見出し画像

全人類に捧ぐ!今だからこそ聴いて欲しい「スピッツ」の名曲7選

あなたには、心がホッとする「帰る場所」が、いくつあるだろうか。

例えば私の場合。
まずは毎日過ごしている、この家。
仕事を終えてどんなにクタクタになっていても、玄関を開ければ身体の力がふっと抜けて素の自分に戻れる、1番のリラックス場所。

それから、大好きな野球場。
小学生の頃から何度も通い、大学時代はビールの売り子もしていたから、楽しむ場所でもあり、働く場所でもある。席についた瞬間、「帰ってきたー!」と思えるから、ここも、やっぱり私の帰る場所。

あとは、会社のデスク。
今はリモートワークより出社する日が増えたけれど、去年は完全リモートの月があった。1ヶ月ぶりに出社して自分の椅子に座ってみると、思いがけず、ほっとしてしまった。どうやらここも、帰る場所になっていたらしい。

そして、香港。
父の故郷であり、父と母が出会った国。私は、まだ10回くらいしか行ったことがないのだけれど、空港に着いた途端に鼻をくすぐる香辛料に「そうそう、コレコレ!」と思えるから、ここも私の帰る場所。


それから、忘れちゃいけないのが、もう1つ。
「スピッツ」の音楽だ。


***

■「スピッツ」との出会い

スピッツを聴くようになったのは、中学生の頃。当時は今ほど音楽に興味があるわけでもなかった。朝起きたら学校に行って、勉強して、部活をして、急いで塾に行って、帰って、寝る。平凡な生活。でも、学校生活はとても楽しくて、充実した日々を過ごしていたと思う。
そして、中学2年の頃、私は初めて恋をした。確かその頃だったと思う、音楽を聴くようになったのは。

「この曲に出会ってビビッときて、それからずっとファンなんです」とか、「辛かったあの時期に、あの1曲が私を救ってくれたんです」とか、本当は言えると良いのかもしれないけれど、私にとってスピッツの音楽は、気がつくと傍に、当たり前にあったのだ。だからこそ、この1曲が特別だ!と言い切るのがすごく難しい。
ちなみに、初恋の相手がスピッツ好きだったというわけでもない。

当時は、スマホはおろかガラケーに音楽を入れる機能もなければ、出先でYouTubeを観るなんて便利な時代ではなかったから、お小遣いをコツコツ貯めてウォークマンを買った。レンタルショップに行って、ジャケットが気になるいくつかのCDを借りて取り込んだ。それを、受験勉強の間も、部活の大事な試合に行く前も、ずうっと聴いていた気がする。そしてふと気づいたら、スピッツの音は、私の身体の一部になった。

ここでまたファンらしからぬ発言をするのだが、昔はファンクラブに入っていたけれど、大学生になるとバイトにサークルに勉強にと忙しくなり、更新費を払い忘れてそのままになってしまった。
自分で稼いだバイト代で、初めてスマホを買った。あの頃と違って、好きな曲入れ放題だ。流行りのJ-POPやK-POPを中心に、色々な音楽を聴いた。それ故、スピッツの音楽を聴く機会は必然的に減ってしまっていたと思う。それなのに私は、自己紹介で必ず「好きなアーティストはスピッツです」と、まるで名刺代わりのように挨拶をした。なんとも自分勝手なファンである。

自分がどんなに好きなものでも、周りの人全員に「いいよね」「わかる」「それな」と言ってもらうことは難しいと思っている。でも、「好きなアーティストはスピッツです」と言うと、決まって「私も好き!」「俺も昔よく聴いた!」「マサムネさんは神!」といったぐあいに、プラスな言葉しか返ってこなかったことをよく覚えている。大人になった今でもそうだ。

よくよく考えると、スピッツがデビューしたのは1991年。私が生まれた年だ。「空も飛べるはず」は1994年、「ロビンソン」が1995年、「チェリー」は1996年。私が聴くよりずっと前にリリースされていたのだから、好きな人が多いのは当然なのだけれどーー年上の方だけでなく、同級生も、後輩も、老若男女問わずみんなスピッツの曲を知っていたし、良いイメージを持っているという事実が、ただただ凄い、と思っていた。

