見出し画像

北条政子への一歩

「りりってさ、勉強がこんなに得意なのに、どうして歴史が苦手なの?」 
 高校二年の時、友人のサラから言われた一言。 

 青春真っ最中、花様年華。初めてのことばかり、毎日がドキドキで埋め尽くされていた、あの頃。
 一生忘れられないと思ったファーストキスの感触さえ忘れてしまったというのに、 三十になった今でも何故かこの言葉の響きは頭にこびりついて離れない。自分の中で、じくじくと広がる罪悪感のような、言い訳できない後ろめたさがあるからなのか。しかしそれは 一体、何に対する後ろめたさなのだろうか。言葉がふと頭を掠める度に、見て見ぬふりをしてきた。

 当時の私は、こう答えた。 
「だって、学校で習う歴史って、全部戦争の名前じゃない。この前習った世界史も、何年になんとかガーの戦い、何年になんとかクスの反乱って、そればっかり。何千年もの歴史をこの薄っぺらい教科書に詰め込むと、ぜーんぶ戦争なんだって思ったらさ、全っ然、面白くないんだもん!」
 浅はかな発言だとも思うけれど、本心だった。
 一方で、当時の自分のモヤモヤをうまく言葉にできない歯がゆさを感じていたことも事実である。 
「それに、歴史って、同じ名前の人ばっかり出てくるじゃない。世界史なんて、チャールズ13世、14世とかよ? もう、あなたはどこの国の何世さん?ってなっちゃう。日本史も、何代も続く上に名前の漢字まで似てるんだもの。クラス全員の顔と名前を覚えるのも大変だっていうのに、会ったこともない人の顔と名前なんて、覚えられるわけない!」
 サラは、だらしなく口をポカンと開けていたかと思えば、数秒後にはぷっと吹き出し、肩を震わせてケラケラ笑っていた。

 「苦手」という表現は適切でないかもしれない。成績は良かった。県内の共学校では成績トップの高校。私はそこで学年一位だった。特に得意な科目は数学だ。しかし、 一度ページを見るだけでスラスラ問題が解ける天才タイプではなく、ちまちまと泥くさい努力を積み重ねていく地道タイプだったこともあり、周りが言うほど自慢できることは多くない。
 高校一年では全員必修で世界史を学び、二年に上がると文系の友人たちは日本史コースへ進んだが、私は文系・理系どちらも選べる地理コースへ進んだ。模試の度に第一志望 を「早稲田大学」と書いていたせいか、進路指導の先生から何度も呼び出しをくらう羽目になった。部活のランニング中でも構わず呼び出され「早稲田ではなく、東大を目指しなさい!」「あなたは絶対地理コースに行くように!」という粘っこい説得に、結局押し負けてしまったのだ。
 その後、私は得意な理系ではなく興味のある文系を選び、三年で再び世界史を学ぶことになる。この謎な選択制カリキュラムのせいで、結局日本史に触れたのは、中学生が最後になってしまった。それくらい、私にとって歴史、とりわけ日本史は遠い存在なのだ。
 このことを、大人になってから後悔することも知らずに。


***

「歴史上の人物に例えると、りりは絶対に北条政子だよね」 
 思わず、生ビールのジョッキが右手から滑り落ちそうになった。
「えっ、なによ。急に?」 
「いやあ、今のりりの顔見てたら、思い出したんだよね。高校生の時のこと」
 ピチピチの十八だった私たちも、今やすっかりアラサーの仲間入りだ。小洒落たカフェレストランに通った二十代前半は瞬く間に過ぎさり、手頃な飲み屋のカウンターで一杯飲むのが至福というおじさんっぷり。仕事や彼氏の話をつまみに二杯目に突入したところで、この急展開だ。
「覚えてる? りりが学校で習う歴史は戦争のことばかりだ、って怒り狂ってたの」
「うん、まぁ……覚えてるよ。結局、あのあとも歴史、全然好きになれなかったな」
 日頃の鬱憤を飲み込むように泡をがぶっと口に含んでから、白い湯気の立つもつ煮に箸を伸ばす。
「あの時さ、なんとなくりりがすっごく凜々しく見えて。あ、北条政子だ!って、直感的に思ったんだよね」
「よくわかんないけど……でも、北条政子って日本三大悪女の一人でしょ。一見褒め言葉っぽいけなし文句、ってこと?」
 手のひらに枝豆を一粒ぷつりと出しながら隣を見る。サラは、かわいそうな子犬を見るような瞳で私を見下ろした後、これだから数学馬鹿は、とぼやきながら、わかりやすいため息をついた。

