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遠い太鼓(ビートニク)  川柳111句


Ⅰ.堕菓子屋のはつなつ  三十七句

サッちゃんの気象衛星おちて朝

距離という距離をあつめてレバ炒め

ドストエフスキーの空母たまごうむ

死角から反小説のたこ浴びる

ワッフルを感じられないすみだ川

献血にドレスコードという略語

略語家の部屋のヨブ記を読みかえす

にんじん家総体として朝に撃つ

堕菓子屋のカーペンターズ立ちあがる

河馬の死にむけてだれもがディカプリオ

丸美屋のホッケーをする妻ひとり

n乗の佐助にいろのついた水

ゆりかごが燃えだしている時間都市

預言者の箱はこばれる都立大

シビリアン・コントロールの牛あふれ

逆光の島耕作へ豚の群れ

魔人きて魔人のままのふくらはぎ

墓碑というコールスローの記入場所

揚げ餅のひとつを宇宙として捨て

シーソーにひとりも乗らず虎を狩る

ラッパ吹く人間狩りがもう終わり

終劇にたたみのようなものもらう

歯車をかえしに行って世界劇

短冊がみにくいひとのパンケーキ

廓からやどかり借りる現実記

河馬を撃つ壁どこまでも模写だらけ

ダスキンと呼ばれたはずの昼の街

麹売り地底探検車のドリル

太陽のただあるだけの籠を買う

くらげなす海にもすもうとりの墓

現実にもうさきだってあるパンダ

筆算者Xのすむ傘の村

のりしろの魚によって引く魚

南朝の夏の雪ふるタンゴ弾き

ホームランバーに入魂する判事

猿人にふるまっているえもんかけ

耳を切る地面のうえに蟻砂糖

Ⅱ.大老のデッド・ヒート  三十七句

ダスキンと鯨に名づけ大天使

新魔球いたるところにアラーキー

国後にミドレンジャーの漂流記

陽のもとに泡坂妻夫たちの母

ハタ坊もキングコングもおちてゆく

井戸を買う不安だらけの律詩にて

散文のわらび以上のものがない

客船といっしょにしずむ甲虫

鉄骨のもろいところに八王子

個人的体験つづく青バケツ

市長らのねむる市街にジョジョが立つ

塩田にひとつかぞえるあるまじろ

三叉路にこの世の終わる暦捨て

発話して巌流島に白夜暮れ

みちのくを剥ぎとっている放水車

章魚きざむ法学上のブルドーザ

僕っ娘に代名される黴の家

大老の腕すりぬける食虫花

発症の指にマカロニ・ウエスタン

臨死する意味の握力測定機

ゴダールの人文字がない怪文書

原子力潜水艦の鉢捨てる

あやとりにあらわす神の死んだ昼

箱を出てキャンドル・ジュンの書を綴じる

秀忠が塗ったウェイン・シャムロック

自給する少年ひとりかぞえうた

偽の文に嵐が丘のガチャをひく

還俗のあとからコモドオオトカゲ

地球儀をいじくりまわし田植の日

聖人の競歩がつづくカスピ海

ふりがなもふらず無風の品川区

アジールのかやくごはんを否認して

しりあがり寿の詠む句中の句

黙阿弥のエントロピーをへらす納屋

空想の茄子かれてゆく重い辞書

ハタ坊の壕にあつまる発明家

ノンタンの暗い時代のたけくらべ

Ⅲ.外人墓地のハーリー・レイス  三十七句

寿がきやを外人墓地のほうへ出る

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