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何清漣★ウクライナ戦争で重要性が浮き彫りになった資源確保問題 2022年4月29日

3月初めのロシアに対する全面制裁が始まって以来、ロシアも制裁に参加した大半の国家も、経済面で様々な損害を被っている。インフレの急激な進行以外に、経済成長も悪影響を受けています。

4月19日、IMFは1月のフランスの経済成長率を0.6%ポイント、ユーロ圏で1.1%ポイント、ドイツで1.7%ポイント引き下げました。

米国、オーストラリア、カナダは比較的影響がちいさいものでした。資源を自給し、輸出も可能で、外部市場への依存度が比較的低いという経済構造からです。

この3カ国のうち、米国の経済成長率の予測については専門機関の分析は様々でIMFは5.2%、OECD、ゴールドマン・サックス、JPモルガンは3.6%〜3.8%と予測しています。

GDP10位のカナダ政府は、2022年の成長率を6.7%、同12位のオーストラリアの中央銀行は、最近2022年の成長率を5.5%に修正し、いずれも昨年より高い成長率を予測しました。

この一見単純な経済現象はある問題を表しています。

これまではGDPをその国の豊かさの指標にしてきたのですが、それには大きな欠陥があって、資源が豊かさに占める無視していたのです。

★資源必要国が資源供給国を制裁する困難

ロシアの天然ガスに対する規制では、EU各国がなんとか責任逃れをしようとしています。

3月31日、ロシアは、欧州のガスのバイヤーたちに、ガスプロムバンクに外貨とルーブルの2つの口座を開設するよう求める法令を発布しました。

EU諸国はすべてルーブルでの支払いはしないと表明していますが、ドイツ、ハンガリー、スロバキアなど多くの国はルーブルでの購入と支払いをやめていません。

4月21日に欧州委員会が加盟国に送付した文書によると、EU企業がユーロまたはドルで支払い、それをロシア側がルーブルに変換することは可能であり、それによってロシアの要求を満たし、EUの対ロ制裁にも違反することはないというのです。

4月27日、イタリアの巨大エネルギー企業エニ・グループがガスプロムバンクにルーブル建て口座を開設しました。

ブルムバーグは、ロシアの支払い要求に応えるため、欧州企業10社が必要に応じてガスプロムバンクに口座を開設したと報じています。

ロシアの石油についてはまた違います。

ウォール・ストリート・ジャーナルの「西側はロシアの石油を購入。ただ追跡は困難に」によると、対露全面制裁後、西側のバイヤーはロシアの石油購入を継続すると悪評が怖いので、制裁逃れの道を探しているといいます。

ひとつは「目的地不明」のタンカーを使うやり方と、もう一つは、ロシアの石油に他国の石油を最大49.9%までブレンドして出所を不明にする方法です。

これは昔から行われていることで、イランやベネズエラなどの制裁対象国が原油を輸出する際の方法。その結果、ロシアの主要顧客に対する輸出は制裁後に却って増加しました。

タンカー追跡サイトの「TankerTrackers.com」によれば、ロシアの港からEU加盟国への石油輸送量は、4月までに日量平均160万バレルに増加しました。

EU加盟国は従来、ロシアの原油の最大の買い手で、ロシアのEU向け石油輸出は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、3月には日量平均130万バレルまで減少していたのにです。

同じく商品データを提供するKpler社のデータによると、平均輸出量は3月中旬の日量100万バレルから4月には日量130万バレルに増加したとのことです。

ウォール・ストリート・ジャーナル誌の記事によると、ロシアのルーマニア、エストニア、ギリシャ、ブルガリアへの石油輸出量は、4月には3月の1日平均の2倍以上に増加しました。欧州の最大の買い手であるオランダとフィンランドへの輸出も大幅に増加しました。

ブルムバーグやウォール・ストリート・ジャーナル誌によれば、これまで、ロシアのガスをルーブルで購入しているのは計10社、ロシアの石油を別の方法で購入しているのは計6社、EUでは計27カ国で、未報告は11社です。

★中国の「対豪州制裁」にそっくり

この状況は、中国が2020年秋以降にオーストラリアに対して行った経済制裁、すなわち豪州石炭の購入を拒否し、豪州鉄鉱石の人民元建て価格設定を受け入れさせようとしたことを彷彿とさせます。

中国は、石油と鉄鉱石の世界最大の買い手である。自分たちが「えらい客は店に無理を言える」というおごりから、自分たちが石油の価格決定権をもっており、石炭や鉄鉱石の価格決定権ももつべきだ、とおもったのでした。