「北条政子に似てるなんて、最高の褒め言葉じゃあないか。ね?」
 しゃがれた男性の声。
 出所をたどると、サラが座る更に左の奥からだった。
「そうなんですよお! わかってくれます? この子、頭がいいのに歴史がぜんっぜんダメで。褒め言葉なことも伝わらないんです」
 上機嫌なサラが、一瞬で見知らぬおじさんと結託してしまった。酔っ払いが酔っ払いと絡むと厄介なことになるのに。そう思いながら、頭だけ冷静な私は男性をちらりと盗み見る。 
 声と姿の印象は少々ちぐはぐだ。折り目がきちんとついたスーツ、紺色のネクタイは清潔感にあふれ、眼鏡の奥の目は細くて柔らかい。
「ごめんね、お二人さんの話が急に聞こえてきたものだから。僕、高校で歴史を教えているんだ。もうすぐ定年だけれど」
「えーっ、おじさん、先生なの! 言われてみれば、確かに先生の風格、ありますね。じゃあ、この後一緒にどうですか? 政子の話でも」
 サラが歴史上の人物をまるで幼なじみように呼び捨てにするものだから、この瞬間、なぜだか急に北条政子に興味が湧いてきてしまった。

 私の拙い知識の中にある北条政子像は、まさに「悪女」だ。家族に反対されてでも権力のある源頼朝の妻の座を勝ち取り、裏で頼朝や家来達を動かしながら鎌倉幕府のファーストレディにまでのし上がった人。頼朝亡き後は、息子達を次々と将軍に立てながら自ら尼将軍となり、思い通りに歴史を動かしていくーー欲深くて、傲慢な女性。

 ビールをコクコクと飲みながらイメージを語っていると、サラと先生が顔を見合わせながらわなわなと震えはじめた。
 あまりの様子に、私はそれ以上話を続けられなくなった。
「そこだけ切り取って語られたら、政子さんも報われないなぁ」
「ほんとですよ! でも、やっぱり政子ってそういうイメージが強いのかなあ。これってどうしてなんでしょう?」
「うーん。歴史の教科書には、人物一人一人の詳しい性格や、ましてや心情なんて書かれないからね。並んでいるのは事実、事柄だけだ。これがあった、これが起きた、だからこうなった。あの時代は特にダイナミックだったから、文字だけ見ていたら、少なくとも強くて男勝りだって印象は拭えないよなぁ」
「……それだ!」
 サラが突然大声を出したせいで、両隣にいた私と先生、さらにもう一つ隣のお客さんまでビクリと大きく体を揺らした。
「なによ、サラ、急に興奮しないで。ほら、落ち着いて。どうどう……」
「思い出したの。りりが政子に似てるって思った理由!」
「……男勝りだ、ってことかい?」
 先生は黒縁の眼鏡をくい、と直しながらウイスキーグラスを少しだけ傾けた。
「そうなんです! 高校の時、りりはとにかく頭が良かったんです。普通、そういう人ってエヘンッて偉そうにしたり、近づきがたいじゃないですか。でも、りりはすごくサッパリしてて。私は私で、一位だけど、それで?って感じで、クールなんです。あと、 私が別のクラスの男子に小さな嫌がらせをされたことがあって……それをりりに言ったら、 『あいつ、ただじゃおかない!』って。男子クラスまで一人で行っちゃうんだもの」
 心の奥のほうに追いやっていた古い扉をギシギシと開けられている気分になった。忘れていないけれど、思い出さなかった記憶たちが、徐々に蘇ってくる。
 案外、悪い心地はしない。
「ははは! 男勝りな北条政子、か。サラさんも面白い考え方をするねぇ」
「ちょうどその時、日本史のテスト範囲が鎌倉時代だったからかなあ」
 二人は、まるで放課後の教室のように和やかに、時に笑いながら日本史の話で盛り上がっている。運ばれてきたアツアツおでんに手を伸ばさずとも、お酒が進んでいく。
 とても不思議なこの空間で、たった一人、私だけのために、先生とサラによる北条政子をとりまく歴史の講義が始まった。


