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ココロの眼‐第六章 息子

 「さぁいよいよ一ヶ月だからね!
 あとは、何しろ体調管理。
 それと、苦手科目の復習あるのみ。
 やることはやってきてて、充分な力はつけてるから。
 過去問バシバシやってきますよー!」

 と、先生は張り切っている。
 国家資格を取得するための試験を受ける日まで、今日からちょうど三十日。
 たしかに、いよいよだ。

 ボクは鍼灸あん摩マッサージの専門学校に通っている。
 目的は国家資格を取得するためで、それは治療家として誰かの役に立つための階段の一歩であって、資格を取得するためと誰かの役に立つために勉強した知識を使って、治療の効果を出すためだ。

 三年間は長いようで早かった。
 長いようでもないかもしれない。
 早かった。
 今でも思い出す。

 初めて鍼を同級生の皮膚に、肉に刺した時のこと。
 震えた。
 初めてのあん摩の実技テストでは、たったの四分のテストで多分二リットルは汗をかいた。生理学ではそんなにかくはずはないけど、イメージでは二リットルのうち一リットルは顔からかいた。先生の白衣の上にポタポタと汗をこぼした。

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