世の中には、聴くだけでパワーがみなぎるような応援ソングも、心がぎゅうっと締め付けられる切ない恋の歌もたくさんある。でも、スピッツの音楽は少し違う、と私は思っている。
元気な時も、悲しい時も、辛い時も、悔しい時も。スピッツの音楽を聴くと、心がすうっと穏やかになって”本当の自分”にかえることができる。
これはマサムネさんの魔法じゃないか、いや、絶対にそうだ。

だからこそ私はこの苦しい1年半の間、必然的に大学時代よりはるかに多くスピッツの曲を聴くことになった。世の中の状況が目まぐるしく変わり、当たり前が当たり前じゃなくなって、理由もなく落ち込んだりして。
わがままだけれど、こんな時、誰かに「頑張れ!」って言って欲しいわけじゃない。ただ自分をあたたかく包みこんでくれるような、スピッツの音が恋しくて恋しくてたまらなくなった。

前置きが長くなってしまったけれど、今日は私が愛してやまないスピッツの名曲を紹介したいと思う。
スピッツファンの貴方も、あまり詳しくないという貴方も、まずは聴いて、音に、言葉に、心をあずけてみてほしい。

マサムネさんが紡ぐ言葉たちは私の中でまだ全然正解を出せていないし、畏れ多くて解説や紐解くなんてとてもできない。それに、スピッツの歌詞は聴く人によってかなり解釈が違うんじゃないかと思っている。だから今回は、好きなフレーズを抜粋しながら、私も改めて曲を楽しみたいと思う。

とっておきの3曲を選ぶつもりが、どうしても選べなかったので、7曲になってしまったことだけは、先に謝らせて欲しい。


***

■スピカ

1998年・19作目のシングル『楓 / スピカ』、そして1999年のスペシャルアルバム『花鳥風月』に収録されている「スピカ」。

周りのファンの間では楓派、スピカ派、なんて議論できるくらいの名曲だと思っている。

幸せは途切れながらも続くのです

私はこの1フレーズに、これまで何度背中をあやしてもらってきたか。応援ソングとは少し違う。隣に座って背中を大丈夫、大丈夫、とトントンしてくれるようなイメージだ。
「この先に幸せが絶対待っている」とか「今は耐え時だ」っていう強い言葉じゃない。
途切れながら、でも、続く。この優しくて未来すらも見える前向きなワードに、ふわっと心が救われる。

それから、もう1つ好きなのが、ここ。

割れものは手に持って  運べばいいでしょう

割れやすい物を手で運ぶ、ただそれだけの意味じゃなく。心みたいな目に見えない繊細なものを、優しく丁寧に扱おう、自分も他人も大切にしよう、って思わされるフレーズでもある。

一等星のスピカを目印におとめ座を探すように、この曲を目印に人生を歩んでいきたいとさえ思う。目の前にある小さな世界だけに捉われず、もっと視野を広く、大きく考えてみようと思えるのだ。


■放浪カモメはどこまでも

2000年・22作目のシングル『メモリーズ / 放浪カモメはどこまでも』、そしてアルバム『ハヤブサ』にも収録されている「放浪カモメはどこまでも」。(アルバムはリミックスver.)

スピッツファンなら、きっと好きな人も多いはず。
ごりごりのギターロックで、自由なイメージの"鳥"をモチーフにしている。

ムダなものばかり欲しがって
足りないものは まだ みつかんねー

学生の頃、この歌詞がすごく好きだった。だって本当にその通りなんだもの。大人になったら解決すると思っていたけれど、今もまだ同じようにあがき続けてる。足りないものなんてわからないし、まだ全然見つかってない。

でも放浪カモメはどこまでも
恥ずかしい日々 腰に巻きつけて 風に逆らうのさ

生きていると、失敗したり後悔することも多いし、その度に自分のことをちょっぴり嫌いになる。でも、そんなダメな自分も自分の一部だから。そう認めてあげたら、最強になれるかもしれない。

上昇し続けることはできなくても
またやり直せるさ

なんだかぜーんぶ吹っ切れて、自分を受け入れて前に進んでいくぞって気持ちになれる。
私はこの曲を、希望の曲だと思っている。


■三日月ロック その3

「あいのり」の主題歌で有名になった、2004年・28作目のシングル『スターゲイザー』のカップリング曲で、2012年のスペシャルアルバム『おるたな』にも収録されている「三日月ロックその3」。
「その3」とあるけれど、その1もその2も音源化されていない。しかも、アルバム「三日月ロック」がリリースされた2002年よりも後に発売されているという、摩訶不思議な曲でもある。

