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希望の星

ヘアセットを終えてから1時間電車に乗るのに、本の一冊も持ってこなかった。けど、いっか。本読んじゃうと、そこに没入してしまう。今日は何にも埋まりたくない。6時に起きてからずっと心が明るくて、イヤホンで耳塞ぐのも勿体無い。楽しかった日の帰り道にはこういうことがよく起こる。自分と世界を切り離したくない。このままの空気に溶け込んでいたい。帰路ではなく往路だが、すでに今日はその状態になっている。今日は友人の結婚式である。読書で暇をつぶすかわりにiPhoneのメモを開いた。

子供の頃から「いつか」を楽しみにしていた友人はみんな結婚式をやらなかった。だから、昔馴染みの友人の結婚式に参列するというのは本当に初めてのことだ。移動中の音楽が雑音にしかならないはずだ。私の中では、今、音楽の力よりもずっと感情が勝っている。

知り合ってから何年になるだろう。彼女のことを何でも知っているというわけではない。20年近く、いつもそばにいたわけでもない。中3の時が一番一緒にいて、授業中も休みの日も絵ばっかり描いてた。卒業文集に載せる作文を、後で恥ずかしくなる内容でないか添削しあった。卒業式の日に二人でプリクラ撮った。旅行も行った。似たもの同士ぶつかったこともある(あれを喧嘩と言うとして、今思えば、友達と喧嘩したことって他にない)。彼女の絵と私の文で共同制作する活動も始めた。お互いが波のようで、何度も激しい満ち引きを繰り返して、今日に続いている。全然違う人生だけど、背負っている業がとても似ていたから、それぞれに苦悩して、それぞれに学んで、気づいたら近いところに漂着している。兄弟星のような感覚がある。少し離れたところから、長い間人生を見守ってきた。そういう友人の結婚式に、私は向かっている。

すでに泣きそうになってきた。早く会いたいなあ。会えることが楽しみな友達がいて嬉しい。幸せを願える友達がいることが嬉しい。きっと感情の忙しい日になる。

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結婚式の思い出

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