政治的理由で豪州の石炭購入を減らして、豪州の石炭生産と失業増加という影響を与えようとしたのです。

豪州炭の8割が中国向けの輸出で、2018年から中国は豪州鉄鉱石の購入を大幅に下げ、価格を20%下落させました。

豪州も最初は大変焦って、中国に経済と政治をいっしょくたにしないようにとお願いしたのですが、中国はもう自分たちが勝ったも同然だと思い上がって、多くの豪州炭を積んだ輸送船を中国の港で荷下ろしさせないようにしたのでした。

しかし、これは所詮、浅はかな考えでした。制裁の1年後の2020年10月、中国は国内炭の生産能力、風力発電の変動、経済需要の急増などさまざまな要因で、各地で電力不足に陥ってしまったのです。

こうした状況の下で、中国では多くの港でそっと豪州炭を荷下ろしし始めたのでした。

国際市場における鉄鉱石の需給変化だけでなく、中国自身もエネルギー問題に直面し、1年前に止めていた豪州炭輸入をひっそりと再開したのです。

一方、国際市場で鉄鉱石価格が高騰する中、ウォール・ストリート・ジャーナル誌4月22日号では「鉄鉱石価格の高騰が中国の対豪貿易圧力戦術を弱体化させる」という記事を掲載しました。

中国は対豪鉄鉱石依存によって、鉄鉱石を貿易制裁の対象にしました。しかし、国際市場における鉄鉱石価格の急騰は過去10年来最高となり、中国の対豪貿易圧力政策を弱めて、鉄鉱石輸出が半ばを占める豪州の収入に貢献しています。

国際市場の鉄鉱石価格は2020年春にはトン当たり100米ドル未満だったが、2021年4月20日にはトン当たり188米ドルにまで上昇しました。

オーストラリアのピルバラ港湾局によると、世界最大の鉄鉱石輸出拠点であるオーストラリア北部のポートヘドランドから3月に出荷された鉄鉱石のうち、中国向けは3810万トンで全体の80%以上を占めました。

2021年4月のオーストラリア政府の報告書によると、鉄鉱石価格の好調により、6月期の鉄鉱石輸出収入は1360億豪ドル以上となり、過去の記録は2020年会計年度の1040億豪ドルだった。

こうして、中国によるオーストラリアへの経済制裁は、早々に幕を下ろしたのでした。

★米国シンクタンク:「制裁は常に思い通りにはならない」

以上の二つの例は、どちらも資源を必要とする国が資源供給国に制裁を加えたものです。

対露制裁を科したのは世界の親分(米国のこと)の連合国で、ロシアのウクライナ侵略に反対し、「歴史上最も厳しい制裁」を科しながら、自分たちがそのルールを破っているのです。

二番目の例は世界第二の経済大国が自分が最大のバイヤーだという地位を利用して、豪州を屈服させようとしたのに、一年後にはそっと制裁を解除したわけです。

つまり、イデオロギー的な戦いは別として、資源の安定供給はできるものの、その代替手段が少ないときに、海外資源に依存する国が軽々に制裁を行えば、千の敵を殺しても自分がもっと傷つくことを示しています。

アメリカは世界一の強国であり、資源を自給自足しているというかなりの強みがあるので、政治的な目的を達成するために経済制裁を好んで行います。

そして同盟国としては自分たちの状況がどうであっても、それを支持する態度をみせるしかありません。

しかし、だからといってあらゆる制裁がみな有効だというわけではないのです。

コロンビア大学サルツマン戦争平和研究所のリチャード・ハナニア研究員による研究「Ineffective, Immoral, Politically Convenient: America's Overreliance on Economic Sanctions and What to Do It 」を最後に紹介しておきます。

彼が米国が制裁した20数カ国を検証した結果わかったことは

「理論的には、制裁はゲオポリティクスの政治目標を実現するべく行われる。だから、制裁する側には人道主義的なコストがかかる。しかしそれが国家の安全の実現という角度からおこなわれるか?最良の研究によれば、制裁は巨大な経済的損失を生み、かつ最終的には生命の損失も生み出す。そして政策決定社の基準をもってしてもまず失敗に終わる。そして過去数十年の研究は、経済的脅迫は一層逆効果であり、民主化や人権尊重といった米国の政治目標を促進することはない」です。(終わり)

【观点】资源主权彰显重要性:俄乌战争一个意外后果


何清漣

这一看似简单的经济现象其实说明一个问题:过去以GDP为衡量一国财富、国力的主要标准的方式有个非常大的缺陷,忽视了资源在一国财富中的重要性。

自3月初对俄全面制裁以来,被制裁的俄罗斯与参与制裁的大部分国家经济都受到程度不同的损害,除了通胀急剧推高之外,经济增速也必受到影响。 4月19日,国际货币基金组织(IMF)将1月份的法国增长预测下调了0.6个百分点,对欧元区下调1.1个百分点、德国的预测下调1.7个百分点。但是同样参与制裁的美国、澳大利亚、加拿大等国,受到的影响相对要小,其中原因与这三国经济结构有密切关系,都是资源能够自给还能出口的国家,对外市场依赖度也相对低。这三国当中,除了 2022 年美国经济增速预测,各家机构差异甚大, IMF 预测 5.2%,OECD、高盛、JP 摩根给出 3.6%-3.8%。[1]加拿大在全球GDP排名第十,该国政府预测2022年增长率达6.7% ;排名第12的澳大利亚央行最近将2022年经济增长率调整为5.5%,都高于去年。