 まず二人に強く訂正されたのは、北条政子が決して権力のために頼朝を選んだわけではない、という点だった。歴史を勉強した人にとっては当たり前なのだろうが、平治の乱の後、 伊豆韮山にある蛭ヶ小島で流人として生活していた頼朝の話からだ。

「それじゃあ、北条政子は、はじめから権力のために頼朝を選んだわけじゃないってこと?」
「そう! それどころじゃない、政子はすっごく頼朝のことが好きだったんだから。ね、先生?」
「そうだね。むしろ、政子さんの行動の理由は全てそこにある、といってもいいくらいだと僕は思っているよ」
 正直、意外だった。
 今の時代ならまだしも、この時代はある程度の身分の人なら尚更、見合いをして家同士の繋がりを濃くしたり、国にメリットがある結婚しかしないものだと思っていた。ましてや、敵ともいえる源家に嫁ぐなんて。
「二人は、当時にしては珍しい晩婚だったんだよ」
 先生がシングルモルトをおかわりした。
 私はレモンサワーを頼みながら、恥を捨て、小学生のような質問をぶつけていく。
「北条政子は何歳で結婚したの?」
「えっと、確か二十一だったんじゃないかな。頼朝とは十歳差」
「えぇ、頼朝、今の私たちとほぼ同い年じゃん! そっちが遅いのはわかるけど、当時は、二十一でも晩婚なんて言われちゃうのか」
 晩婚といわれる年頃で、周囲に大反対されたであろう北条政子を思うと、心がずきりと痛む。一方で、それを乗り越えてでも結ばれるというロマンチックな展開に、強い意志を感じる。
 私は心が躍り始めた。昔の歴史の授業より、何倍も面白そうだったからだ。

 頼朝と政子の間に子どもが二男二女いた、というのは記憶にあるが、今回二人から聞いた中で心が痛んだのは長女・大姫の幼い恋の話だった。
「政子は、大姫が亡くなった後ひどく落ち込んだって書かれてたよ」
「義高と引き剥がしたのは私のせいだ、ってずっと思っていたのかな」
「今じゃあ考えられない。政子さんのせいではなく時代のせい、なんだけれど、母親としてはやりきれなかったんだろう。後を追おうと思うほど悲しんだそうだよ」
 未来の日本で酒を飲み交わしながら、引き裂かれた大姫の恋心と政子の親心を想像する。こんな私たち三人のことを、北条政子が知ったらなんと思うのだろうか、とふと思う。

「ところで、先生。政子は、ものすごくやきもち焼きだったのよね?」 
 サラはビールをウーロン茶に持ち変えながら、ぐい、と身を乗り出した。
「ああ。政子さんはとにかくやきもち焼きだって有名だ。なんてったって、浮気相手の屋敷を襲撃させたくらいだからね」
 私はふいに、「ええ?!」と大きな声を出してしまった。 
 詳しく聞くと、北条政子はかなり嫉妬深い性格だったようだ。しかし、私は決して政子が間違っているとは思えない。当時は一夫多妻制だったとはいえ、やはり愛する人の心が自分だけに向いていて欲しい、と思うのは普通だと思ってしまうのだ。頼朝からすれば、少々鬱陶しいのかもしれないけれど。しかし、それにしても頼朝本人にだけ当たるのではなく、浮気相手の屋敷を壊してしまうとは。怒りの静まらない政子を想像すると、なぜか急に身近な存在に感じられるのだから不思議だ。

