情動 小説のようななにか

今日もインスタグラムにポルノに出演しないかというメッセージが来る。ポルノは見たことがあるが、憧れというより性行為がどんなものか知りたかった気分のほうが大きかったような気がする。ポルノに出演する人たちがどういう人生を歩んでいるのかにも気になった。この人たちはなぜ当事者になったのだろうか?
またインスタグラムを見る。自分の日常を上げているだけなのになぜか会いたいとか金額を提示してポルノに出ないかと言ってくる人たちがいる。私が若い女性だから?そこらへんはよくわからなかった。ただ何か歪んだものを感じた。
こうも思う。若さがその時しか得られない特権のようなものだとしたらこれでなにかできないか?と。ただトランスヒューマンに関する研究もあるし、意外と古い発想なのではないか?とも思う。ただ身体性を伴う時間感覚はそのときだけしか得られないのではないか?
「ランダムで会ってみるか」
ふとつぶやいた。
このなかで本当の人間はどれくらいいるかわからないが、人間のようなことをしているらしき人に会ってみようという気になった。ただの自分の日常を褒められるのは悪い気はしない。それもソーシャルエンジニアリングの手法ではないかとも思うが、なにか悪いことが起こりそうなときはすぐにげればいい。そう思ったのだった。

絵を描いてインスタグラムに上げている人だ。まずこの人に会ってみよう。メッセージを送った。絵に関してどのようなところが心の琴線に触れて、どう思ったのかを伝えて会ってみたいと伝えた。
1日くらいたってから返信があった。まずメッセージをくれたことに感謝していて、どこか安全な場所で会えるなら会いましょうという返信だった。明日が土曜日だからその日に会うことにした。

東京都立図書館で会うことにした。時間は10時くらい。私は住んでいるコンドミニアムを出て京成立石駅に向かった。東京メトロ日本橋駅から広尾駅へ。人はそこまで多くなく、なんとなく外を眺めていると着いてしまった。広尾駅から出て御料池のそばを通り過ぎ、あの白い建物の前に出た。そこでキョロキョロしているとインスタグラムに反応があった。その人はもう着いているらしい。しばらくそのあたりを探してみるとそれらしい、10代中盤から後半の男性がいた。
「あの、ーーさんですか」
私はそう言って少し会釈をした。
「はぁ、そうですが。あなたがーーさん」
そう相手も答えて、無事合流できた。
まず聞きたかったことがあった。なぜ私の投稿に反応してくれたのか?それを聞くと
「日常を自然に写していて、何か描けると思ったからです」
確かにそういう写真ばかりあげていたが、この人は風景を多く描いていた気がする。それからなにを話せばいいのかよくわからなかったので、とりあえずどのように絵を描いているのか、絵に関する質問を繰り返していった。彼は時々困惑していたような気がするが、ちゃんと答えてくれた。
そうこうしているうちに、年齢について気になったので聞いた。17歳らしい。S高等学校というところに行っているという。それから私が20代後半で彼が10代なことになにか頭が熱くなるような感じがした。
私がコンピューターサイエンスをやっていることを言うと、熱心に聞いてくれた。アルゴリズムの構造というのはどうなっているのかや、cpuの構造はどうなっているのか?やコンピューターヴィジョンはどのように実装されているかについてなど。こちらも楽しくなってきた。
図書館に入って二人で本を探すことにした。二人共解析学は好きだったので数学の本がたくさんあるところへ行くことにした。実解析の本があったので二人で読むことにした。図書館なのでメッセージでコミュニケーションする。
そうこうしているうちに5時間位たったろうか?昼食を取らずにずっと座っていた。彼は楽しそうだった。

それからというものの未だにポルノに出演しないかというメッセージは来るが、彼からのメッセージも来ていて楽しい感じがしている。人と会ってみるのもいいかもしれないと感じた。暖かい余韻を残して。

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