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ピュアとルメール

「純粋であればあるほど人生は悲劇だ」・・・岡本太郎

中学3年生、卒業式の間近。
高校進学でみんなが離ればなれになり、毎日会うことはなくなる。
そんなある日、小学校からずっと同じクラスのけんたくんに話しかけられた。

「あの…ちょっといい?LINE教えて」

小学校から同じクラスなだけでほとんど話したことがない。
なぜなのか?急になんなんだ。よくわからないがLINEを交換した。
その夜にLINEが来て理由が判明した。

「わたるがさ…まるちぃのこと好きみたいなんだけどLINE教えていい?」

要するに友達思いのけんたくん。やるじゃないか。けんた。
しかもそれはわたしも好きなわたるくん。
2組の誰かと付き合ってるみたいな話を聞いてあきらめたのに。
それからわたるくんとLINEをすることになった。

そこからわたるくんとLINEする。好き同士なことあって話が早い。
次の週の休みの日、一緒に遊ぶことになった。いわゆるデートってやつ。
ただ問題があってわたしはそれまで男の人と2人で遊んだことがない。
わたしは緊張してしまい、どうしていいかわからなくなる。
そうだ。けんたくんに相談しよう。

「わたるくんって何が好きなの?いつもどんな話するの?」
「おのののか!あとは麻美ゆまとか初音みのりかな」

今ならわかる。それは男同士でする話だ。
恋は盲目って言うけどその時のわたしは盲目というより全盲。
純粋すぎて信じてしまった。憎むならけんたとピュアさだ。

結論から言うとわたるくんとその後付きあうことも
LINEをすることもなかった。
それはそうだ。全力でグラドルとAV女優の話をする女なんて
どの時代でも好かれるわけがない。めちゃめちゃ勉強したのに…
好かれようとして嫌われるのは、きつい。
G1の1,2倍オッズのルメールの単勝、3連単アタマ固定流しに
大金突っ込んで外した時と同じ気持ちといえば
みんな当時のわたしの気持ちを理解できるだろう。
いつの時代も置きにいって外れるのはつらい。
それならダイワキャグニーくらいから勝負した方が諦めがつく。

そんなわたしも大人になり、男性とお付き合いしたり
場数を踏んでピュアさもすっかり無くなった。
そのときの彼氏に競馬場に連れていってもらったことがあった。

「やっぱさ、ディープインパクトの子供は強いんだよ!
 まるちぃは競馬知らないから言うけど
 ディープインパクトの子供買ってればだいたい当たるから!」
「すごいね!すごい競馬詳しいんだね!!」

わたしは心の中で言った。

「ダート短距離はサウスヴィグラスだろ。というか馬柱ちゃんと見ろよ。」

わたしはすっかり大人になってしまった…

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