お皿

 よく行く喫茶店に、ご自由にどうぞと書かれたお皿があった。僕はそこから2枚お皿をもらった。
 パスタ一人前分がちょうどよく入るお皿だ。
 ところで、僕は未来の奥さんを妄想して、2枚お皿を取ったことを告白しなくてはいけない。3枚取ることもできた。でも、その場合、その一枚は、予備として持っておくか、あるいは子供、あるいは客用に持っておくのが、正当な理由かも知れない。

 そんなことを考えて取ってみたはいいものの、そもそも僕のところに客だとか、子供だとか、あるいは恋人が来るのか、それすら疑問である。
 今、僕は電車の中で、膝に皿を置いて、そんなことを考えていた。

 これに、何か大きなドラマや、大きな経験があるわけではない。でも同時に、この電車の車掌を脅して、なんとかするというのも経験ではない。
 僕がこの後、お皿を割ったとき、それが大きな大きな意味を持つことだってあるかもしれないじゃないか。

 意味を孕ませるのは僕の役目だ。多分…

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