ミリオンダラー・ベイビー（椅子）　　川柳77句

熱川に彫られていないＢＥＭの像

剃髪のＮＡＳＡ職員が神憑り

方舟がいましずみきるキダ・タロー

保護区からめんまさしだす白魔術

ひとりでにアパッチ砦から綺文

裔としてコネチカットの美文書く

ロッキーの仮定のそとに山くじら

あんまんのシンボルひかる小豆島

スイミング・クラブが演ず裸者と死者

波及して雪村さんをときあかす

ゴーリキーパークにかるい桃太郎

だれひとり死なずピタゴラスイッチ忌

軍団が抱きまくら抱く蟻酸の日

善悪の彼岸偽造す相撲部屋

ささみ煮て冷ましてばかりニイチェの書

チャリを売る海坂藩に偽史おおし

班長の明治政府にたまごかけ

弥勒きてゲームセンターあらしの掌

狂風に手相みだれるビルの森

サロマ湖が奈良美智のかたちして

人力のわかめと同じ道たどる

新田家のバランスボールまだ燃えず

作話して象鼻ながし裏日本

利根川のある伏線に逆ポテト

群島をはなれて白い犬を撃つ

声紋が突撃隊とかわる日よ

海抜の記憶つながるみみず腫れ

さかな屋に三鬼がいないマヤの暦

落雁をおもったヘルズ・エンジェルス

死の家の定礎されつつがんもどき

堺市の遠心力にとまる蠅

奇型部のほろほろ鳥を逃す旅

小説のかんてんぱぱを五月過ぐ

きんかんの箱溶けるまでいやがらせ

タルカスの楽譜戦前はじまりぬ

人類の水棲時代撮る五月

ポコニャンの群れ呼吸する五月闇

才一のサイズ変更する斜塔

アマゾネス乳牛社から偽はがき

悪役をきめるダンボの耳そいで

花田家の漁船にずっとのこるいか

調布市のあんころもちや五月闇

隕石に仮名村民むらがれり

牛の絵とこむらがえりのずっとあと

マルコメの自瀆を識ったあとに海

蜂須賀のどこにもいない陶芸家

グッピーがひたすらたわみゆく五月

痔の医師の五月革命いまおわる

透視者が舎利つかまえる別世界

浦安のガラスあつめる家族葬

目をひらくコンビナートの麗子像

帆船がスナッフヴィデオつんでゆく

耕󠄁筰の消滅点に燃えるパパ

ひっきょうの人体発火する鯖屋

図と地とのエバラにつける名前なし

桔梗屋のタイプライター都市に売る

かけめぐる死の商人に石器なし

童貞がいない鏡の国の首都

猿人が季語と落語をわけるまで

身体に精神性のハムサラダ

とび箱のかなたに夏のマーケット

いと重きラヴクラフトのなつぶとん

丸ビルに信じられない種の起源

ねじまげる無敵の人のソーセージ

茶をかざる津軽海峡初夏景色

すばらしい乱歩には芋虫がいる

戦前の思考をみせるいるかショー

野生児のまえにリカちゃん一家置く

ガレー船こぐ黒糖と井戸消えて

言語学講義破綻しゆうばり市

贋父の壁にロバチェフスキーの絵

初夏来たるにゅばるにゅばるの掛詞

都市をなす塩の柱の社会詠

講談社現代新書穴を塗る

ワトスンの二重生活二度日ぐれ

初夏に椅子かいじゅうたちの黄泉がえり

われ老いて潜望鏡にくま群れて

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