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🌙宇宙猫は輪廻の夢を見る:re

愛猫の宇宙そらが死んだ。
それはもう、あっけなく。


宇宙そらは、三毛猫の雄だった。
捨てられた先から逃げてきたのか、それとも母猫とはぐれてしまったのかわからないが、近所の公園で今にも力尽きそうになっていたところを、私が保護した猫だ。


三毛猫の雄は珍しい。しかも、野生なのか捨てられたのかわからないが、このような形で出会うなんて。
我が家では神様のように宇宙そらをもてはやし、大切に育てた。

すくすくと育った宇宙そらは、保護した当初とは比べものにならないほど立派に育ち、凛々しい男の子となった。


だが、先天的に弱いとされる三毛猫の雄。
そのいわれの通り、あっけなく亡くなった。


時間が解決してくれる、というものの、私の心は一生溶かされることはなく、胸の中では宇宙そらのぬくもりをいつまでも待ち焦がれていた。

日が落ちた通学路を、1人とぼとぼと歩く。宇宙そらを失った私は、根無し草のように、漂うような日々を送っていた。


ふと、宇宙そらを保護した公園に差し掛かる。こんな日暮れなのに、人影がポツンとあるのが目に映った。


誰かを待っているような、こちらを見ているような…。その人影の姿が鮮明になるにつれて、どこか既視感を覚えていた。

その人影の正体は1人の男性であり、少し怖くなった私は即座にその場を離れようとしたが、背後からかけられた声に足を止めてしまった。


「また、会いに来たよ」


びっくりして男性の顔を見ると、まんまるな目がこちらを見ている。
耳をくすぐるような甘い声。宇宙そらの鳴き声のように、高く甘い声だった。


宇宙そらだ。間違いなく宇宙そらだ。そう確信した。


あの頃の毛並みを彷彿とさせる柔らかな茶色の髪が、そよそよと春風に揺られているのを見ていると、涙が溢れてきてしまった。


「ほら、ネオがいつまでも悲しそうだったからさ。僕もまだ小さかったのに死んじゃったから、心残りで。もう一度ネオに会いたいって、神様に必死にお願いしたんだ」


目の前の出来事が信じられなくて、視界がにじむ。
そんな私の姿を見て、いつくしむように宇宙そらは見つめた。


「ネオ。突然のことでびっくりしてると思うけどさ。もう一度、ネオの側にいてもいい……?」


肯定の代わりに、宇宙そらを強く抱きしめた。宇宙そらはそっと抱きしめ返し、優しく、優しく私の頭を撫でる。

暖かいおひさまみたいな、懐かしい宇宙そらの匂いを鼻にすると、涙がとめどなく溢れてきた。


いつしか輝き始めた無数の星たちが、私たちを祝福するかのように見つめていた。





こちらのお話は、縦スク文庫用に修正・リライトをおこない、再投稿したものです。

 該当企画はこちら↓

※ミムコさんへ:もし縦スク文庫にしてくださる場合は、ルビが難しいと思いますので、「宇宙(そら)」の表記を「ソラ」に変更していただいて大丈夫です!よろしくお願いいたします。

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