「哀しすぎるぞ、ロッパ ―古川緑波日記と消えた昭和」

エノケンの芸風は何となくわかるんだけど、ロッパは太っちょで丸いメガネをかけている以外、さっぱりわかりません。この本を読んでもさっぱりわかりません。

この本の面白さは、ロッパの人気が出るのと日本が戦争に進んでいくのが重なっていて、教科書よりも身近に戦争が感じられることです。なんと、終戦の年になっても興行は続けられており、終戦の一か月後には東宝芸能祭なるバラエティショーが再開し、連日満員だったそうです。戦後の映画界のゴタゴタも内部から直接見ているような面白さがあります。

そんなこんなも、ロッパが日記魔だったおかげです。戦後は、人気の凋落と病魔によって惨憺たるものがあります。結核のために喀血に次ぐ喀血なのですが、借金ゆえに働かざるをえません。しかも、坊ちゃん育ちのためか、美食、飲酒、喫煙はやめられません。喀血が始まってから亡くなるまで10年間も働いていたのですが、一般には結核のことは知らされておらず、小林信彦さんの「日本の喜劇人」でも糖尿病のためとなっています。そんな状態のロッパが唯一生きがいとしていたのは日記を書くことでした。そこが哀しすぎるのです。

2014年10月18日

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