这一看似简单的经济现象其实说明一个问题:过去以GDP为衡量一国财富、国力的主要标准的方式有个非常大的缺陷,忽视了资源在一国财富中的重要性。

资源需求国制裁资源供应国的尴尬

抵制俄罗斯天然气一事,现在已经被欧盟国家自行规避了。3月31日,俄罗斯发布一项法令,要求欧洲天然气买家在俄罗斯天然气工业银行(Gazprombank)开设外币和卢布两个账户,欧洲天然气买家用欧元或美元付款,然后再由该银行将其兑换成卢布,并将卢布付款转给俄罗斯天然气工业股份公司。欧盟各国虽然都声明不用卢布支付,但德国、匈牙利、斯洛伐克等多个国家就一直没停止购买并用卢布支付。欧盟委员会4月21日发给成员国的一份指导文件称,欧盟公司有可能用欧元或美元付款,然后再由俄罗斯方面将其兑换成卢布,这样既可以满足俄方要求,也不会违反欧盟对俄罗斯的制裁规定。[2]4月27日,意大利能源巨头埃尼集团在 Gazprombank 开设卢布账户。[3]彭博社报道,十家欧洲公司已经在 Gazprombank 开设了满足俄罗斯支付需求所需的账户。[4]

购买俄罗斯石油又是另一番情景。4月22日,《华尔街日报》登了一篇The West Is Still Buying Russian Oil, but It’s Now Harder to Track,[5]标题直译应为《西方仍在购买俄罗斯石油》,内容也是讲自从西方国家发劝对俄全面经济制裁之后,西方石油买家担心现在与俄罗斯的石油贸易会带来声誉风险,因为这些石油贸易为西方领导人指责犯下战争罪行的俄罗斯政府提供资金,因此找到了几种规避制裁的方式。一种越来越受欢迎的交付方式是使用标有“目的地未知”的油轮。另一种就是壳牌的方法,将俄罗斯石油兑入其他来源地的石油,比例不超过49.9%,模糊了原油的来源。这是一种古老的做法,伊朗和委内瑞拉等受制裁国家就是通过这种方式出口原油的。结果是俄罗斯对主要客户的石油出口在制裁后反而加大。

根据TankerTrackers.com的数据,4月份迄今为止,从俄罗斯港口运往欧盟成员国的石油数量已增至平均每天160万桶。欧盟成员国历来是俄罗斯原油的最大买家。俄罗斯入侵乌克兰后,3月份俄罗斯对欧盟的石油出口量曾降至平均每天130万桶。另一家大宗商品数据供应商Kpler的类似数据显示,4月份的日均出口量从3月中旬的100万桶升至130万桶。据WSJ这篇报道,4月份俄罗斯对罗马尼亚、爱沙尼亚、希腊和保加利亚的石油出口量较3月份日均水平增加了一倍以上。对欧洲最大买家荷兰和芬兰的出口量也大幅上升。

至此,据彭博与WSJ消息,用卢布买俄罗斯天然气共10家,变着方法买俄罗斯石油的共6家,EU一共27国,只有11家的情况未见报道。

此情此景似曾相识:中国对澳大利亚的制裁

这种情况让人想起中国自2020年秋天开始对澳大利亚的经济制裁——拒买澳大利亚煤炭,并想迫使澳大利亚接受中国用人民币对澳大利亚铁矿石定价 。

中国既是世界上最大的石油买家与铁矿石买家。可能是出于客大欺店的心态,中国给自己定下的目标是:中国已经掌握了原油定价权,还要拿下铁矿石定价权。中国的底气来自于这个估计:澳大利亚主产煤与铁矿石,中国是最大客户,在制裁(即拒买)铁矿石之前,中国因政治原因减少对澳大利亚的煤炭需要,澳大利亚煤业的生产与就业就受到一定影响。澳大利亚铁矿石产量中的80%出口中国,2018年开始,中国对铁矿石的需求大幅下降,导致澳大利亚铁矿石价格狂降20%。

