ヒッチコックの忌（笑う月）　　川柳70句

真彦の西方にある少林寺

重曹と重曹でないものの唄

バフチンのあんみつこぼす昭和の日

くるぶしの生物時計くるわせて

夜に這うバカ田大学短歌会

夏近し悪魔のトマトケチャップ図

噺でのユープケッチャをうらがえす

のどちんこガウス亡き世にかぞえられ

水晶の夜にトリックスターの血

あのほかのスモークチーズ黄昏れて

蚊がいないすべて虚像の江戸幕府

陰獣にコミットしない昭和の日

意味に意味あたえて膝のうえねむる

去勢者の仮名が眠狂四郎

新麦をスキゾ・キッズに投げあたえ

自我ほぐし箸を訳する綿の国

うりをうる呪術信仰あてにして

たばこ屋が北極星をついにみず

噺家へメロンの菓子をたたきつけ

噺家を愛してやまぬ鼓笛隊

ウンベルト・エーコ胎蔵界に死す

ときメモに役所広司がまっぱだか

柏手をうつ大東亜大学誌

うすぐもりいんこの記憶喪失し

弁慶と弁慶輪廻しあう午後

わさび園故郷喪失してもなお

未明から久石譲のかむきゅうり

ぶんか社の分社をてらす地球光

浜崎のロケットに乗る茶屋じしん

紫宸殿機械がひろうラムネ玉

一休のなるとの前に伏せる王

鼻毛屋が王さまの鼻絶叫し

にもつ捨てきれずスパルタ市民館

かずのこを地球全土にもってゆく

土星おちビデオテープを手でまわす

オーロラが消えさるまでのはにわ立つ

腐海から腐海へ棋風変化して

さびしさにまわしをとった墨の色

ゴーリキー・パークのそとで水を買う

鉄腕が適者生存する噺

魔女っ子のバギーこわれる夏近し

とんち王脱魂までのながいみち

mixi にカール・グスタフ・ユングの死

越前が越後をこえる動物記

右脳にも左脳にもない泉岳寺

菩提樹をおぼえる電子計算機

納豆と他我というものかきまぜる

ハリセンが純文学のもとである

円墳のきんぴらごぼう剥がされて

銃マニア脳細胞のいなびかる

ヒューレット・パッカード社の海の家

図と地とにモロボシ・ダンをおとしこむ

ブラジルの川端像をはりあわせ

メルマガの愚神にフタバスズキリュウ

はず押され十勝平野の和田アキ子

メーテルの質量しるす砂の本

駱駝屋がバニーガールの字をひろう

うきぶくろ吉川英治みずに浮き

べっ甲を火にくべジュール・ヴェルヌ街

ひとり着るネバーランドの拘束着

天体に天体かさね王子の子

保護室のヒッチコック忌すぎるなか

実篤のトムとジェリーのざんげ録

魚屋の記憶媒体かえてゆく

鰻屋をひかりのくににつれてゆく

ふくれつら地球は馬糞海胆の星

聞か猿のまわりに立っているかもい

原題を推古天皇なぜおろす

Ｋ点とかわりつづける白水社

バナナ打ち井上喜久子像くずれ

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