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【美術ブックリスト】『美術家たちの学生時代』㓛刀知子

現在活躍する日本画、洋画、彫刻、現代美術のアーティストのインタビュー集。学生時代をメインに聞いている。多くは美大の思い出だが、中学、高校の話もあったり、海外留学した際の体験談もある。
2021年から2022年まで、つまりコロナ禍の間に取材していて、オンラインでのリモートインタビューと対面インタビューが混じっている。
芸術新聞社のウェブサイト「art access」に全文が載っているので、ウェブ連載だったかもしれないが、未確認。
ここまでが概要。

ここからが感想。
美術家になるのに苦労しなかった人はいない。本書には、それぞれの苦労と苦悩が詰めこまれている。そんななかから何らかのきっかけを掴んで現在の立場があるのだけど、それが何であるかが私にとっての関心事だった。私がポイントだと思った言葉を抜き出すと以下になる。

舟越桂「個人はみんなそれぞれ人類で初めての存在」
千住博「多くの人はもっと大きなチャンスが来るだろうと、小さなチャンスをやり過ごしてしまう」
小谷元彦「大学で評価されない作品が現代美術館で評価された」
町田久美「常にアンテナを張る・・・(略)そうすることで、縁だとか人とのネットワークを引き寄せられる」
諏訪敦「学習者の方から、見定めた人やコミュニティへ能動的に接近していかなければ何も得られることはありません」
池永康晟「上手な人ではなく、続けた人が生き残る世界」
山口晃「形稽古で自分を解体させる」

上記は美術を学ぶ人だけでなく、何を学ぶにしても必要な心構えだと思う。

ところで一般大学と比べて、美術大学の卒業生の大学時代への思いは共通して強い。おそらく甲子園を目指した高校球児たちに共通するものがあるように、何か熱いものがあるのだろう、と想像することしかできない。

1980円 A5判 192ページ 芸術新聞社

舟越桂、塩田千春、千住博、永山裕子、小谷元彦、 
町田久美、堀江栞、諏訪敦、池永康晟、山口晃(敬称略)

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