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水虫

だんだん天気予報も雨が多くなり、ジメジメしている時期になってきましたね。今回はそんな季節に多くなる(?)水虫について薬剤師の中野さんに、『どんな症状がでるのか』、『どんな場所がなりやすいのか』、『水虫に似た症状は?』などを伺ってみました。

症状の特徴

水虫とは
水虫の原因は、白癬菌(はくせんきん)と接してかつその菌が長い期間皮膚に潜伏していることによるものです。
普通、白癬菌は表に出てこないのです。ところが、靴を長時間履いたり、激しいスポーツをしたりなど白癬菌にとって好ましい“高温多湿”という環境が整った時に、菌が増殖をし始め、水疱ができるなど症状がでてくるのです。
水虫の原因である白癬菌(はくせんきん)はカビの一種です。もともとは土のなかに住んでいましたが、進化して人の皮膚の最外層の角質の成分であるケラチンを栄養として繁殖するようになりました。
ヒトの皮膚に白癬をつくる原因菌は十数種類。うち、日本では5~6種が知られています。

水虫の原因

白癬菌の増殖を促す要因としては、次のようなことがあげられます。

 ・高温・多湿な環境
・足の指の間隔が狭く、蒸れやすい
・皮膚のバリア機能が低下している(小さな傷等)
・長靴やブーツ、分厚い靴下などを長時間履く
・どちらかというと、脂症。体温が高く、体質的に汗をかきやすい
・糖尿病、免疫不全などの持病で免疫力が弱っている
 
皮膚表面に汗や汚れが残っているアルカリ性の皮膚環境も、白癬菌が繁殖しやすい状態です。毎晩入浴して足やからだを清潔にし、弱酸性の状態に保っていれば、感染は予防できます。

水虫に関するデータ

水虫にかかっている人は、日本では約2,500万人いると推定されています。
もともと水虫は成人男性に多い疾患でしたが、最近では男女差が少なくなり、女性の3人に1人が水虫になっているという報告も見られます。とくに、ブーツやパンプス、ストッキングなどを長時間履く人は注意が必要。蒸れた状態が続くと、水虫に感染しやすくなります。
ブーツやパンプスを履いて肩で風切っている女性の皆さんは家で水虫に悩まされているかもしれません。

予防・対処方法

水虫を予防し、適切に対処するためにはどうすればよいのでしょうか。おさえておきたいのが、次の2つのポイントです。

1.清潔を保つ

室内で靴を脱ぐ習慣のある日本では、逆に裸足で歩く機会が少なくありません。不特定多数の人が出入りする場所だと、感染のリスクも高まります。そうした場所を完全に避けるのはなかなか難しいもの。大切なのは、その後のケアです。
 
スポーツジムなどでトレーニング後にシャワーを浴びていても、脱衣所の白癬菌が付着する可能性は十分にあります。帰宅後にもう一度足を洗うことで、感染を防ぎましょう。足の指の間もしっかり開いて、やさしくていねいに洗うのがポイントです。

2.蒸れた状態を避ける

長時間靴を履き続けたり、分厚い靴下を履いたりして蒸れた状態が続くと、水虫を発症しやすくなります。通気性のよい靴下を着用するほか、意識して靴を脱ぐ時間をつくるといいですね。
また、足だけでなく、靴をよく乾かすことも大切です。
夏場のサンダルも汗がたまりやすいので、こまめなケアで清潔を保ちましょう。

 水虫になりやすい部位


1.足(足白癬)

かかとや指の間のほか、足底から足のフチにかけて広範囲で見られます。ジュクジュクした浸潤タイプと、皮膚がむけて赤くなる乾燥タイプとがあります。
 

2.爪(爪白癬)

爪水虫のこと。足の親指の爪によく見られます。足の水虫が原因で起こることが多く、爪の先が白くにごって爪の付け根にも広がるタイプや、爪の真ん中にできた傷から感染して広がるタイプ、爪の付け根から広がるタイプがあります。
爪がもろくボロボロになったり、分厚くなって通常の爪切りでは切れなくなったりすることもあります。
 

3.手(手白癬)

多くは、足の水虫に併発します。足白癬のような角質増殖型や小水疱(しょうすいほう)型の割合が高く、ハイハイをする赤ちゃんの手にうつることもあります。
 

4.手足以外の部位に白癬菌が感染することもあります。


水虫と似た症状(病名)

