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等価交換

地方競馬はご存知でしょうか?
もしかしたらキャラメルマキアートにチョコトッピングを頼んで
「そろそろ痩せなきゃなー」とかとんちみたいな事を
言っている人もこれを見るかもしれないので一応の確認。
北は北海道、南は佐賀まで14会場あり、毎日どこかで競馬を開催されている。
配当が安いイメージの名古屋、
荒れまくりのファイナルレースでお馴染み高知競馬、
浦和、船橋、川崎、大井の南関などなど。
いつもどこかで競馬はやっている。

わたしは、地方競馬をやる。もちろん現地にも何ヶ所か行った事がある。
JRA(中央競馬)も行ったことがある。
特に京都競馬場は、子供が遊べる大きいアスレチック公園があって
ファミリー層も来やすい環境だと思う。

「パパ競馬がんばるぞー」「パパがんばってー」
「賭けすぎないでね」「はーい!じゃあ後でね」

みたいなアットホームな会話もあるでしょうね。

わたしの行ったとある地方競馬場ではそんな雰囲気はない。
わたしは平日開催に行ったこともあると思うが
見る限り、年配が多く、むしろおじいさん、おばあさんが多い。
G1なんかで競馬覚えた若い競馬ファンを跳ね返す老人玄人の雰囲気で
若いカップルはちょっと居ずらそう感じだ。
さらに老朽化した建物も相まって、博打感120%な会場であった。

わたしも競馬新聞を買って食堂でビールを飲みながら
マークシートを記入していると隣では
常温のいいちこを飲みながら「シンボリルドルフは凄かったなー」
というおじさんたちがいる。歯がない。
焼酎って水割りかロックじゃないの?とわたしは思っていた。

「おねえちゃんは何買うの?」
「2から3連複にしようと思ってます」
「ガハハハ!4にしとけって!!4の馬はいいぞー!
   さっき見たらパリッとしとったー!!」
「は、はい・・・」 

なんの知性もない会話である。
わたしは日々みんなでオプチャで前有利か差し有利か、
展開的に差し届かないんじゃないか・・・など
わたしの持てる範囲の知識を使ってさらに仲間の見解など踏まえて競馬をしている。
それなのにこのおじさんたちはパリッとしているという謎の理由で
馬を選び、お金を賭けている。わたしには信じられなかった。

馬券販売時間の締め切りのチャイムがなり、わたしはコースに向かった。
平日開催のためか人が少なくゴール板の前に来れた。
隣にはなんかぶつぶつ言っている太ってハゲたおじさんがいる。
よく聞くと「頼むぞ…頼むぞ…頼むぞ…頼むぞ…」と言っている。
レースが始まり、先頭の馬が最後の直線に入るとおじさんは
「差せー!!差せー!!差せー!!」と絶叫し始めた。
馬がゴールに入ると「ダメだーーーーーー!」と馬券を放り投げた。
1枚がわたしの足元に来たので見ると
そのレースで1番最下位の馬から3連単を買っていた。
8頭立ての8番人気を買っている。
1位の馬がゴールしている時、直線に入ったくらいを走っていた。
差しが届くわけないじゃないか。
それでも希望にしがみつき、大声で応援していたのであった。

さっき書いた2人以外にもいろんなおじさん、おばさんたちがいて
赤ペンを耳にさし、競馬新聞にメモをとり、馬券を買う。
結果に一喜一憂し、こんな安い配当いらないと強がってみたり
自分の望んだ結果にならなかったら八百長だと騒ぐ。
そんな人たちが目につく競馬場だった。
若い人たちはこういうのもエモいと言うのかな。

最終レースも終わり、帰りのバスの中でふと考えてしまった。
競馬の神様がこう言ったんじゃないか。

「お前の歯と交換に当たるようにしてやろうか」
「お前の髪の毛と交換で明日の結果を教えてやろうぞ」

確かに彼らは歯もないし髪の毛もないし、知性や理性すら失っている。
競馬の神様、少し取り過ぎじゃないか。
でも楽しそうに競馬をやっている。神様の思うがままか…そう思った。

今日もわたしは競馬をしている。
オプチャで買い目を公開し合い、予想を話し合いわいわいやっている。
当たったらおめでとうと言い合い、みんな外れたら「ゲェェェェェ」と言い合う。
さらに言うとわたしは職を失った。

「競馬の神様ーーーー!仕事と交換に高配当をお願いします!!!!」

神様は大切なものと交換してくれるんじゃないのかよ。

平気で最下位の単勝を買って当ててみたり、
みんなが固いと思うレースで穴馬選んでみんなからスルーされたり、
毎日競馬を楽しんでいる。
すっかりわたしもおじさん側に来てしまったなー。でも楽しい。



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