私はこの曲の音とリズムが、とにかく好きなのだ。きっちりロックなギターに、心地良いドラム、そこにマサムネさんの文学的な歌詞と唯一無二の声がのってくる。
ただ聴いているだけで、気持ちがあがってくる。

色あせないドキドキは 形だけ変わっていくのだ
次いつ会えるかな

このフレーズ、聞くたびに想像する相手が変わる。恋人を想うこともあれば、家族を想うことも、長年会っていない地元の友人を想うこともある。そしてその相手のことが、次に会う約束が、とても愛おしくなるのだ。


■自転車

2005年リリースのアルバム『スーベニア』に収録されている「自転車」。
『スーベニア』の中でもこの曲をチョイスするのは意外と思われるかもしれないけれど、音も歌詞もリズムも心地よくて、お気に入りの1曲だ。

冒険のつもりで 重ねた時だけど
最高のイベントは まだ先にあるはず

この曲を聴くのが、たとえ家であっても仕事場であっても、朝でも夜だったとしても。ゆったりとペダルを漕ぎながら、大きな木々の中を自由にすり抜けていくような、爽快な気持ちになる。
それに、"最高のイベント"は、まだこれから先にある!

自転車で行きたいな スルリスルリと
伸びて縮んでくうちに なんとかなるだろう
なんとかなるだろう どうにか出来るだろう

目の前に立ちはだかる壁、課題、将来の不安・・・たくさんあるけれど。まあすぐに解決しなくても、きっとなんとかなるかもな。
最近全然自転車に乗っていないけど、明日は乗ってみようかな、なんて思ったりして。


■春の歌

2005年・30作目のシングル『春の歌/テクテク』の前に、アルバム『スーベニア』に収録されていた「春の歌」。清涼飲料水のCMソングとして覚えている人も多いかもしれない。

気づいたら毎日口ぐさんでしまうくらい、もう心がドキドキワクワクしちゃう1曲。

重い足でぬかるむ道を来た
トゲのある藪をかき分けてきた
食べられそうな全てを食べた

キラキラした木漏れ日のようなイントロのあと、このフレーズから始まる、春の歌。
まるで自分が小さな生き物になったかのような、絵本のようなはじまり。

「どうでもいい」とか そんな言葉で汚れた
心 今放て

ここから気持ちがぐんぐん上がっていく。言い訳ばっかりしていた自分を捨てて、春空に向かって走っていく疾走感。あたたかな風の音も聞こえてくるでしょう?

春の歌 愛も希望もつくりはじめる
遮るな 何処までも続くこの道を

季節の春だけじゃない。新しいことを始めるときはいつだって春だ。確かに楽しみもあるけれど、不安や緊張、焦りの気持ちが強いことも多い。周りばかりキラキラしているように見えることもある。でもこのフレーズで、気持ちがパッと変わる。愛も希望も、自分でつくり出してけばいいんだ。自分でつくっていけるからこそ不安になるし、こんなにワクワクするんだ、って。

忘れかけた 本当は忘れたくない
君の名をなぞる

それから、どうしてだろう。
いつもここで、もう会えない家族や先輩、友人のことを思い出す。名前をなぞりながら私の中で皆が生き続けているって想うと、強くなれるんだ。


■僕はきっと旅に出る

2013年・38作目のシングル『さらさら / 僕はきっと旅に出る』、そしてアルバム『小さな生き物』に収録されている「僕はきっと旅に出る」。

37作目の『シロクマ/ビギナー』のあと、このシングルが出るまでには約2年8ヶ月の時間がある。この空白には、東日本大震災があった。関東住みの私でも思い出すだけで胸が苦しくなるあの頃を、乗り越えて出されたシングルだと記憶している。

笑えない日々のはじっこで  普通の世界が怖くて
君と旅した思い出が  曲がった魂整えてく

目が覚めた時にカーテンからこぼれる朝日のような優しい音色から、この歌詞へ。
当たり前だった"普通"の毎日が、怖い。でもそんな気持ちは、旅の記憶のおかげで和らいでいく。