澳大利亚开始也很着急,希望中国不要将经济与政治挂钩,但中国觉得自己胜券在握,趾高气扬,许多装澳煤的船只滞留中国港口,无法卸货。没想到人算不如天算,制裁一年多之后,2020年10月,中国受国内煤矿产能、风电波动、经济需求猛增等多方因素的影响,多地出现了电力紧张。在这种情况下,多个港口悄然重新放行来自澳大利亚的煤炭。

不仅国际市场对铁矿石的供求发生了变化,中国自身遇到能源困难,悄悄恢复中国在一年前就停止进口澳洲煤炭。与此同时,由于国际市场铁矿石价格的飚升,《华尔街日报》在2021年4月22日推出一篇《铁矿石价格飙升,削弱中国对澳贸易施压战术》,该报道认为,中国出于对澳大利亚铁矿石的依赖,并没把铁矿石列为贸易制裁的对象。但国际市场上铁矿石价格飙升至十年来的高点,削弱了中国针对澳大利亚的贸易施压战术,更为占全球铁矿石出口一半以上的澳大利亚增加了收入。2020年春季国际市场的铁矿石价格每吨不到100美元,但2021年4月20日上涨到每吨188美元。据澳大利亚的皮尔巴拉港务局(Pilbara Ports Authority)的数据,3月份从全球最大铁矿石出口中心、澳大利亚北部的黑德兰港运出的3,810万吨铁矿石的目的地是中国,占总发货量的80%以上。澳大利亚政府2021年4月的一份报告称,强劲的铁矿石价格推动截至6月的财政年度的铁矿石出口收入达到创纪录的水平,超过1,360亿澳元;而历史上的这一记录是2020年财政年度的1,040亿。

也因此,中国对澳大利亚的经济制裁无疾而终。

美国智库研究:制裁总是事与愿违

以上两例,都是资源需求国制裁资源供应国,对俄制裁是世界老大联合老盟国,反对俄罗斯入侵乌克兰发动的据称历史上最严厉的制裁,结果是被西方自身破坏规则;后者是世界第二经济大国利用自身是最大买家的身份,希望迫使澳大利亚屈服,结果是一年之后,悄无声息地放弃了制裁。这说明,撇开意识形态之争看制裁, 在资源供应相对稳定且替代性不多的情况下,对外资源依赖的国家如果轻启制裁,很容易杀敌1千,自伤更多。这里当然有欧洲盟友难以言说的苦衷,美国是世界上最强大的国家,而且资源可以自给,具有相当优势,因而比较喜欢通过经济制裁达成政治目的。盟国尊重美国,不管自身情况如何,必须表态支持。

但是,并非所有的制裁都很有效。哥伦比亚大学萨尔茨曼战争与和平研究所的研究员理查德·哈拉尼亚(Richard Hanania)的一段研究结论做为本文结语。在《无效、不道德、政治便利:美国对经济制裁的过度依赖以及如何应对》(Ineffective, Immoral, Politically Convenient: America’s Overreliance on Economic Sanctions and What to Do about It)这篇研究报告中,他在研究过美国制裁的两打以上国家的样本后,总结说:“在理论上,制裁是为了实现地缘政治目标。因此,即使制裁者付出了人道主义成本,但他们是否有可能从实现国家安全目标的角度出发?最好的研究表明,制裁不仅会造成巨大的经济损失并最终造成生命损失,而且即使按照政策制定者设定的标准,制裁也会失败。此外,过去几十年的研究表明,经济胁迫更可能适得其反,而不是促进民主化和尊重人权等美国政治目标。”[6]

[1]《最大的分歧在海外——2022 美国宏观展望》(https://pdf.dfcfw.com/pdf/H3_AP202201251542515612_1.pdf?1643121458000.pdf ).

[2] EU Suggests Companies Should Keep Paying for Russia Gas in Euros, By Alberto Nardelli, April 22, 2022(https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-04-22/eu-suggests-companies-should-keep-paying-for-russia-gas-in-euros ).

[3] The Spectator Index @spectatorindex(https://twitter.com/spectatorindex/status/1519380955584417792 )

[4] Four European Gas Buyers Made Ruble Payments to Russia, Bloomberg News, April 27, 2022 (https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-04-27/four-european-gas-buyers-made-ruble-payments-to-russia ).

[5] The West Is Still Buying Russian Oil, but It’s Now Harder to Track, By Anna Hirtenstein, April 21, 2022(https://www.wsj.com/articles/russian-oil-flows-but-increasingly-under-the-radar-11650541684).

[6] Ineffective, Immoral, Politically Convenient: America’s Overreliance on Economic Sanctions and What to Do about It, FEBRUARY 18, 2020 • POLICY ANALYSIS NO. 884, By Richard Hanania (https://www.cato.org/policy-analysis/ineffective-immoral-politically-convenient-americas-overreliance-economic-sanctions )

作者:何清涟,中国经济学者,现居美国。

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