一色 恭平

酸味少なめのインスタントコーヒーが好き。 漫画、アニメも好きだけど、最近離れ気味。 メ…

一色 恭平

酸味少なめのインスタントコーヒーが好き。 漫画、アニメも好きだけど、最近離れ気味。 メモしてある文章をこっちに記録しておこうと思います。 詩、短編、短歌を載せていきます。 名前は偽名メーカーいじくりまわしました。

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  • こんな夢を見た。

    夏目漱石の作品『夢十夜』の一行目。 これを借りて書いたもの。

記事一覧

固定された記事

夏の童心

 まどろみの中、生暖かい風が私に触れた。瞼を開けて、視界に広がる景色をみて、これが夢であることを悟った。  こんな夢を見た。  森の入口に佇む少女を、私は遠くか…

一色 恭平
3年前
81

【詩】これからの道行き

欲しかったもののほとんどは 手に入らないまま過去となった 必要なものだったのかはわからない 持っていたもののほとんどは いつの間にかに手放していた 必要なものだっ…

一色 恭平
2週間前
11

【怪談?】実際に経験した妙な話

たまには怖い?奇妙な?話でも。 霊感皆無の僕が経験した貴重なお話。 自分の表現力を伸ばすためにも書いてみます。 怖いの嫌な人は戻りましょう!笑 いつかのゴールデン…

一色 恭平
2週間前
13

【詩】春より後の、夏より先に

真昼の暑さとは打って変わって 早まった薄着が肌寒い 夏にしんと鼻腔をくすぐる 草木の香りを 一瞬間だけ嗅ぎ分けた 雨の降る季節が近いことを思う 新緑の葉をしずしず染…

一色 恭平
1か月前
19

【詩】また会う日まで

君にとっては 突然のことだろう さよならを言わずに 僕はここを発つ いつもと同じ笑顔で いつもと同じ声音で いつもと同じやりとりで いつもと変わらぬ一日のまま 僕は君…

一色 恭平
2か月前
19

【詩】約束は果たせずに

星屑を集めたら 君に届けに行こうと思う 星のない夜空を見上げて 僕はただただ立ちすくむ いつのまにか 遠くまで来たらしかった 空っぽの瓶には 虚しさだけが詰まってい…

一色 恭平
2か月前
25

【詩】秋風の夢

秋風の夢 すすきの穂が揺れる 鈴虫の歌 木の葉が踊る 過ぎゆく風の流れの中に 揺蕩う何かを感じていた 昼間の退屈が嘘のような 放課後の焦燥 辺りが暗くなる その前に …

一色 恭平
7か月前
33

【詩】夏よさよなら

9月も10日を過ぎて 晩夏のひぐらしの鳴き声が一つ、 大通りで自転車を漕ぐ僕の耳に届いた 僕はパチンコ屋に自転車を止め 駐車場の向こうの緑地に足を運ぶ ひぐらしの、 …

一色 恭平
8か月前
21

【詩】遺影の貴方

遺影に写るその人を思う 僕の記憶にない頃から 僕を愛し 僕を慈しみ 僕の幸福を願っていたその人 遺影に写るその笑顔を思う 黒い着物のその人は その時のためにこの写真を…

一色 恭平
9か月前
63

【詩】メモリー

ふいに込み上げてくるような 意図的に引き出せないような 宝箱には何を入れていたっけ 誰がネジを巻いたのだろう オルゴールが回りだす ドラゴンと子豚と旅人の行進 月の…

一色 恭平
11か月前
23

【詩】眠れない夜というのは

歳が今より半分も若かったころ 夜中に女の子にメールを送った 今のように既読のつかなかったころ メールを見てくれたかどうかもわからなかった 幼い決意を込めたメールは…

一色 恭平
1年前
24

【詩】形のないもの

山道を歩いていると この山のどこかに、 自分の探している物があるような気がしてくる 細い山道をひた歩く 陽だまりの中に見つかるような 風のいく先にあるような それは…

一色 恭平
1年前
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【詩】分岐点

真っ直ぐ行って右折する 真っ直ぐ行って右折する それでも僕は歩いている 突き当たりを右に 突き当たりを右に それでも僕は歩いている これまでもこれからもそんな感じ …

一色 恭平
1年前
23

【詩】Piano Man

きっとその夢は叶わない 大きな大きな夢だから そんな夢があるのなら こんなところに居てはいけない 誰も彼もがここに集まり 楽しそうに夢を話す そして歌うんだ きっと…

一色 恭平
1年前
19

【詩】サービスエリア

雨降る夜のサービスエリアで 君とホットコーヒーを飲みたい ヘッドライトの乱反射に目を細めて 過剰に熱いコーヒーを啜って 雨音と水蒸気にけむる景色を君と楽しみたい …

