音楽（20世紀少年） 川柳77句
１．ヴィヴィアン・リーに熊手
フーコーと佐佐木さんちの抱きまくら
珍姓をとなえ頭脳の蠅を追う
都市としてゴルゴンゾーラチーズ消す
水垢離に脳波時計がふと停まる
冬の蠅パスタ男のめざめる日
陰謀の白鳥さんと逆に立つ
私生児が磁石あつめる冬の街
電磁波をまど・みちおから写生する
ピクシヴに低体温の蟹つどう
熊公が黄緑色の皮膚に貼る
コーヒーを心理試験のあと零す
みねうちの昆虫学者調律す
木琴をストックホルムにて壊す
バレ句にて相撲の人の禅つづく
娑婆に居る宇野重吉のエロ漫画
影丸がギターを持って来る鶏舎
魚の目が安保条約にて書かれ
南極の夏に携帯ラジオ消す
ジャビットに虚数香典わたすとき
夢精後のジャングルジムが消え残る
神を視るエレベーターの志賀直哉
πを持つ氷の世界での国旗
孤島にてヴィヴィアン・リーが熊手持ち
地下ゆけばサンボリズムの象の像
２．ロズウェルの倒叙
舌禍して蝙蝠傘をやり直す
ミネソタに安室奈美恵の心拍図
ポリネシアへと沈黙の土間ひろげ
イディオムに銀河銭湯値下げして
スライムを貴族階級から垂らす
熱帯魚跳ねかけて箱男町
銀鮭を国連本部から奪う
上皇のデッドボールに浮かぶ冬
マークスの戦意を失くす猿茸
毒茸協会員の名札捨て
玉丼を永遠に待つ荒井注
亀の死を現人神にあざむいて
肉の渦ネーデルランド離岸して
ジェスチャーに大正琴の怖しかた
舞姫を騙った主語がミラーマン
変名で迷宮をゆく遼太郎
スポイトを祖母百人が持って来る
戦前のタモリが知慧の環を隠す
痴神から大正琴の譜をもらう
煎茶屋に安岡力也崩れおち
ジョン・ウェイン句会に溶ける砂糖菓子
炊事場に無意識の無いりえが立つ
ロズウェルの事件のあとに貝を焼く
天丼が発明されて冬が来た
水彩画アンパンマンの生殖器
閉門の音楽会につかう茄子
ししとうをたのきんトリオ狙い撃つ
たのきんの三面鏡がまた無人
小麦粉に世界重ねてゆく世界
３．矢沢永吉ハンティング
天人の五衰し冬のマーケット
球型の峠の茶屋に叙説置く
自殺者の肺を置き去る仏教徒
髭燃えて凍る世界よわが家郷
密偵のポインセチアが単に散る
冬の雷チルチル・ミチル漫才し
にんにくを矢沢永吉ぶら下げる
史学科がヨドバシカメラへと籠もる
領域の糸こんにゃく社国見して
ペリカンを八犬伝の註に書く
糞まりし大熊猫にニーチェの名
ペヤングを未だ知らない小納言
未遂者があつまる冬の海の家
メレンゲの未完のままを撮って出し
階段に永久が在る母集団
群島に弥勒菩薩の一身ずつ
アボカドをほんとうに切る歴史劇
星人の茶巾が在ってしまうこと
気球揚げ元ボクサーの死に給う
紀文から元ダンサーの死に給え
ローランド・ボックを書いた壁が溶け
ちちははへ蟻酸を走り届けても
背もたれが烈しい人の血の掟
神が死ぬ天一瞬の鯵座あれ
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