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娘が免許を取った。

これはただ単純に日常の出来事の報告である。

取れた免許は自動車の運転免許である。
だからどうした?ではないのだよ。この地方において運転免許を持たざる者は、持っている者の5.5倍は苦労すると言っても過言ではない。公共交通機関などは利便性に乏しく、首都圏のように「とりあえず駅行けばなんとかなるっしょ」とはいかない。あらかじめ発車時刻を調べてから動き出さなければ、膨大な待ち時間をくらい「あれ?歩いた方が早いんじゃね?」と思ってしまうくらいなのだ。

ゆえに
冬場は死と隣り合わせ。風は寒いし、雪はジトッとしてる。道路や横断歩道は赤茶色に染まり、空は年中鉛色。娯楽も乏しく、スーパーマーケットもパチンコ店も駐車場だけはデカイなど…不満はいろいろあるが、とにかく車が無いと何もできないのだ。

高卒で就職する際は車の免許が必須であるし、バイトの募集も自転車では「冬どうすんの?」と面接官に心配され、「歩いて来ます!足腰丈夫なんで」と答えるとあえなく不合格となるのだ(のか?)欲しいのは根性ではなく運転免許であるともいえる。

そんな大事な運転免許を彼女は、
やっと取得したというのだ。

確か高校の終わり頃から自動車学校に行ってたような…そして今、彼女は20歳なのだが、これはあれだな、慎重にもほどがあるよな。うん、ちょっとな、人より安全確認に時間をかけるタイプなのだな。

その割には20歳の誕生日を過ぎたら「ウェェェィィイイイ♪」と色んなお酒を試し始めるという積極性も持ち合わせている、将来のな、有望株だという見方もあるよな。酒を飲んでいたいから運転免許取らなかった説も脳内に浮上したが揉み消した今、私は、元気です。ハイ。


休みの日に「隣に乗って」と娘に誘われて
彼女の職場まで助手席に乗っていった。初めての娘の運転に不安はなかった。
流石、人より時間をかけただけある。ウン。
大目に見てる?甘いかな。


親というものは決して
自らの子を谷に落としたりはしない。
転ばぬように目の前の石をそっとどかす存在なのだ。

君が生まれたときに思ったんだよ
俺が守らなきゃって。




そんな彼女もいつか家を出ていくのだろう。


来年は21歳。
それは私たち夫婦が結婚した年齢でもある。


一緒にいる間はせめて良い父親でありたい。
いや、いい男として傍にいてやりたい。
目の前にある石は全て蹴とばしてやる。
道を踏み外さぬように、
堂々と真ん中を歩けるように、
ずっと隣で見守って、
ずっとそうしてやりたかった。


いつか誰かにバトンタッチするんだなぁと
ぼんやり考えた。

車に揺られて15分。

初めてのドライブはあっけなく終わった。



こんなこと書くつもりじゃなかったのに
なんでかなぁ。

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