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ばりチョコはいっとうフラペチーノ

スタバの新作はだいたい飲んでしまう。同じ商品がいつやってくるかわからないやり口は多少きたねえと思うが、商品開発のスピードが速いのは企業努力の賜物だ。

どういう風の吹き回しか、兵庫限定のフラペチーノが発売された。11月には珍しく今日はポカポカ陽気だったので早速注文飲んでみることにした。
商品名は「ばりチョコはいっとうフラペチーノ」だ。兵庫の方言が使われており、「めちゃチョコ入ってる」という意味になる。

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クソが。おちゃらけたネーミングをつけやがって。「ばりチョコはいっとう」なんて恥ずかしくて言えるはずなかろう。こちとら店員さんには敬語で話すタイプだ。こんなゴリゴリ方言で注文することなんてできっこない。

なので、メニューを指差しながら、兵庫フラペチーノ、と注文した。さすがに指差して、これ、と言うだけでは失礼に当たると思ったからだ。店舗でも意気揚々と看板を掲げていたので、少しだけでもそちらのテンションに乗じてあげようという心遣いを上乗せしたともいえる。すると店員さんはこう言った。

「こちらですね。」

待て待て。
スターバックスラテを頼む時も、ダークモカフラペチーノを頼む時も、必ず商品名を復唱してるぞ?知ってるぞ?どうした?もしかして店員さんも「ばりチョコはいっとう」なんていうの恥ずかしいのかい?おいおい、あんな積極的な看板を引っさげておいてそりゃないだろ。せめて「兵庫フラペチーノ」ぐらい言って欲しかったよ。そっちに寄せた俺が恥ずかしいじゃないか。こっちだけ勝手にテンション上がってる風になったじゃないか。
まあいい。やたら客が多くて店員さんも少し慌てていたんだろう。たまたま、自分への接客がそうだっただけだ。そういうことにしておく。

お金を払い、別カウンターで商品を待つ。前の客の商品が渡され次は自分の番だ。ここのスタバは、商品名で客を呼ぶスタイル。なので「ばりチョコはいっとうフラペチーノをご注文のお客様」と呼ばれるはずだ。ほどなく、店員が僕を呼んだ。「バリチョコハイットゥフラペチーノをご注文のお客様ー」

待て待て待て。
明らかに、声が小さい。いつももっと明るくないか?それを待ってる客に呼びかける声量と認めるには無理があるぞ。しかも抑揚が全然なかった。「ばりチョコはいっとう」は方言だからもっと滑らかに読むべきだ。「ばり」は、めちゃ、とか、すごい、といった意味の使い方をする。貴方の言い方だとまるで「バリチョコ」という歯ごたえに特徴がありそうなチョコレートになる。
「はいっとう」に関しては少しごまかしただろ。「ホワイットゥ」て聞こえたぞ。むしろ「ホワイト」って言っただろ。それはずるい。「はいっとう」とは「入ってる」という意味であって「白い」という意味ではない。
貴方の言い方では歯ごたえ重視のホワイトチョコレートのフラペチーノになってしまう。それはもう別商品だ。さては、恥ずかしかったんだな、この商品の名を読み上げることを。この商品の名を高らかに叫ぶことを。ならば言おう。貴方は逃げたのだ。あたかも別商品が実在するかのように仕向けた。「ばりチョコはいっとう」がもたらす恥じらいに耐えきれず逃げたのだ。

しかし、店員が恥ずかしがって逃げ出してしまう商品名をつける上層部にも問題がある。深夜に企画会議でもしたのか。ちゃんと一晩寝かせて冷静になる時間を作ったか?現場の気持ちを考慮したか?SNSウケを追いかけすぎて流されてやいないか?

商品名開発部には今一度冷静になってほしいし、店員さんは恥じらいから逃げないでほしい。一番恥ずかしいのは男一人で注文する僕なのだから。火照る体を冷ますように、僕は「ばりチョコはいっとうフラペチーノ」を一気に平らげた。

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兵庫フラペチーノって書いてるじゃねーか!!!!!


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