赤い星、冬の軌道（1,2,3,4,5,6,7...n） 川柳77句
深夜の市長 十三句
ぴを連打断食月の文字起こし
盲点をふとった女とも視詰め
煮詰めると五七五にも成る牝馬
檻の中ふたりのザッパ綾を取り
盲目の（以下同文の）機器の評
明智君豚テキにこの世をいかれ
探偵の墓前にて峰不二子臭
サバイバーたちのジェンガを置いて去る
ぶよよよよ二度と逢えない猿が居た
大氷河20世紀の猫死んで
冬雨 字足らずポルノ映画館
逮捕術講師の腋を写生する
ジャビットがきちがいのまま冬の雨
赤い星、冬の軌道 三十二句
売血者トランペットの技術持ち
死火山の模型を飾る売笑婦
脳内の艦に三分クッキング
クッキングシートの表意文字を読む
足袋を脱ぎ劇場型の犯罪す
ただ凍るスミヤキストの遊歩道
金魚飼うケビン・コスナー屹立し
虎のあな戦艦大和無き国に
饅頭がこすられるまま紫電改
讃美歌の誤植在りけり冬の雨
隊員の便器に消しておく菫
動機なき犯罪王に噺触れ
冬の月インポテンツの日をめぐり
土壇場に渡哲也の靴盗む
噺家が人喰い鮫を喰うしぐさ
京都府の時計すべてに贋の秒
贋作の猪木の像にみぞれ降る
動画にて皆海老を飼う肥満美女
城が無いところに立って居る春樹
予言者が移し換えする茄子の位置
神の死にコーンポタージュ飲み干せば
胎臓を縄文人が仮定して
仮の世をとどめる姿三四郎
雪が降る蒸発者らの架空都市
海岸にあらゆるユダの書の対位
荒業で金平糖を盛るどくろ
陶酔の火宅へ向けてパラシュート
きんとんの仕組みでヒトが造るヒト
アーケードひとでをだれも語らない
語り手が宇宙書店に操られ
たんこぶをソビエトに向け素描せず
イノチガケ緑の障子破られて
さあ、きちがいになりなさい 三十二句
冬ざれて警官隊のレストラン
祖国にて零時の仮名思い出す
夜営地の血糊まみれるマンドリン
飼い亀にＹの悲劇を読むちから
性的にハンバーガーの丘を超え
Ｐさけぶ人形峠暮るるなか
電気街から逆光の鰐買って
奇術師が風呂屋に死んだひも理論
木星の命名会議もう終わる
上皇の世界に鯖のドキュメント
骨格の標本にみる方丈記
ラッセルのパラドクスから産むさなぎ
孤島にて錆びたナイフを念写せず
スティーヴン・スピルバーグの凍み豆腐
スキヤキと石川県が分離する
相撲部屋潰れるばかり擬似時間
豚吉が流線型に孫を描く
烏賊なき地倉田てつをを製図して
岐阜県のＡＩに訊く落語画家
パンとして至上の愛を奪る文太
故郷に沈める滝の速記中
粘土の喩安田忠夫が立ち上がる
下五にてタンホイザーを買い漁り
午睡後の社会を揺らすパン焼き機
二度買いのホットサンドに冬の蠅
滋賀県の記録映画のなかに雲脂
老け役がアインシュタイン自伝焼く
きんつばの宇宙開闢してもなお
孤人島ネオＴＯＫＹＯのおやつ買う
夜の雨手塚るみ子の超批評
浅草のセメント試合へと投げ麩
断絶の父の蒟蒻予言され
もしお気に召しましたら、サポートいただけるとありがたいです。でも、読んでいただけただけで幸せだとも思います。嘘はありません、