思えばあれは、「5歳の私」のことを私自身が少しも受け入れられていなかったからなんだろう。

自分を愛することが多少上達した今、私は、私が子供のままでいられる場所を大切に思っている。
社会人になってから何だかとてつもなく生きづらくて、私はその理由を強烈に欲していた。外に理由が見つからないと全部自分のせいだと思えて、消えちゃいたくなるから、納得のいく理屈を整え、すべて家のせいだと自分に信じさせることで何とか食い繋いでいた。その時の自分にとってはそれが真実で、親は敵だった。敵にしていたのは、私。
今じゃ嘘のよう。

年末年始、29歳を手放して、6日間たっぷり子供に戻ったら、東京に帰るのが辛いなあと思った。普段、日曜の夜にも仕事のことを考えて憂鬱になることがほとんどない。どんなに嫌なことがあっても「会社に行きたくない」がない。1年ちょっと前に別れた彼とも、一緒に過ごした後は、仕事に行くのがすごく嫌だった。子供でいさせてくれる人が私には必要だ。私が滅入っても仕方のないニュースを忘れさせて、日常に引き戻してくれる人も。

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