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拝啓 南波六太様 ­‐未来の月へのファンレター

南波 六太 様

拝啓
梅のつぼみもほころび始め、少しずつ春の足音を感じられる季節になりましたが、月ではいかがお過ごしですか。
私は、あなたのことを尊敬している地球人の1人です。はじめてのご挨拶でこんなことを書くと驚かれるかもしれませんが、地球から未来の月へエールを届けるために、ファンレターを書いてみようと筆を取りました。

私がこの手紙を書いているのは、2021年です。
ちょうど、六太さんはミラクルカーコーポレーションでデザイン企画した「#6」でグッドイカスカー大賞を受賞されていた頃でしょうか。そして、日々人さんが宇宙飛行士に認定された年でもありましたよね。
今や地球で名前を知らない人がいないくらい有名な六太さんが、2021年、まだ宇宙飛行士にもなっていなかったのかと思うと、少し不思議な気持ちになります。

あれから8年、地球から38万km離れた月で過ごしている今、どんなことを考え、感じ、過ごしていらっしゃるのでしょう。
日々人さんは「自分が宇宙まで行って地球を眺めたり月に立ったりとかできたら、たいていのことは許せるんじゃないか」と想像していたそうです。
六太さんが初めて月に立ったとき、やっぱり説明できないくらい、素晴らしいものでしたか。
地球は、どんな風に見えていますか。
世界の見え方は、大きく変わりましたか。

宇宙に思いを馳せるだけで精一杯のちっぽけな私には、想像もできません。


宇宙飛行士という幼い頃からの夢を叶え、そして念願の月へ行くまでの道のりはとても長かったものと思いますが、ジョーカーズは、月に行ってからも短期間で本当に色々な試練を乗り越えていますよね。
緊張の着陸から始まり、カルロム洞窟の発見、リッテンディンガー峡谷、ムーンベースの停電、月面と無重力環境での手術、そしてシャロン月面天文台の完成。
ジョーカーズの勇姿を見ながら、私の心臓の鼓動はバクバク高まりっぱなしでした。こうやって単語を並べるだけでも偉業ばかりなのに、それを当たり前のようにやってのける姿は、まるでスーパーヒーローみたいです。 
 
この前のルナランダーまでのミッションは、見ているこちらも本当に緊張していました。タイガーチームとして真壁さんと新田さんが、シミュレーターで滑落しては別の策を練り、何度も何度もやり直して希望の道標を探す中で、これまで"当たり前のように自分たちを助けてくれた"六太さんのことを思い出している姿を見て、心がギュッとなりました。

日々の生活の中で、誰かの言葉や行動で励まされたり、楽しくなったり、幸せになることがあります。でもその反面、一言が棘のように心に刺さり、悔しくなったり、悲しくなったり、辛くなってしまうこともあります。何もかもうまくいかず、どうしようと深く悩むこともあります。目の前にいる大切な人を救いたいのに、いい言葉が見つからず、もどかしいこともあります。

私はそんなとき、「六太さんだったらどう受け止めるだろう。どう考えるだろう。どんな言葉をかけるだろう。」と想像します。

”ドーハの悲劇生まれで悲劇には慣れている”とよく言いますが、私にはそうは見えません。
どんな局面でも柔軟な思考力と信念を持ち、的確な判断をする。そして何より、仲間を思いやり、仲間から慕われている姿を見てきたからです。

アスキャンのサバイバル訓練で、新田さんを責めることなく一緒に携帯を探しに行った夜。NEEMO訓練でぎくしゃくしていた真壁さんにかけた言葉と、差し伸べた力強い手。せりかさんがISSで悩んでいる時に送った、週刊六太の「月面クッキング」。福田さんの心を動かした、閉鎖環境訓練最終日のジャンケン。コムノートに合格した古谷さんへの、おめでとうのメール返し……

その場凌ぎの慰めや労いなら、いくらでも、誰でもできます。でも、必要な時に相手に寄り添い、心に手を差し伸べ、一番欲しい言葉をかけることができるのは、六太さんが相手のことを心から理解できる優しい人だからだと思います。
そして、こんな風に助けられてきた人たちが、今度は六太さんに恩返しをしたい、と今もなおパワーを送り続けているに違いありません。

日々人さんが悩みを打ち明けたあの日もそうでしたね。六太さんの言葉があったからこそ、日々人さんは一つ山を越えられただけでなく、その後も心にある"絶対"の火種を燃やし、新たなスタートを切れたのではないでしょうか。


こんなことを考えていたら、私自身も、六太さんのたくさんの言葉に励まされてきたことに気がつきました。

今、私がいる時代の地球では、大変なことばかりです。トンネルの出口が見えず、それでも希望を持とうと前を向いて、もがいている人がたくさんいます。
私も、目の前にある仕事が、これから一体誰の、何のためになるのだろう…本当に意味なんてあるのかな…と考えてしまう日が増えました。

そんな時、六太さんの言葉を思い出しています。

「自分のやってることの“意味”を探す必要はない。やったことの結果が誰かの“意味あること”になればいいんだ」

不安な時代だからこそ余計に、この言葉がじんと心に染みて、勇気づけられました。

宇宙開発は、見えないところで多くの人が関わっていますよね。誰かが、誰かのために細かな仕事をコツコツと積み上げて、大きな成果を生む。"From the Moon To the Earth"のロゴを見てから、その尊さを改めて感じています。

時には周りの期待を背負い、優しさをパワーに変えながら、日本だけでなく世界の、地球のヒーローになった南波兄弟。
誰より強い信頼関係で結ばれたお二人が、自分のためだけでなく、"お互いのために"夢を叶え続けてきたからこそ、こんなにも大勢の人が応援し続けているのだと思います。
そしてきっと、お互いが宇宙を目指してきたことこそが、お二人自身の支えになってきたのですよね。


六太さんたちが周りの人たちに影響を与えながら夢を叶え続ける姿を見て、明日も前を向いて生きよう、と思えるようになりました。目の前に壁が立ちはだかった時、"ちょっとだけ無理なこと"に挑戦してみよう、と勇気を出して登ることができました。自分だけに目が行ってしまう時は、一度周りを見渡して、感謝の気持ちを伝えられるようになりました。

ちっぽけな私に、夢を見ることの大切さを教えてくれて、ありがとうございました。

そしてこれからもできるだけ長く、その大きな背中を見て、勇気をもらい続けたいです。

フィリップさんと一時間かけてじっくり読んでいたサプライズの垂れ幕。そこに書かれたメッセージだけでなく、お二人の活躍と帰還を待ち望んでいる人がたくさんいることも、どうか心の隅で覚えていてくださると嬉しいです。


きっとまだまだ大変なこともあるのだと思いますが、念願だった月でのミッション。歴代の宇宙飛行士の誰よりも、存分に、楽しんできてください。

私も心をたっぷり"ブクブク"させながら、ジョーカーズ、そして日々人さんとの「宇宙の思い出話」を楽しみに待っています。



地球から、少し未来の月へ

                   敬具

 2021年2月



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