一色 恭平
1年前
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【詩】夕陽と星空と僕

乾いた空気に乱れた呼吸 空が次第に赤くなる 整備された公園の 脇の茂みの暗がりに 夕暮れの近さに心が翳る 整備された公園の 夜の姿を思い描いた 電灯に煌々と照らされた…

一色 恭平
1年前
41
夏の童心

夏の童心

 まどろみの中、生暖かい風が私に触れた。瞼を開けて、視界に広がる景色をみて、これが夢であることを悟った。

 こんな夢を見た。

 森の入口に佇む少女を、私は遠くから眺めていた。
 私の年齢はその少女と同じくらいであったろうか、二十ばかり若返った自分が、森に続く畔道の真ん中に立っていた。
 夕暮れのひぐらしはけたたましく鳴き、瑠璃色の境界が幾分山の向こうに差しかかっている。

 暗くなる前に帰らな

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【詩】これからの道行き

【詩】これからの道行き

欲しかったもののほとんどは
手に入らないまま過去となった

必要なものだったのかはわからない

持っていたもののほとんどは
いつの間にかに手放していた

必要なものだったと今にして思う

過去をやり直したいと思う
最善を願っているから

あの時に戻れたらと思う
もっと良くできたはずだから

これからの幸福を願う
きっとまだ知らないことがあるはずだから

会ったことはない
しかし会わなくてはならない

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【怪談?】実際に経験した妙な話

【怪談?】実際に経験した妙な話

たまには怖い?奇妙な?話でも。
霊感皆無の僕が経験した貴重なお話。
自分の表現力を伸ばすためにも書いてみます。
怖いの嫌な人は戻りましょう!笑

いつかのゴールデンウィークにあった話なのですが、
僕は普段千葉に住んでいて、長期休暇があると大好きな実家の茨城に帰省していました。

その年のゴールデンウィークも例に漏れず、実家へ帰省しました。

実家と言っても幼少期から住んでいる家というわけではありま

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【詩】春より後の、夏より先に

【詩】春より後の、夏より先に

真昼の暑さとは打って変わって
早まった薄着が肌寒い

夏にしんと鼻腔をくすぐる
草木の香りを
一瞬間だけ嗅ぎ分けた

雨の降る季節が近いことを思う
新緑の葉をしずしず染める
その雨粒の清らかさ

濃緑の季節に向けた準備と言うなら
私も粛々と傘を差そう

雨の降る季節が近いことを思う
雨の降る季節に出会う人があるなら
それは素敵だなと思う

天気のぐずつく日々の中の
晴れの日には夏の気配

夜には薄

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【詩】また会う日まで

【詩】また会う日まで

君にとっては
突然のことだろう

さよならを言わずに
僕はここを発つ

いつもと同じ笑顔で
いつもと同じ声音で
いつもと同じやりとりで
いつもと変わらぬ一日のまま
僕は君の前から姿を消す

今日君へ送る「またね」は、
明日や明後日会うつもりで告げるものではない。

僕はしばらくの間、
君の前から姿を消す。
その"しばらく"が、
どれくらいの期間なのかは僕も知らないけど、
それでもいつかまた会えるこ

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【詩】約束は果たせずに

【詩】約束は果たせずに

星屑を集めたら
君に届けに行こうと思う

星のない夜空を見上げて
僕はただただ立ちすくむ

いつのまにか
遠くまで来たらしかった

空っぽの瓶には
虚しさだけが詰まっていた

星空を、また見に行こうねと、少女は言った。
無邪気な声音は残響となり、
僕だけがまだ、少年のままだった。

理想を追いかけたかった。
ブレない芯などなかったのに。

小さな世界を飛び出したかった。
大切なものは、変わらないの

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【詩】秋風の夢

【詩】秋風の夢

秋風の夢
すすきの穂が揺れる

鈴虫の歌
木の葉が踊る

過ぎゆく風の流れの中に
揺蕩う何かを感じていた

昼間の退屈が嘘のような
放課後の焦燥

辺りが暗くなる
その前に
君の後ろ姿に声をかけよう

短くなった夕暮れだから
君と一緒にいたい
切ない風にさらわれる前に

クレーターまでくっきり見える
月が向こうに見えてきた

大きく紅い満月に
怪しい夕暮れ

心細さの中に
怪奇な期待が芽生えていた

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【詩】夏よさよなら

【詩】夏よさよなら

9月も10日を過ぎて
晩夏のひぐらしの鳴き声が一つ、
大通りで自転車を漕ぐ僕の耳に届いた

僕はパチンコ屋に自転車を止め
駐車場の向こうの緑地に足を運ぶ

ひぐらしの、
もう一鳴きを聞くために

今年の夏の、
夕暮れの風情の聞き納めに

入道雲と呼ぶには背の低い
中途半端な雲の峰に
夏と呼ぶにはやや薄い
薄紅が映える頃

