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民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 施行後の本法の運用状況について公表するとともに、諸外国における子の養育に関する法制の動向等も踏まえ、本法による改正後の家族法制による子の利益の確保の状況、親権者の指定等における父母の真意の反映の程度、DVや児童虐待を防止して親子の安全・安心を確保するものとなっているか等について不断に検証し、必要に応じて法改正を含むさらなる制度の見直しについて検討を行うこと。

二 法務省及び最高裁判所は本改正に係る国会審議において、特に、①合意がない場合に父母双方を親権者とすることへの懸念、②親権者変更、③子の居所指定権、④過去のDV・虐待の取扱いについての対応、⑤DV・虐待のおそれに関する質疑があったことを含めて、立法者の意思に係るのものとして、父母の協議や裁判所における判断に当たって十分理解されるよう、その内容の周知に最大限努力を尽くすものとすること。

三 子の権利利益を保護するための父母の責務の明確化等の本法の趣旨及び国会審議も含めたその内容について、国民、関係府省庁はもとより、児童扶養手当等の事務を行う地方公共団体及び共同親権の導入により大きく影響を受ける学校及び病院を始めとした関係機関等に正確に伝わるよう、周知広報の徹底に努めること。特に、親権の単独行使の対象となる民法第八百二十四条の二各項の「急迫の事情」、「監護及び教育に関する日常の行為」、「特定の事項」及び第七百六十六条第一項の「子の監護の分掌」等の概念については、その意義及び具体的な類型等をガイドライン等により明らかにすること。ガイドラインの策定等に当たり、DV・虐待などに係る知見等を踏まえることや、DV被害者等の意見を参考にすること。

四 改正内容の周知に当たっては、親権の行使を受ける側、特に医療や教育など、それぞれの場において適切な処理がなされるよう、分野ごとに個別に必要な取組を行うこと。また、当局からの情報提供に当たっては、Q&A方式等、受け手に分かりやすく伝わりやすい工夫を仕掛けるとともに、国民の疑問等に答えられるよう留意すること。

五 子の利益の確保の観点から、本法による改正後の家族法制による子の養育に関する事項の決定の場面において子自身の意見が適切に反映されるよう、専門家による聞き取り等の必要な体制の整備、弁護士による子の手続き代理人を積極的に活用するための環境整備のほか、子が自ら相談したりサポートが受けられる相談支援の在り方について、関係府省庁を構成員とする検討会において検討を行うこと。

六 父母の別居や離婚に伴う子の養育をめぐる事件の審理に関し、特に子の権利利益を保護する観点に留意し、子の安全や安心、適時な親権行使の確保への配慮のほか、当事者、特に子の意見を適切に聴取しこれを尊重することを含め適切な心理運営がされるよう必要な研修その他の取組を行うこと。

七 離婚後の養育費の受給や親子交流等が適切に実施されるよう、我が国における養育費・親子交流等に関する実状調査のほか、諸外国における運用状況に関する調査研究等も踏まえ、養育費・婚姻費用について裁判実務で用いられている標準算定表を参照して取り決められる額が適正なものとなるための配慮等を含め、国自らによる取組の在り方に加え、民間の支援団体や地方公共団体の取組等への支援の在り方について検討を行うこと。また、公的機関による養育費の立替払い制度など、養育費の履行確保のさらなる強化について検討を深めること。

八 父母による子の養育が互いの人格の尊重及び協力関係のもとで適切に進められるよう、父母の一方及び子に不相当な負担や心理的負荷を生じさせないことを確保しつつ、離婚前後の子の養育に関する講座の受講や共同養育計画の作成を促進するための事業に対する支援、ADRの利便性の向上など、関係府省庁及び地方公共団体等と連携して必要な施策の検討を図ること。

九 改正法により家庭裁判所の業務負担の増大及びDV・虐待のある事案への対応を含む多様な問題に対する判断が求められることに伴い、①家事事件を担当する裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の増員、②被害当事者及び支援者の協力を得ることなどにより、DV・虐待加害者及び被害者の心理の理解を始めとする適切な知見の習得等の専門性の向上、③調停室や児童室等の増設といった物的環境の充実、オンラインによる申し立てやウェブ会議の利用の拡大等による裁判手続きの利便性の向上、子が安心して意見陳述を行うことができる環境など、必要な人的・物的な体制の整備に努めること。

十 司法手続における利用者負担の軽減を図るため、法テラスによる民事法実扶助、DV等被害者法律相談援助や地方公共団体における支援事業など、関係機関との連携を一層強化し、必要な施策の充実に努めること。

十一 DV及び児童虐待が身体的な暴力に限られないことに留意し、DVや児童虐待の防止に向けて、リスクアセスメントも活用しつつ、被害者支援の一環としての加害者プログラムの実施の推進を図ることを含め、当委員会での確認事項を反映させた上で関係機関と連携して被害者の保護・支援策を適切に措置すること。また、居住地や勤務先。通学先等が加害者に明らかになること等によるDV被害や虐待の継続、SNSなどインターネット上の誹謗中傷や濫訴等の新たな被害の発生を回避するための措置を検討すること。

十二 親権者の指定や親子交流等が子の利益のため適切に行われるようにするため、DV及び児童虐待の被害又はそれらのおそれの有無についての認定が適切に行われるよう、必要な研修その他の取組を行うこと。また、父母が互いの親子交流を尊重し、これを妨げる行為を防止する措置等について検討すること。

十三 本法により離婚時の財産分与に係る請求期限が二年から五年となることを踏まえ、二年となっている離婚時の年金分割に係る請求期限の延長について早急に検討を行うこと。

十四 本法の下で新たな家族法制度が円満に施行され、子の利益を確保するための措置が適切に講じられるよう、関係府省庁等が連携して必要な施策を実施するための関係府省庁の連絡会議を設置するなどの体制整備を進めること。また、本法の施行に伴い、税制、社会保障制度、特に、児童の健全育成、子育て支援する児童福祉を始めとする社会福祉制度等への影響がある場合には、子に不利益が生じることがないよう、関係府省庁が連携して必要な対応を行うこと。

十五 改正法が国民生活へ多大な影響を与えることに鑑み、本法の施行に先立って、子の利益の確保を図るために必要な運用開始に向けた適切な準備を丁寧に進めること。

以上決議する

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