「ごめん、私あまり覚えてないのだけど、頼朝は、何かの戦で死んじゃったんだっけ?」
 レモンサワーのピッチが少しずつ上がる。口に含んだ枝豆が最後の一つだったことにも気づけないほど、私は二人の話に夢中になっていた。 
「ううん、落馬事故だったって」
「本当に事故だったかは定かではない、とも言われているけれどね」
 頼朝が征夷大将軍になったのが1192年、亡くなったのが1199年。たったの七年。
 もし本当に事故だったとしたら、政子はいったいどんな気持ちでその報告を受け、事実を受け入れたのだろう。嫉妬に狂うほどに大きな愛を向ける夫・頼朝と、ゆっくり共に過ごす時間はあったのだろうか。息子、娘が残されているとはいえ、言葉にならぬほど、無念でならなかったのではないか。
 政子はその後、頼家が家督を継いだ後に出家し、御台所から尼御台になってからも、彼女の人生が如何に壮絶だったかーー二人の解説から嫌というほど伝わってくる。

「それから、これはりりも知ってるんじゃないかな。頼家、つまり自分の子どもを幽閉してしまうの」 
「薄ら、覚えてる。でも、ここまで来ると少しずつわかってきた気がする。北条政子は、もっと大きなものを守るためにきっと、そうするしかなかったんだね」
「長男の頼家が、とにかく政子さんに反発してね。女癖も悪くて、有力な御家人の愛妾を奪ったり、酒を飲み散らかしたり、蹴鞠にふけったりと、大変だったようだよ。政子さんのことだから、母親としては複雑だっただろうが、幕府を守るため。頼朝が守ってきたこの場所を自分が守るんだ、っていう強さも感じられるね」
 頼朝亡き後、きっと普通の女子であれば、深く心を病んでしまったり、表舞台から身を引き、静かな時間を過ごすことを望むのだろうけれど、政子は違うのだ。自分しか残されていない。自分が何とかするのだ。この子を、家族を、そしてこの地を守るのだ!
  そんな声が、遠くから聞こえてくる気がした。

「ところで、頼家のあとは、次男が三代ってことで合ってる、よね」
「うん、次男が実朝。頼家を幽閉したあと、実朝が三大将軍になるんだけど、その補佐役には政子の父がなるの。それで……」
 サラは少しお腹が空いたのか、このあとはバトンタッチ、というように先生にグーサインを出しながら、おでんの大根を取り分けている。 
「簡単に言うと、政子さんの父・時政が、後妻の牧の方と一緒に、実朝を差し置いて別の人を将軍にしようとするんだ。それに気づいた政子は、時政を出家させて政治の表舞台から追放してしまうんだよ」
 思わず絶句した。
 ここまで波瀾万丈な生活を送り、やれやれようやく、と思うと裏切りが起きる。この時代はそんなものだろうか。そうだとしても、政子の周りであれやこれや起こりすぎではないか。
 一方で、こうも考える。 
「肉親を追放するって、なんと言うか……北条政子は、すごく冷静な判断ができる人だったんだろうね」
 サラは目をぱちくりしてから、パッと何かひらめいたような表情に変わった。
「少しずつわかってきた? 私はね、このクールさも、りりに似てるって思ってるのよ」
「一見冷酷にも映るかもしれないけれど、感情に流されず現実を見極めて冷静に判断できる人であることは、間違いないと僕も思う」

 時政を追放してからは、実朝が将軍になりしばらく安泰かと思いきや、やはりそんな甘いことはないらしい。まさか、頼家の息子・公暁に暗殺されてしまうなんて。その公暁も、すぐに殺されてしまうことは二人の解説を聞かずともわかってしまった。

 政子がこれまで死ぬ気で繋いできたものは、どうなるというのだ。何よりも、自分が愛するものを守り抜きたかった、幸せになりたかった、それだけだったかもしれないのに。
 頼朝や愛する娘を亡くし、さらには心を傷め息子と父を追放してでも守りたかった後継ぎの息子と孫を、同時に亡くすーー想像するだけでも、胸が張り裂けそうになった。