駐車場の隅で
夏とのお別れ

木々の間から
秋の気配を運ぶ風

日は傾いて

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【詩】遺影の貴方

【詩】遺影の貴方

遺影に写るその人を思う
僕の記憶にない頃から
僕を愛し
僕を慈しみ
僕の幸福を願っていたその人

遺影に写るその笑顔を思う
黒い着物のその人は
その時のためにこの写真を用意していた

その人は去り、この遺影を残した
柔らかく、優しい、大好きな笑顔
きっと見ていたのはカメラのレンズではない

自分が去ったその後に
自分を悼む血族に
お前たちなら大丈夫と伝えるため
お前たちを見守っていると伝えるため

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【詩】メモリー

【詩】メモリー

ふいに込み上げてくるような
意図的に引き出せないような

宝箱には何を入れていたっけ

誰がネジを巻いたのだろう
オルゴールが回りだす
ドラゴンと子豚と旅人の行進
月の夜に光るキノコ

夢の中にいるような
時を巻き戻したような

あの気持ちはどこにしまったっけ

誰が僕に語るのだろう
絵本の扉が開かれる
魔女のキャンディと老木の微笑み
回るメリーゴーランド

飛び出すピエロ
浮かぶ島々
オバケの装

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【詩】眠れない夜というのは

【詩】眠れない夜というのは

歳が今より半分も若かったころ
夜中に女の子にメールを送った

今のように既読のつかなかったころ
メールを見てくれたかどうかもわからなかった

幼い決意を込めたメールは
確認されたのか
それとも既に夢へと旅立ったのか

眠れない夜というのは
僕にとってそういうものだった

夜がやけに長かった

あの子はまだ起きているのか

起きているとして

メールは確認してもらえたのか

確認したとして

今は返

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【詩】形のないもの

【詩】形のないもの

山道を歩いていると
この山のどこかに、
自分の探している物があるような気がしてくる

細い山道をひた歩く
陽だまりの中に見つかるような
風のいく先にあるような

それはきっと、
必要としていない人も多いのだろうけど、
自分にとってはかけがえのないもの
おそらく、私がここにいる理由

鳥の鳴き声が木立に響く
川のせせらぎが耳に優しい

細い山道をひた歩く
大木の洞に見つかるような
朽ちた祠で待つよう

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【詩】分岐点

【詩】分岐点

真っ直ぐ行って右折する
真っ直ぐ行って右折する
それでも僕は歩いている

突き当たりを右に
突き当たりを右に
それでも僕は歩いている

これまでもこれからもそんな感じ
思考のそういう傾向
進んでぶつかって二者択一

これまでもこれからもそんな感じ
思考のそういう傾向
進んでぶつかって取捨選択

真っ直ぐ行って右折する
真っ直ぐ行って右折する
たまには左折を選んでみよう

突き当たりを右に
突き当た

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【詩】Piano Man

【詩】Piano Man

きっとその夢は叶わない
大きな大きな夢だから
そんな夢があるのなら
こんなところに居てはいけない

誰も彼もがここに集まり
楽しそうに夢を話す
そして歌うんだ

きっと最期はあっけなくても
夢なんて叶わなくても
ここにいる幸せには敵わない

「なあ、俺はこんなところで終わるのかな」
心細さに苛まれる時もある
「その夢を叶えるためにここにいるんだろ」
友人が励まし、そうして今日をやり過ごすんだ

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【詩】サービスエリア

【詩】サービスエリア

雨降る夜のサービスエリアで
君とホットコーヒーを飲みたい

ヘッドライトの乱反射に目を細めて
過剰に熱いコーヒーを啜って
雨音と水蒸気にけむる景色を君と楽しみたい

きっと心は寄り添って
布越しの体温がどんな時より愛おしい
言葉少なにコーヒーを啜る

パーキング横の遊歩道
少し歩くのもいいじゃないか
茂みの闇のあたたかさ
差し込む光が闇を強める
葉から溢れる雫の音に
深く呼吸する

傘はささずに車

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【詩】夕陽と星空と僕

【詩】夕陽と星空と僕

乾いた空気に乱れた呼吸
空が次第に赤くなる
整備された公園の
脇の茂みの暗がりに
夕暮れの近さに心が翳る

整備された公園の
夜の姿を思い描いた
電灯に煌々と照らされた誰もいない公園で
何かが始まりそうな予感を覚えた

乾いた書籍と緩やかな時間
西陽が室内を赤く染める
埃っぽい図書室で
読書の時間にあの子が読んだ
図書カードに名前を連ねる

カップリング曲の方が好きで
助手席に座って何度も繰り返し

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