そんな!ってなんだよ?
フルタイムですか?
仕事の帰りだ。同じタイミングでビルを出て、初対面の女性からそう訊かれた。
はい?あ、はい。
……私は取り立てて他人より自分を不幸せだと感じてはいない。
そして人生、働いて過ごしてきたがほんのわずかな間以外はフルタイム、いやフルタイムプラスでトリプルワークで働いてきたしそれを苦労だなんて思ってなんかいない。
ええっ!そんな!私もそんな目に遭ったらどうしよう、今から準備しておかないとぉ~。
…現在私は一人で生きている。一人で暮らしている。
誰かの扶養でもなければお金が有り余っているわけでもない。昨年は月収2万から3万もらえたらよい内職程度でしか収入がなく、経済は困窮を遥かに超えて死を意識もしていたりしたが今のところまだまだ逼迫してはいるが、仕事をしてなんとか一人と一匹で暮らしている。贅沢はできないけどなんとかなっているし扶養内勤務の女性たちを羨ましいと感じたことはない。わずかな間かつての夫の扶養であったけどたった一年半だけだったよ。
その女性が何を考えてそれを言ったのか私にはよくわからないが
そんな目に
(そんな目に、ってどんな目よ)
それを聞いた瞬間、憤りは通り越して悲しくなってしまった。
ほぼノーメイクにマスクの女性はどこにでもいそうな普通一般家庭の主婦、といった雰囲気の服装をしていた。
対して私はアシンメトリーの白いシャツにリボンタイ、ライダース、スキニージーンズにロングブーツで普通一般家庭の主婦ではなさそうな出で立ちで。(普段から似たかよったかの服装でコンサバなのはあんまり持ってない)
あからさまな蔑みを私に向けて発した言葉の持ち主は悪気はなかったのかもしれない。
だけど。
そんな目に遭ったらどうしよう、って。
そんな目ってなに?あなたが私の何を知ってるの?
憤りなんか遥かに超えて虚ろな気持ちが胸の中からモヤモヤしてきた。
一人ですからね、お疲れさまです。
小さく まぁ……… と聞こえたけど振り返らなかった。その場にいて同じ空気を吸うのも嫌でたまらなかった。
何がいけない。
フルタイム勤務でかわいそうだとでも言いたいの?
シングルで何がいけない。
いや、夫婦で共働きでフルタイムで働いている方々はたくさん、いるし。
すっかりモチベーションが下がってしまった。
何気ない言葉は簡単に人を傷つける武器になるんだ。せめて私は
そんな目
なんて言わないようにしようと思う。
草臥れてしまった。パートが、三時間勤務が当たり前の幸せなら私の幸せとは別の世界の基準なんだな、とてくてく歩いて帰ることにした。
橋の上に風はなく、流れている大分川はゆるゆるおだやかだったよ。それは私に優しい光景だったよ。
眺める工業地帯の煙突の煙さえ味方に感じたよ。
世の中の基準を自分の物差しが正確だなんて幻想にしか過ぎないから。
そんな目ってどんな目なんでしょうかね?
ふん。
ゆー。
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