 ふとカウンターを見渡すと、私たち三人だけになっていた。酔いも混ざっているのか、まるで鎌倉時代からタイムスリップしてきたかのようなふわふわした心地だ。
 カウンターの中で、お通しにのせる九条ネギを刻み続ける店主が、寡黙な武士にさえ見えてくる。


「最初のザ・悪女っていうイメージとは、少し違ったでしょ?」
「うん……全然違った。まるで別人の話を聞いてるみたいだった」
「先生、最後はやっぱり、あのスピーチの話が必要よね」

 北条政子の名演説。
 少し前に、テレビでそのシーンだけ観たような気がする。 
「有名な演説だね。承久の乱で政子さんが説いたのは、頼朝の恩義だった。この演説があったからこそ皆が動揺を抑え、結果朝廷との戦いに勝つことができたんだから、政子さんは、やはり立派な尼将軍、と言えるだろうね」

皆心を一にして奉るべし。是れ最期の詞なり。故右大将軍朝敵を征罰し、関東を草創してより以降、官位と云ひ俸禄と云ひ、其の恩 既に山岳よりも高く、溟渤よりも深し。報謝志浅からんや。而るに今逆臣の讒に依りて、非義の綸旨を下さる。名を惜しむの族は、早く秀康胤義等を討ち取り、三代将軍の遺跡を全うすべし。但し院中に参らんと欲する者は、只今申し切る可し者り。

 先生が教えてくれた政子のスピーチは、昔テレビで観たそれより何十倍何百倍も意味をもって、心に響く。

 北条政子がどんな人生を送り、どんな物を食べ、どんな景色を楽しみ、またどんな瞬間に心を震わせたのか。本当のことはわからないけれど、この日二人から教えてもらった「北条政子」 その人は、凜々しく、賢く、しなやかでかっこいい女性だった。

「サラ、先生。話を聞かせてくれてありがとう。ようやくわかったよ、 私」
「何がわかったんだい?」
 私は、にやりと笑う。
「サラが、私のことをべた褒めしてたってことが!」

 ちらりとサラを見ると、照れくさそうにしながら、何故だか小さくプンスカ怒っていた。

***


 私は一駅前で降り、遠回りをして帰ることにした。酔いを冷ましたいというのもあるけれど、今日の講義を何度も反芻し、忘れたくないと思ったのだ。
 「歴史は嫌いだ」と簡単に切り捨ててしまっていた学生時代の自分。
 人が人を殺す戦争という真っ黒な事実だけが歴史に刻まれているように感じ、許せなかったのではなかったか。 数字と戦いの名だけが並ぶ年表からは人間の強欲さや残酷さを感じ、憤りを感じたのではなかったか。
 しかし、その戦の中には、間違いなく人がいる。心があるのだ。政子が壮絶な人生を送ってでも守ろうとしていたような大きな愛情が、覚悟が、想いが。いくつも、いくつも、きっと、亡くなった人の数だけ、繋がれてきて今があるのだ。
 じくじくと広がる罪悪感のような後ろめたさは、もしかすると自分が、歴史の中にあるそれらと向き合わず、のらりくらりと今を生きていると感じていたからなのかもしれない。

 私は今日、人生で初めて時代の一部を見ることができた気がする。そして、北条政子という人物を、この時代に生きた人の証を、歴史を、もっと知りたいと思った。
 勉強は学生の特権、と言われる。しかし、大人になってから勉強してはいけない、なんてルールはどこにもない。ずっと目を背けてきた「歴史」という学問に、今だからこそ向き合いたい。

 ここが、私の学びのスタートラインだ。

 サラのいう「似ている」が私の何を指しているのか自分ではまだわからないけれど、なりたい、と思った。愛情深く、賢く、ピンチの時こそ冷静で、いざというときに大勢の心の火種を燃やせるような、かっこいいヒーロー。

 今日から私は、北条政子を目指して生きてゆく。
 どんなに大きな野望も、この小さな一歩を踏み出さなければ、何も始まらないのだから。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます☺︎ いただいたサポートは、今夜のちょっと贅沢なスイーツとビール、そして今後の活動費として大切に使わせていただきます…⭐︎