僕はきっと旅に出る 今はまだ難しいけど
未知の歌や匂いや 不思議な景色探しに

ここは、この1年半で一番心にグッと来た歌詞かもしれない。前向きなリズムと音の中に、どうしても今は旅に出られない切なさが含まれているから。
未来の話をしているのに、昔行ったあの国の景色や匂いを思い出してしまうんだ。

小さな雲のすき間に ひとつだけ星が光る
たぶんそれは叶うよ 願い続けてれば
愚かだろうか? 想像じゃなくなるそん時まで

今どんな状況にいるとしても。このちっぽけな胸に眠っている小さな希望とか、夢とか、願いとか。否定せずに丁寧にすくい上げて、願い続けてみよう。
だって、これから見てみたい景色は、たくさんあるんだから!


■けもの道

悩んで、悩んで、悩んだけれど、最後はこの曲を紹介したい。2002年にリリースされたアルバム『三日月ロック』に収録されている「けもの道」。

スピッツのライブに行ったことがある人なら、きっとわかってくれるはずだ。この曲は、どうしても外せない。

東京の日の出 すごいキレイだなあ
きのうの濁りも どこへやら

前奏から突き上げるようなドラムとギターがかっこよくてアガるこの曲の、冒頭。ライブでは"東京"の部分が、会場の横浜とかに変わる。それも良い。

私はほぼ毎日都内に出ているけど、東京の日の出を綺麗だと思ったことなんて、一度もない。そもそも東京で日の出を見る余裕なんてなかった。でも、想像だけなら、できる。東京の日の出を綺麗だと思えるくらい、気持ちが高まっているような状況。

あきらめないで それは未来へ
かすかに残るけもの道
すべての意味を 作り始める
あまりに青い空の下

スピッツの曲でこんなにストレートに表現されている曲って、あるだろうか。
けもの道は、獣が通る道。木々が生い茂った森の中で、初めはなかったはずの道。たくさんの獣たちが通ることによってできた道。
ここは行き止まりかもしれない。これ以上どう進んでいいかわからない。もう頑張れない。そんな時は、自分で道を作ってみてもいい。自分の一歩が、次の人の道標になるかもしれない。そしてまたその次の人が同じ道を通れば、自然とそこは正しい道になる。
だからこそ、あきらめないで。そう言われているような気がする。

もう二度と君を離さない

ライブで聴くたびに、ここで涙が頬を伝っていく。何度聞いても、泣いてしまうのだ。
この後に続く「フレ フレ フレ」という掛け声。大丈夫、明日も頑張れる、行ってこい!と、力強いエールとなって、心に優しく溶け込んでいく。


***

■ただいま、スピッツ


「この曲の解釈はちょっと違うんじゃないか」「なんでこの曲が入ってないんだ」という異論もあるかもしれない。それは、全部受け止めたい。だからどうか一度心を落ち着けて、コメントに残していってくれると、とても嬉しい。

そういえば、「大人になったときの音楽の好みは、14歳の頃に聴いていた音楽で決まる」という記事を読んだことがある。果たして本当なのか確実なことはわからないけれど、私がスピッツと出会ったのは、ちょうどそのくらいの年齢だ。

学生時代に聴いたスピッツは、私の青春だった。聴くと心が和らいで、キュンとして、元気が出る。
それから成長するにつれ、想像もしていなかったような世界でたくさんの人や風景、価値観と出会い、少なからず影響を受け、私自身も変わってきた。

それでも、久しぶりに聴いたスピッツは、「君はずいぶん変わってしまったね」とか「どうして最近来なかったの」なんて言わずに、ただ「おかえり」と、私を優しく迎え入れてくれたような気がする。

やっぱりスピッツは、私の心の帰る場所だった。

当たり前すぎて気づくのが遅れてしまったけれど、私が悩んでいたあの時も、大泣きしたあの時も、笑い転げていたあの時も、きっと側にいてくれたんだね。


ありがとう。

それから、ただいま。

これからもどうぞ、よろしくね。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます☺︎ いただいたサポートは、今夜のちょっと贅沢なスイーツとビール、そして今後の活動費として大切に使わせていただきます…⭐︎