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【美術ブックリスト】『もっと知りたいキュビスム』松井裕美著

東京美術「もっと知りたい」シリーズの一冊。
国立西洋美術館で開催中(2024年1月28日まで)でいままた注目されるキュビスム。ピカソとブラックの実験的試みを起点に、同時代の科学や思想を取り込みながら、絵画のみならず、彫刻や建築、テキスタイルまで多様で国際的な展開を見せた潮流を、様々な芸術家の試みと作品を通して理解する。
ここまでが概要。

ここからが感想。
まず図版が大きめできれい。解説は長文が多く、平易とはいえないけども、学者が書いたわりには読みやすい。
キュビスムというと、20世紀前半の一過性の芸術運動と思われがち。実際には近代合理主義や自然科学と芸術との調和など文化史的な意義があるのだけど、その理論についてはもっと詳しく論じてほしかった。同時代のアールデコやイタリアの未来派、抽象絵画と接近した経緯は詳しい。

あたりまえだが、絵画の潮流は絵画の内初的な展開と時代など外部環境からの影響の二つがある。その両面からアプローチすると大抵のことは理解できる。それをちょうどいいバランスで解説してくれる山田五郎のYouTube番組「オトナの教養講座」に人気が集まるのも当然と思った次第。

東京美術 B5判 80ページ 2200円

目次

はじめに

第1章 キュビスム誕生
パブロ・ピカソ
ジョルジュ・ブラック
マリー・ローランサン
アンドレ・ドラン

第2章 様々な芸術家たち
アルベール・グレーズ/ジュリエット・ローシュ
ジャン・メッツァンジェ
アンリ・ル・フォーコニエ
デュシャン一家
パリ西部のキュビストたちの拠点
フェルナン・レジェ/ナディア・レジェ
ソニア・ドローネー/ロベール・ドローネー
フアン・グリス
オーギュスト・エルバン
アンドレ・ロート
キュビスムの彫刻家たち
マリア・ブランシャール
セルジュ・フェラ/エレーヌ・エッティンゲン
レオポルド・シュルヴァージュ
アリス・バイリー

第3章 キュビスムの普及と多様化
キュビスムとイタリアの前衛
キュビスムとドイツの前衛
キュビスムとロシアの前衛
キュビスムのアメリカ上陸
チェコのキュビスム
キュビスムと第一次世界大戦
キュビスムとヴォーティシズム
キュビスムとダダ
オザンファン、ル・コルビュジエと「キュビスム以降」
デ・ステイルとキュビスム
キュビスムと抽象芸術
1925年の博覧会とアール・デコ様式
1937年の博覧会とキュビスムの壁画
キュビスムと日本

コラム
「洗濯船」の画家と詩人たち
キュビスムの初期コレクターたち
キュビスムと伝統
キュビスムとファッション
現実を超える現実?

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