バナナの森の偽ナウシカ（パティ・スミス）　　川柳80句

時頼の時間に虹のきえがたし

清盛の前頭葉に無垢の牛

義経がまぐわうときのウラニウム

高崎のよってたかって牛車焼く

ウラシマの午前に氷菓とけざりし

菓子くだき贋のゴースト・バスターズ

チャンピオン鷹の納骨するはやさ

霧隠才蔵によるバナナラマ

馬の目に世界をなしている馬肉

パンクスが馬糞かぞえているあした

圓楽とそのほかがある宇宙の図

びんせんのどこに書いてもかぶとがに

バナナの名おもう水陸両用車

土地勘の地に幻想の未来の図

レンズごとほろびる森の生活者

凡才のサンドイッチを貸したまま

盛りなれる都市伝説のむかごめし

Ｄ坂に地下アイドルが転がされ

二丁目の駱駝にしかと鰓のあと

スリッパのきもちがわるい句を書いて

「寒天」と題されている父の雅歌

かえうたが少しずつやむエルム街

脳髄を珍走団にかきかえる

オランダの実験室にいか煮える

赤羽をそれぞれ迷うキキとララ

新焦土寄生虫館そびえたつ

白人の頭脳コントにつぶす樹果

しめさばの箱にたまってゆく楽譜

砂糖屋と普遍論争したあとで

検閲のコップが割れてゆくばかり

きんたまときんたまがなす意味の森

異世界をさんまとともに生きのびる

豚足と不死をくらべる雁之助

脳病みつフルタのおかしならべつつ

猫股の家いつまでも七ならべ

ディスコから下弦の月のしわけかた

老人のかげあつまって月を聴く

ルービック・キューブばらつく流山

風船をおろすシャンソン二進法

やしの実が法学の書にふえてゆく

擬似短歌仮想サボテン折れにけり

死の国にセンチメンタル猿ぐつわ

惑星の猿のカフカが『城』を書く

顎をそるひと減ってゆくキャンプ場

こぶ平のハンバーガーの丘を越え

シュワルツェネッガー眠る合唱部

史学部の暗喩みつかるレイモンド

くちづけて海外版に章魚みちる

吸盤の意味をまいとし考える

えんぴつと名づけるための子を産めず

かまぼこをはなち十字架濡れたまま

音節が比較のうえにながい土器

分数が喜怒に対応する小室

尊皇の阿佐ヶ谷駅にアフロヘア

皇族のはだかを視たしたて笛屋

たて笛を自由連想するムック

博多屋の五郎そのものぶら下げる

シェルターに古舘をきくジョースター

チグリスとユーフラテスの非漫才

猿山をかたりつづける巫女喫茶

きよしからこの世に向ける手長猿

大根と自我とひとしいメニエル氏

流星として流れゆく曲げわっぱ

祝祭の佐々木健介ミシン踏む

大岡の無意識を解く芥川

豆腐屋の四季のチャーリー・チャップリン

塩田のやすむことなく山頭火

あのミシンこのミシン指す連体詞

地軸ぶれ連隊長のバーベキュー

自転車とやっぱり結びつくイオン

遷都する泡坂妻夫から卍

日本語のいちとしてある樹木葬

音叉からフィリピンパブが減ってゆく

せんぬきが髭男爵でない季節

メスメルの他人の顔に菅井きん

乳酸をはなつ暴力喫茶店

軸として山手線をまわす君

隷臣がきゅうりへおもう Your age

鬼六のバケツまさしく金閣寺

ナウシカの糞ころがしに狂いつつ

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