 

接触皮膚炎

外部の物質が皮膚に触れて起こる炎症のこと。刺激性のものとアレルギー性のものとがあり、かゆみや湿疹、赤い腫れなどの症状が見られます。
 

皮膚カンジダ症

常在菌のカンジダ属の真菌に感染して起こります。かゆみや発疹、赤み、腫れなどが見られます。

診断


問診、視診、触診のみで、確実に診断することはできません。
検査をして白癬菌が検出されなかった、陰性(-)であっても、少量で検出されない場合は、複数回検査することもあります。
また、水虫によく似た皮膚病もほかに存在するため、クリニックで診断を受けられることをおすすめしています。

治療

外用薬:抗真菌薬は塗り薬を使用します。
通常はクリームタイプの塗り薬を使用しますが、患部がふやけていたり、ジュクジュクしているようなら、刺激の少ない軟膏タイプの塗り薬を使用します。
 足水虫の治療は原則として外用抗真菌薬というカビを殺す塗り薬が第一選択となります。爪水虫については飲み薬が第一選択となります。理由は塗り薬では爪の中まで有効成分が届きにくいからです。
日本で多く使われている抗真菌外用薬
イミダゾール系とよばれるルリコン(ルリコナゾール)、ニゾラール(ケトコナゾール)、マイコスポール(ビホナゾール)。
テルビナフィン(ラミシール)、クレナフィン(エフィナコナゾール)などがあります。

注意点

 今までの塗り薬は、1日に数回塗らなければなりませんでしたが、最近では、1日に1回ですむものも増えてきました。塗り薬をつける期間はどの位か?という質問はよくありますが、再発を予防するために症状がよくなっても3ケ月~6ケ月位はつける必要があります。
かゆみや皮むけなどの症状がなくなっても、水虫が残っていることがあります。最後まで治療をしきらないことで再発するケースが多く、かゆみが消えても医師の指示通りに薬の使用を継続するようにしてください。一般的に4週間以上は、継続して薬を塗り続ける必要があります。
 
水虫の菌に感染した箇所を蒸れた状態のままに放置、合わない市販の抗真菌剤を塗ったなどが原因で患部がかぶれてしまうことがあります。その際は通常の治療でつかう抗真菌剤ではなく、炎症用のステロイドの塗り薬でかぶれを治します。
 
かぶれが発生し細菌感染を起こすと、かゆみだけではなく痛みを感じることもあります。細菌感染がある場合は、抗生物質の飲み薬を使用することもあります。
 
自力で治すために、自宅で酢につけるなど独自の治し方をされることもありますが、逆に悪化することもありますので、ご注意ください。

内服薬

以前は、水虫の内服薬は副作用もありあまり薦められる薬ではありませんでした。ただし爪の水虫は外用剤だけでは非常に治りにくいのが現状です。ここ数年で水虫の内服薬にも変化があり、風邪薬、血圧の薬と同様ほとんど安心して飲めるようになりました。現在3種類の飲み薬があり各々に関して説明していきます。
1.イトリゾールカプセル
パルス療法を基本としております。具体的には一ヶ月を1クールとして一日2カプセルを7日間内服し残りの3週間は内服はなしで外用療法のみをします。これを3クールするのが基本です。
他の薬剤(高血圧薬、抗脂血症薬、精神薬、不整脈薬等)との飲み合わせの問題がありますので難点でもあります。
 
2.ラミシール錠
一日一回毎日服用が基本です。6ヶ月服用します。
 
 3. ネイリン
3カ月間1日1回服用します。現在主流になりつつある内服剤です。
ネイリンは日本発の新薬
そんな中、2018年に20年ぶりに爪水虫の新薬が登場しました。
日本で開発されたネイリンカプセルです。
ネイリンは1日1カプセル、12週間の服用で、爪水虫の完全治癒が期待されるお薬です。
 
内服抗真菌薬の副作用はいずれも胃腸障害や肝機能障害です。
慢性肝炎や飲酒などで肝機能が悪い人にはおすすめしません。
その時は、外用剤を使用します。
治療中は副作用をチェックするため、定期的に血液検査を行います。
いずれにしても、昔は水虫の特効薬を出せば、ノーベル賞は確実にもらえると言われましたが、日本でも今後期待です。

中野さんの解説を動画で↓(コンブリオTV)


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